感情研究拠点信大的人物
感情が持つ”社会的価値”を明らかに 分断を超えた共生社会を目指して

感情研究拠点=Institute for Emotion Researchは、感情の価値をとらえ直すことによって、分断を超えて共に生きる社会の構築を目指す拠点です。感情の表出が社会にもたらす意義とは?白井真理子拠点長に聞きました。(文・平尾 なつ樹)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第156号(2026.3.31発行)より
他者理解のために不可欠な感情の表出と共有
「感情」は、理性の対極にあるものとして語られることが多く、合理的な判断を阻むなど、しばしばネガティブなものとして受け取られることがあります。しかし、対立や分断が深刻化する現代社会において、異なる立場の他者と理解し合うには、「論理や理性だけでなく、感情の表出と共有が不可欠であり、それを通して新たな価値観が創造できる可能性がある」と、「感情研究拠点」の白井真理子拠点長(信州大学学術研究院(人文科学系)助教)は語ります。
同拠点では、「感情は社会を動かし、新たな価値を創造する推進力である」と捉え直し、感情やその表出が持つ社会的価値を実証的に明らかにすることを目的として設立されました。感情の表出を通して、適切な対話や合意形成が図られ、分断を超えて人々が共に生きる社会の構築を目指します。
拠点は、生理心理学・感情心理学・社会心理学を専門とする3人の研究者からなり、多角的な視点から、感情が合意形成に果たす機能を検証するための研究を進めています。
研究の第一歩 情動的共感を分析
現在、研究の第一歩として「共感」をキーワードにした研究を進めているとのこと。共生のためには、自分と立場が異なる人に対し、“情動的共感”(=他者の感情を自分のことのように感じる状態であり、たとえば相手が悲しんでいると自分も同じように悲しくなる)が大切になるという考えから、情動的共感による身体的変化や、対話後の満足度などを実験で調査します。
「実験室で得られた知見をそのまま実社会に応用できるというわけではないため、現実社会とつなげる難しさが課題です」としながらも、「得られた知見を社会に還元し、対話しながら改善を重ねることによってより良い方向に導いていけたら」と、白井拠点長は思いを話してくれました。実験によって得られた知見をもとに、他者との合意形成において感情の表出や共有がどのように影響するのか、そのプロセスを明らかにしたい考えです。
国内外で国籍や人種、イデオロギーによる分断が煽られ、対話の重要性がますます高まる現在。感情を「抑制すべきもの」ではなく「社会的課題の解決を推進する力」としてとらえる視点は、これまでの認識を大きく転換するものです。それは、分断を超えた新たな共創社会への道を拓く鍵となるのか―大きな期待が膨らみます!

