信州大学工学部創立70周年記念式典 Mini Interview with ミスター信大工学部 野村達雄氏&井原廣一氏信大的人物

信州大学工学部創立70周年記念式典 Mini Interview with ミスター信大工学部 野村達雄氏&井原廣一氏

 2019年9月27日、信州大学創立70周年記念事業の一環で、工学部創立70周年記念式典を長野(工学)キャンパス国際科学イノベーションセンター(AICS)で挙行しました。
 式典では天野良彦工学部長、濱田州博学長の挨拶に続いて、新幹線運行管理システムの開発などで有名な、井原廣一氏(工学部通信工学科昭和34年卒)と、ポケモンGO開発で有名なゲームディレクター、野村達雄氏(工学部情報工学科平成21年卒)のお二人による記念講演が行われました。新旧の著名な工学部卒業生がお揃いになったので、講演後お二人に、講演内容や信大生への想いなどを少し伺ってみました。(広報室)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第120号(2019.11.29発行)より

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野村達雄氏
工学部情報工学科2009年卒
2011年東京工業大学大学院理工学研究科数理計算科学専攻修士課程修了。同年、Google Japan inc.(現グーグル合同会社)入社。Google Mapsのエンジニアを務めた後、2013年Google inc.へ転籍。2015年、当時Google社内ベンチャーであったNiantic Labsへ。同年GoogleからNiantic,Inc.として独立した後は、2016年7月に配信された「Pokémon GO」ゲームディレクターとして参画。同作品は2018年までに世界で10億ダウンロードを記録した。2018年4月より開発拠点NianticTokyo Studioを立ち上げ、代表を務める。

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井原廣一氏
工学部通信工学科1959年卒
日立製作所日立工場・大みか工場設計部主任技師、システム開発研究所副所長、宇宙技術推進本部主管技師長、全社技師長を経て日立メディコ取締役・研究所長、本社技師長、転じて国際医療福祉大学教授等を歴任。情報処理国際連合(IFIP)WG10.4創立委員、 Vice Chair等歴任。工学博士(東工大)、IEEELife Fellow, IFIP WG MemberEmeritus。独自着想の自律分散概念による高信頼新幹線運行管理システムの開発など情報制御分野での社会革新貢献で2015年、米国電気電子学会より「IEEE-Innovationin Societal InfrastructureAward」を受賞。

バーチャルの時代だからこそ目指したいもの

広報室 今、日本は“引きこもり100万人時代”ともいわれ、大きな社会問題となっています。「ポケモンGO」は、「人を外に連れ出す」というコンセプト。ナイアンティックの開発理念もそこにベースがあると伺ってい
ますが、その辺は意識されておられたのでしょうか?また、今後はどんな開発を?
野村さん(以下、敬称略) そうですね。もちろん僕らが社会問題を一挙に解決出来るなんておこがましいことは考えていません。ただ少なくともエンターテインメントを使うと、「嫌だな」「面倒くさいな」と思っていたことが楽しくなることもある。そのきっかけを作れたことが、「ポケモンGO」が一定の成果を納めている部分だと思っています。
 その次の展開に関しては、まだ具体的なことをお伝えするのは難しいのですが、日本の社会問題に対して少しでもポジティブな影響を与えることができたらいいなとは思っています。
広報室 最近では「eスポーツ」が盛んですよね。これからの開発もそういった方向性を模索されるのでしょうか?
野村 実はVRや仮想空間の中で何かをするというコンセプトは、弊社のやりたいこととは違う方向性のものなんです。中にはどうしても外に出られない方がいらっしゃるとは思います。そういう事情も承知はしているのですが、我々の思いは、あくまで人を“実際に外に連れ出したい”ということですね。
広報室 バーチャルではなく、リアル、それもフィジカルがテーマ、ということですね。
野村 そうですね。むしろ世の中がどんどんバーチャルな方向に向かっているからこそ、実際のつながりだとか、体験だとか、そういう部分を大事にしたい。ポケモンにしても、ゲームが楽しいという側面もあるとは思うのですが、外で人と出会ったり、行った場所の話で盛り上がったり、そういうことの方がむしろ価値が高いのではないかと思っています。
井原さん(以下、敬称略) 今のお話は、AR(拡張現実)技術の応用ですが、目的は情報世界に引きこもりがちな人々の交流や健康維持にあるのですね。現在の科学の時代は「好きなことを追求した人」が新世界を開拓したのです。例えばガリレオは天体を見るために、精巧なレンズを自分で磨き宇宙科学を、レーベンフックは自作の顕微鏡で細胞を発見して分子生物学を開いたのです。「好きなことをやっている人」がその後の科学を変えています。野村さんの考え方は、とても重要だと思いますね。今世紀は、5億年前の「カンブリア生物大爆発」と同じように、現在の情報社会が視覚などの情報認識と移動能力の獲得によって、第5のスマート社会へのパラダイムシフトが起こると予想されています。
広報室 まさに「好きなことを追求している人」が次の時代を作るということですね。

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創立70周年を迎えた信州大学工学部の記念式典の様子。教員、在学生、卒業生、一般の方々など多くの人にご来場いただき、工学部の代表的な卒業生お二人の基調講演に耳を傾けました。

大学の学びで大切にしたい“基礎”というものの重要性

広報室 今日の講演では学生や若者へのアドバイスをいくつか頂きましたが、改めて何かメッセージをお願いします。
井原 学生の時は基本的なことをしっかり学び、思索してもらいたいと思いますね。今の世の中は、新学卒即戦力を期待する傾向にありますが、学生時代は、社会における自分の目標を探す時期でもあります。信州は日本の中心に位置し、時間的にも距離的にも他へのアクセスに有利な土地であり、適度に都会の喧騒から離れていますから、広い分野を探索できる環境です。
野村 僕も4年制の国立大学の工学部でまんべんなく、それこそ基礎のところから学べたことは、職業訓練校のようなところでは決してできないことだっただろうと思っています。即戦力としてアプリを作るとか、そういうことではなくて「基礎を学べたこと」は、すごく有意義でした。やっているときは「何の役に立つんだろう?」って、気づきにくいものですけどね(笑)。
広報室 学生には基礎をちゃんと学んでほしいと願う点は、お二人とも共通ですね。
野村 ただ、大学生は力があり余っているので、社会貢献や新しいサービスについて考えたり、取り組んだりすること自体は素晴らしいことだと思います。
 例えば、我々の本社があるシリコンバレーのスタンフォード大学には、ノーベル賞をとった学者がたくさんいますが、実業家もたくさん輩出しているんです。大学をすぐやめて起業する方もいますし、いろんな人がいていいんじゃないかなと思います。

世界に視点を広げた新しい時代の産学連携

広報室 それでは最後の質問です。本学は航空宇宙や食品加工などさまざまな業種で産学連携が進んでいます。井原さんの基調講演でもキーワードになっていた“Society5.0時代”の新しい産学連携で、何かイメージされるようなことはありますか?
井原 私は技術者として国内はもとより海外35カ国を訪れ、努めて訪問先の周辺の自然や文化にも触れました。その際、どこでも感じたことは、日本のアクセス容易な自然景観と文化の多様性の豊かさでした。自律分散的構成の総合大学として、長野県の豊かな資源を活かしたスマート社会を目指して、日本文化に根ざした人文科学と外来の自然科学系を結合し
た複雑系の研究開発を、産業界と取り組んで欲しいと思いますね。
野村 僕が海外に行って感じたのは、スタンフォード大をはじめ、多くの大学が世界を相手に物事を考えているということでした。信州大学も同じように、世界に対する視点をもっと広げていくことが求められるように思います。
 最近ではイギリスの小さな大学の中にある「マトリックス・ミル」というARを研究する大学内ベンチャーをM&Aにより統合しました。そういった形で大学との関係性はありますね。
広報室 (失礼ながら)ナイアンティックさんにも足りない技術はあるんですね。
野村 もちろんです(笑)。「技術」は、皆さんがご存知の通り、幅広く深さもあるものなので。大学との連携の上で重要なのは、「技術の中身」と「人材」です。この2つはポイントになりますね。
広報室 ぜひ信大工学部とも共同研究を考えていただきたいですね(笑)。お二人とも本日は実りあるお話をいただき、ありがとうございました!

Special Event

〇ケット団の野望

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 記念式典の最後の方では、記念式典を乗っ取るぞ!と学生が登場。学生たちが「野望」(学生たちが考えるさまざまなプロジェクトやアイデア)をプレゼンし、来場者が「いいアイデア」だと思ったものに、仮想通貨の10万円札・1万円札を“投げ銭”するイベント「〇ケット団の野望」を実施。一次選考を勝ち残った5団体の熱のこもったプレゼンが繰り広げられました。
 そして453万円を獲得した「水もっと信州大学」チームが1位に決定。“身近な環境問題を解決する”をコンセプトにペットボトルをキャンパスから減らすためにはどうしたらいいかをプレゼン。マイ水筒持参の推奨、ウォータータンクの設置などを訴えました。

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