水を安全に変える、信大クリスタルが変える。産学官金融連携

水を安全に変える、信大クリスタルが変える。

水を安全に変える、世界初の新素材を用いた携帯型浄水ボトルNaTiO(ナティオ)発表 2018.10.24 in Tokyo

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発表会後の記念撮影、左より
信州大学学術研究・産学官連携推進機構 准教授 土井達也、信州大学環境・エネルギー材料科学研究所所長/
教授 手嶋勝弥、トクラス(株)技術部 副部長 上川秀哉氏、トクラス(株)技術部浄水器開発室 河津綾乃氏

 平成30年10月24日、信州大学とトクラス(株)は、信州大学の結晶育成技術「フラックス法」を用いて水中の重金属を除去する世界初の新素材を共同開発、本素材を用いた携帯型浄水ボトルNaTiO(ナティオ)を12月25日に発売することを都内で報道発表しました。
 新素材の重金属除去材「三チタン酸ナトリウム」は、粉末の結晶材料であり、少量コンパクトであっても水中に溶け込んだ多種多様な重金属をすばやく除去でき、従来と比べ小型のカートリッジでも高い性能を発揮します。
 重金属等除去材と浄水器の研究開発は「アクア・イノベーション拠点(※2)」、重金属等除去材および浄水器のスケールアップ検討は「革新的無機結晶材料技術の産業実装による信州型地域イノベーション・エコシステム(※3)」において推進しており、携帯型浄水ボトルNaTiOはフラックス法で育成した材料を搭載した製品化第1号です。信州大学はこのフラックス法で育成した結晶材料全般を「信大クリスタル」の名称でプロデュースすることとし、商標登録を出願しました。

(※1)信大クリスタル…信州大学はフラックス法で育成した結晶材料全般を「信大クリスタル(商標登録中)」の名称でプロデュースしていきます。画像はイメージです。
(※2)科学技術振興機構 センター・オブ・イノベーション(COI)プログラムの支援を受け設置
(※3)文部科学省 地域イノベーション・エコシステム形成プログラムの支援を受け設置

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第114号(2018.11.30発行)より

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携帯型浄水ボトル初!溶解性鉛まで除去して、どこでもおいしく、安全な水

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携帯型浄水ボトル NaTiO(ナティオ)の特徴を謡うフライヤー

 水道水を入れてプレスするだけで、おいしく安全な水を、いつでも、どこでも飲むことができる―。それが、手嶋教授とトクラス(株)が共同開発した携帯型浄水ボトルNaTiO(ナティオ)のコンセプトです。
 NaTiOの浄水フィルターには、塩素を除去する活性炭のほかに、鉛などの重金属を除去することができる「信大クリスタル」のひとつ、多層構造の結晶体「三チタン酸ナトリウム」が搭載されています。この三チタン酸ナトリウムこそ、手嶋教授がトクラス(株)(※4)との10年にわたる共同研究により開発した、世界初の結晶材料です。
 日本の水道水は、世界で最も安全とうたわれるほどの水質を誇ります。しかし古い水道管が残る場所では、鉄サビや鉛などが水に溶け出してしまうことがあります。特に、鉛は水に溶け込んだ溶解性鉛として存在し、体内に蓄積すると悪影響を及ぼす可能性があるとされます。世界の一部地域でも、古い水道用鉛管に由来した飲料水の鉛汚染が問題になっています。NaTiOの浄水フィルターには、この溶解性鉛をはじめとする多種多様な重金属をすばやく吸着除去する三チタン酸ナトリウムを搭載しています。
 従来の浄水器に比べ、軽量でコンパクトなこともNaTiOの特長のひとつです。これまで浄水器には重金属を取り除くために「イオン交換樹脂」が多く使われていました。しかし、湿潤状態で保管する必要があり、水を吸収することで体積が膨張、どうしても大型化してしまう傾向にありました。一方、NaTiOは250gと非常に軽量、500mlペットボトルとほぼ同等の大きさで持ち運びも簡単です。1つの浄水フィルターで約360回、実にペットボトル約240本分(500mlペットボトル換算)を浄水することができます。浄水フィルターは交換式カートリッジなので、ボトルは繰り返し使え、環境にやさしく経済的であることも魅力のひとつ。便利で機能的、そしてエコな、これまでに無い世界初(※)の携帯型浄水ボトルです。
(※)層状構造の「三チタン酸ナトリウム」を搭載した携帯型浄水器として

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商品名:携帯型浄水ボトル NaTiO(ナティオ)
外形寸法:(約)幅7cm×奥行7cm×高さ20cm
重 量:0.25kg 容 量:330ml
価 格:2,980円(税抜)カートリッジ1個付属
    【交換用カートリッジ3個入り 2,980円(税抜)】
発売日:2018年12月25日
発売元:トクラス株式会社
商品問い合わせ先:トクラス株式会社
    フリーコール 0120-32-0440
    (月~金 9:00~17:30 土・日・祝 9:00~17:00)

2007年から始まったトクラス(株)との共同研究。三チタン酸ナトリウムの開発

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(※4)当時ヤマハ発動機(株)。2010年ヤマハリビングテック(株)(現トクラス)へ事業譲渡。

 手嶋教授の専門は結晶化学。結晶は、物質を構成する原子やイオン、あるいは分子を規則的にならべた構造であり、優れた機能・性質を発現します。特に不純物のない人工単結晶は、エレクトロニクス材料、光学材料、光触媒材料などにも使われています。手嶋教授はその無機結晶育成技術のひとつ、「フラックス法」の研究を専門に行ってきました。
 フラックス法とは、原料となる物質とその溶媒(フラックス)を加熱し、冷却・蒸発させることで物質を結晶化させるという、昔から知られている至ってシンプルな結晶育成技術です。原料、フラックス、温度などを制御することで、針状や薄板状など、用途に合わせた形状や機能をもった結晶を作り出すことができます。その「レシピ」を知っていれば誰でも結晶を作ることができますが、レシピを考案し、より機能性の高い結晶をデザインするには専門的な知識や知見が必要不可欠。信州大学は、長年の研究によりこのフラックス法のレシピを蓄積してきました(大石教授の功績)。近年、世界的にもその先進性が認知され始めています。
 手嶋教授とトクラス(株)(※4)との共同研究が始まったのは2007年。「当時、将来的に会社のコアになるような独自技術を開発したいと共同研究を公募しました。そこで出会ったのが手嶋教授でした」。そう話すのは、共同研究を行ってきたトクラス(株)技術部副部長の上川秀哉さん。ある日、ミルフィーユのような層状の三チタン酸ナトリウムの構造図を見た上川さんと手嶋教授は、この物質が浄水フィルターに使えるのではないかと思い立ちます。住宅設備機器メーカーであるトクラス(株)の浄水器事業は、約30年の実績があり、上川さん自身、長年その研究開発に携わっていました。
 実は、三チタン酸ナトリウムにたどり着くまでに、なんと数百もの結晶材料の検討を行ってきたといいます。「結晶育成研究は非常にニッチな領域。だからこそ、フラックス法を先鋭化させたことは信州大学の独自性にもつながる研究だと思っています。こうした商材に落とし込めたのは、産学連携によりそれぞれの経験や知見が活かされたからだと感じています」と手嶋教授はトクラス(株)との共同研究を振り返ります。

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ミルフィーユに似た三チタン酸ナトリウムの層状結晶の層間に鉛イオンが吸着されるイメージCG。手嶋教授より技術説明の際に投影された。

SDGsに貢献!世界展開を視野に入れたティーバッグ型も開発中

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開発中のティーバッグ型の参考品。パッケージに国旗を記載したとおり、その国の水事情により除去する物質を変えることができる。トラベル用などを視野に開発を進めている。

 国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)では、「すべての人に安全な飲み水への普遍的なアクセスを確保すること」を目標のひとつとしています。水問題を抱える国はまだ数多くあります。今後、世界展開を見据え開発中なのが、水につけるようにして浄水する「ティーバッグ型」の製品です。
 「ティーバッグ型であれば、ボトル以上に、いつでもどこでも浄水が可能です。各国の水事情に合わせたオンデマンドな結晶材料を作ることができれば、SDGsにも貢献する製品開発ができるのではないかと考えています」(手嶋教授)。

信大フラックス法による結晶育成技術と地域イノベーション・エコシステム

 「信大クリスタル」の可能性は浄水器だけではありません。信州大学は長野県と連携し、「革新的無機結晶材料技術の産業実装による信州型地域イノベーション・エコシステム」を展開し「信大クリスタル」の産業実装を目指しており、浄水器はその製品化第1号となりました。フラックス法でつくる「信大クリスタル」はこの事業のコア材料であり、浄水器のほかにも、高機能・高耐久な生体適合材料、電気自動車などの次世代リチウムイオン二次電池用材料の開発も同時に進められています。
 「信大クリスタルが拓く新しい未来をつくりたい」(手嶋教授)。…この発表において「信大クリスタル」を商標化、さらに広く展開していくと伺いましたが、輝かしい未来を照らすぴったりな名称、という印象を受けました。

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