第4回 深掘り!大学院生。Episode5 諸岡駿さん信大的人物

総合医理工学研究科 総合医理工学専攻 ファイバー工学分野 感性・ファッションユニット 博士課程2年生

厳しさを増す夏の酷暑…、それでも快適に過ごせる衣服を目指して

夏の暑く不快な環境下でも、快適な衣服環境で健康に過ごすことができたら―。きっと誰もが願うこのテーマに、諸岡駿さん(総合医理工学研究科 総合理工学専攻 ファイバー工学分野 博士課程2年)は、感性工学の観点から取り組んでいます。実は諸岡さんは、本誌の大学院生特集で2年ぶり2回目のご登場!博士課程2年生となり、忙しくも充実した研究生活を過ごす諸岡さんを深掘りしました。(文・佐々木 政史)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第157号(2026.5.29発行)より

ご本人から一言

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総合医理工学研究科 総合医理工学専攻
ファイバー工学分野 感性・ファッションユニット
博士課程2年生
諸岡駿さん

もともと自分は、ファッションとしての衣服が大好きなんです。そこから、服って、それ自体だけでは成り立たなくて、人が着て初めて完成するものなんだなと思うようになって、「服と人の関係」に興味を持つようになりました。それが、今の研究に取り組むようになったきっかけです。

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1日の研究を終えると、後輩を引き連れてジムに行くことが日課。「研究は体力勝負。体調管理が大切ですからね」と諸岡さん

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旅や移動先では必ず古着屋に行くそう。
なんと300着以上も所有しており、特に1960年代から1980年代のものがお気に入り。また、自分でリペア・リメイクすることも好きで、夜な夜な自室にミシンの音を響かせているといいます。

企業も熱視線 注目テーマに共同研究が多数

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暑熱環境でサーマルマネキンを用いた実験の様子

ジリジリと照り付ける日差し、室内にいてもムシムシする不快感。地球温暖化により夏の暑さが年を追うごとに厳しさを増しています。2026年、気象庁が最高気温40度以上の日に「酷暑日」という名称を付けたことも話題になりました。これまで以上に夏の暑さによる不快感が増し、熱中症に至るケースも増える中、その対応が社会課題となっています。

諸岡駿さんは“衣服の着心地”の観点から、その対策に取り組んでいこうとしています。暑熱環境下で衣服が汗を吸って濡れたときに生じる「濡れ感」「蒸れ感」「汗冷え」などの着衣不快感を改善するための評価方法の構築に挑んでいます。従来の評価方法は、着衣せずに着心地を評価したものが多く、実際の着心地を正しく表していない課題があったそう。対して、諸岡さんは人が衣服を着た状態での着心地評価方法の構築に挑んでいます。信州大学は人の心地よさを科学的に研究する「感性工学」で国内屈指の実績を持ちますが、諸岡さんの研究はまさにこの感性工学からのアプローチ。この点に、他にはない特徴があります。

また、博士課程からは、衣服の生地だけでなく、人の身体や、温湿度といった外部環境も含めて総合的に着心地を評価する研究に着手。こうした総合的な着心地評価はこれまでにないそうで、研究の独自性をより高めています。

それだけに、企業からの共同研究のオファーも多いのでは?と諸岡さんに聞いてみると繊維アパレル、スポーツ衣料といった業種の複数のメーカーとの共同研究が進行中だそう。メーカーが開発中の生地を諸岡さんに提供し、実験などで着心地の評価データを出して、メーカーにフィードバックして、暑熱環境下でも快適な生地の開発を進めているといいます。「理論を実際のカタチに落とし込めるところは、やはり共同研究ならではの醍醐味」と諸岡さん。一方で、企業から求められるデータが、はっきりと出てこなかったり、期待と逆の結果が出るといった苦労もあるのでは?そう水を向けると、「たしかにあります。でも、思い通りのデータが出ないときの方がワクワクするんです」と笑顔。思い通りにいかなければちょっと焦りそうなものですが、諸岡さんはむしろ逆。実際に実験してみてはじめて分かることの驚きと、データをどう解釈するかを考えることに研究の面白みを感じているそうです。

いずれは大学研究者として プロフェッショナル目指す

諸岡さんは、研究へのAIの導入に積極的に取り組んでいるといいます。実験データをAIに読み込ませ、評価方法の構築に役立てようとしているそうです。一方で、AIを使うようになって、「研究の面白さが減ってきた」と、ちょっと気になる本音も。AI は世界中の知見を集めてくれますが、その分、研究の醍醐味である実験や自分で考えることが減っていくからだといいます。それでも、これからの時代は、やはり研究にAI の導入は必須であると思っており、「どこまでAIを使うかを意識的に考えて、振り回されずにうまく付き合っていきたい」と話します。諸岡さんは研究生活にやりがいと充実感を感じているだけに、博士課程修了後も大学に残って研究者として現在の研究テーマを追求していきたいと考えているそうです。「いずれは、この分野のプロフェッショナルになりたい」 やる気に満ち溢れたその言葉に、さらなる活躍の期待感を持たずにはいられません。

院生の、とある一日

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eラーニングでAIの勉強をしてから、研究活動に入ることが朝のルーティン。ずっと座っていて運動不足になりがちであることから、研究後は後輩を連れ立ってジムに行き、筋トレと約2㎞泳ぐそう。「体形を維持して、服をかっこよく着ること」がモチベーション。夜は趣味のミシン時間。購入した古着を、自分の好みや体形に合うようにリメイク・リペアすることが楽しみだといいます。

共同研究企業から

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諸岡さんとは、弊社のオリジナル快適多機能性素材「COVEROSS®(カバロス)」の開発において共同研究を進めています。具体的には、弊社が提供する素材や衣服製品について、暑熱環境下での着心地や快適性を、感性工学の視点から評価いただいています。着心地は個人差が大きく、評価が非常に難しい領域です。そのなかで、実際に人が着用した状態で、濡れ感・蒸れ感・汗冷えなどの不快感を科学的に捉える諸岡さんの研究は、今後の快適機能素材開発において大きな意義があると感じています。また、諸岡さんは、こちらの期待に合わせるのではなく、データに基づいて率直に意見を伝えてくれます。そのうえで、新たな解釈や可能性を示してくれる点に、研究者としての芯の強さと洞察力を感じています。(hap株式会社 鈴木 素 代表取締役)

COVEROSS®は、サステナブル性と機能性を両立した取り組みが評価され、技術経営イノベーション大賞において内閣総理大臣賞を受賞した技術です。

指導教員から一言

信州大学学術研究院(繊維学系) 上條 正義 教授

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博士課程に入ってからAIに関心を持ち、着心地研究への活用について取り組んでいます。ただ、それまでAIについてはほとんど知識がなかったので、博士課程1年目は、AIの勉強や活用方法の学びに振り回されていた様子でした。1年過ぎて、少しずつ活用できるようになってきた様子。ただ、時間は、過ぎていくので、AIを活用した着心地研究を加速して推進してほしいです。

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