学生と地域社会の「面白い」をもっと。 学生メディアと謎解きで、長野県に新たな接点をつくる株式会社OMOMOの挑戦。信大的人物
信州大学発スタートアップ認定企画特集series12

学生向けメディアの運営や、学生と地域企業・団体をつなぐプロジェクト、長野県内の観光地や宿泊施設などを舞台にした謎解きコンテンツの企画・制作。こうした事業を手掛けているのが、信州大学発スタートアップの株式会社OMOMOです。掲げるミッションは「学生と地域社会の“面白い”をもっと。」。社名の「OMOMO」も、この「面白いをもっと」という言葉から生まれました。代表取締役の滝沢翔吾さんと取締役副社長の黒澤主樹さんは、ともに信州大学の卒業生で、現在は信州大学シェアオフィスMatsumotoを拠点の一つとし、インターン生や学生団体とともに活動しています。
今の仕事の原点は、大学時代に夢中になったこと
OMOMOの事業の原点は、滝沢さんの信州大学在籍時代にあるといいます。ゼミでは地域に出て調査し、その魅力を一冊の本にして出版する活動に取り組んだという滝沢さん。また、大学2年生からは、学生だけでフリーペーパーを制作するサークル「CAmpusBridge」に参加。企画や営業、取材、デザイン、配布まで、制作の一連の工程を学生時代に経験したそうです。
当時を振り返り、「大学の外に出て、知らなかった地域や人に出会うこと自体が面白かったですね。地域の中にあるものを見つけて、それをどう伝えるかを考える経験は、今のメディアや地域との仕事にもつながっていると思います」と滝沢さんは話します。そしてもう一つ、現在の仕事に直結しているのが“謎解き”です。就職活動で訪れた東京の企業で謎解きを体験し、その面白さに衝撃を受けた滝沢さんは、大学4 年生の時に友人や後輩と謎解きイベントサークル「信大回廊」を立ち上げました。「当時は起業なんて全然考えていませんでした。謎解きやデザインは趣味として続けていけばいいくらいに思っていて。振り返ると、大学時代にやっていたことをそのまま仕事にしているような感覚ですね」(滝沢さん)。
「後輩のために」から始まり、学生と地域をつなぐメディアへ
学生向けメディア事業が始まったのは2020年。新型コロナウイルスの影響で授業がオンライン化し、サークル活動も大きく制限されていた時期でした。当時ウェブ制作会社に勤めていた滝沢さんは、「後輩の学生たちのためにウェブの力で何かできないか」と考え、現役学生とともに信州大学のサークル情報を集めたウェブメディア「信大サークルGUIDE」を立ち上げます。
このメディアが多くの学生に利用されたことから、地域のイベントやクーポン、学生ライターの記事、授業レビューなどへと掲載内容を拡大。現在の学生向けメディア「ココロミー」へと発展しました。メディアを運営するうち、企業や行政から「学生に情報を届けたい」「学生と接点を持ちたい」という相談も増えていったそうです。これを受け、学生ライターによる企業取材や企業・団体とのプロジェクトに加え、学生と社会人が交流するイベントも定期的に開催。学生向けのイベントスペースも運営するなど、活動は情報発信にとどまらず、学生と地域が直接関わる機会づくりへと広がっていきました。
その後、「ココロミー」の構想で「信州ベンチャーコンテスト2022」に挑戦。出資企業との出会いなどもあり、2024年6月に株式会社OMOMOの設立へと至ります。現在は「長野学生団体ねっここ!」とも連携し、学生が地域と関わる機会を増やしています。
黒澤さんは、実際に地域へ出ることの意味について、「情報を届けるだけでは伝わらないことって、たくさんあるんです。実際に行って、見て、体験して初めて分かる温度感がある。だから情報発信だけでなく、学生を実際の場所へ連れていくことも大事だと思っています」と話します。
長野県の魅力を「謎解き」に変える地域そのものが遊びの舞台
もう一つの事業の柱が、謎解きコンテンツの企画・制作です。大学時代から続けていた活動に企業や施設から仕事として依頼が入るようになり、現在は宿泊施設や観光地、行政などと連携して、その場所の魅力を伝える謎解きコンテンツを制作しています。
大切にしているのは、単に難しい問題を作ることではありません。その土地の歴史や文化、景色、施設に込められた思いなどを物語や問題に取り入れ、楽しみながら自然とその場所について知ってもらうことです。
印象に残っている事例の一つが、蓼科グランドホテル滝の湯で制作した宿泊者向けの謎解きだといいます。2~3時間ほどかけて館内を巡る物語に、ホテルの歴史や思いを盛り込んだという滝沢さん。参加者からの反応も良く、施設側が伝えたいことと、参加者が楽しめる体験を両立できた事例になったそうです。「長野県は、舞台そのものが一つのストーリーになると思うんです。歴史も文化も自然もある。一方で、まだ県内では謎解きを知らない人も多い。これから自分たちで広げていける分野だと思っています」(滝沢さん)
メディアは広く、謎解きは深く「アウトプットが違うだけ」
学生と地域をつなぐ事業と、謎解き。
一見すると異なる事業ですが、「編集の仕方が違うだけで、実は根っこは一緒なんですよね」と滝沢さんが話すと、黒澤さんも「アウトプットが違うだけだと思います」と続けます。
メディアは、場所や距離にとらわれず、地域の情報を広く、気軽に知ってもらうための手段。一方の謎解きは、実際にその場所を訪れ、歩き、考えながら、地域や施設の魅力に深く触れてもらうための手段です。メディアは遠くにいる人にも広く届けやすく、謎解きは現地でより濃い体験をつくりやすい。それぞれ異なる特性を持ちながら、「“地域に興味を持ってもらう”という点では同じ方向を向いている」と教えてくれました。
学生や若者にまだ知られていない地域の魅力。それを記事や情報として届けたり、物語や問題、体験へと変えたりすることで、「ちょっと気になる」「もっと知りたい」というきっかけをつくることが、OMOMOの二つの事業に共通しています。
OMOMOにとっての「面白い」について尋ねると、「感情が動くことと好奇心」と黒澤さん。「楽しいだけじゃなくて、驚いたとか、ちょっと怖いとかでもいい。そこに『もっと知りたい』という好奇心がついたら、それも面白いんじゃないかなと思います」(黒澤さん)。
一方、「『面白い』は何かを好きになるよりも前にある、興味を持ち始めるきっかけなのではないかと考えています」と滝沢さん。
長野県のあちこちで「面白い」が生まれる未来へ
OMOMOは2026年8月に、信州大学発スタートアップとして認定されました。滝沢さんは、「認定された時はうれしかったですね。学生のためにやってきたことを評価してもらえたと実感しました」と振り返ります。
OMOMOでは今後、学生関連の事業として、企業と学生が単発ではなく継続して関われる仕組みや、学生自身が地域へ飛び出していける環境をつくっていきたいと考えています。まずは信州大学を中心に活動を充実させながら、長野県全体へ広げていくことが目標だそうです。
謎解き事業では、「長野県で謎解きといえばOMOMO」と言われる存在を目指し、いつか県内77市町村すべてで謎解きを制作することも目標の一つとのこと。さらに、観光地や宿泊施設で楽しむコンテンツにとどまらず、「考える」「調べる」「仲間と協力する」といった謎解きの特徴を生かし、小中高校の探究学習や企業研修など、教育・人材育成の分野にも活用を広げていきたいと考えています。
滝沢さんは今後について、「面白いことを知っている学生、面白いことができる学生が増えて、その学生たちが地域に出ていく。そうすると、長野県のいろいろなところで、小さくても面白いことがポツポツ起こってくると思うんです」と話します。学生から「OMOMOに関われば、何か面白いことができそう」と思ってもらえる会社に。信州大学から始まった活動は、学生と地域の間に新たな「面白い」を生み出す取り組みへと広がっています。
PROFILE
(左)
株式会社OMOMO
取締役副社長
黒澤 主樹さん
信州大学人文学部卒業。謎解きイベントサークル「信大回廊」3代目代表。ブライダル業界を経て、2025年に株式会社OMOMOへ入社。現在は謎解き事業の責任者を務める。
(右)
株式会社OMOMO
代表取締役社長
滝沢 翔吾さん
信州大学経済学部卒業。在学中から地域でのフィールドワーク、フリーペーパー制作、謎解きイベントの企画などに取り組む。卒業後、ウェブ制作会社勤務などを経て、2024年6月に株式会社OMOMOを設立。

