社会データ研究拠点信大的人物
男女の賃金格差解消へ 信州大学独自のプラットフォーム形成

日本における男女の賃金格差は、年々縮小傾向にあるとはいえ、OECD加盟国の平均値と比較しても依然として大きいのが実態です。社会データ研究拠点では、男女間賃金格差解消に向け、その形成メカニズムについて、多面的視点からの分析を目指します。三上亮拠点長にお話を伺いました。(文・平尾 なつ樹)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第156号(2026.3.31発行)より
進路選択時の要因解明へ向けオリジナルデータベース作成
日本は先進国のなかでも、女性の理系進学率が低いことが知られていますが、これは、男女の賃金格差の大きな要因のひとつだそうです。生涯賃金にも大きな影響を与える、大学進学時の分野選択―。どのような理由で進路を選ぶのかは、男女の賃金格差の問題を考えるうえで「非常に大きなテーマ」だと、三上亮拠点長(信州大学学術研究院(社会科学系)講師)は話します。
三上拠点長によると、ヨーロッパなどでは、昔からこの問題に対し研究が進んでいるそうですが、日本においては個人情報保護の観点から、個人の進路や年収情報を取得することが非常に困難であり、研究するには大きな障壁があるといいます。
今回同拠点では、信州大学が総合大学である強みを活かし、教育学部、理学部、経法学部に加え、附属学校とも連携しながらデータを蓄積し、独自のデータベースを作成するプロジェクトを発足しました。
附属学校で実際の進路選択の場面に立つ学生や、信州大学の理学部生に対し、独自のアンケートや実験などを実施して作成したオリジナルデータベースを、研究の資本とする考えです。法学的視点や、教育面からの視点、また理学部を選択した当事者による視点も取り入れることで、進路選択に影響を与える要因のより的確な把握を目指します。
継続調査可能なプラットフォーム形成 他研究者の研究資本にも
男女の賃金格差を考えるうえでは、進路選択の場面だけでなく、その後の就職・結婚などの場面における選択も大きな要因となります。こうした選択についても調査・分析するため、調査協力者の情報を継続的に追い続けられるプラットフォームの形成を予定しているとのこと。
「長期的な目線ではありますが、このプラットフォームを将来的には他の研究グループにも提供できる形にできたら、より大きな社会プロジェクトに発展させることができると思っています」と、三上拠点長は語ります。こうした独自データベースの作成は、一部の大型科研費プロジェクトを除き、国内ではいまだ前例の少ない試みであり、他の研究者にとっても重要な意味を持ちそうです。
学部を超えた大規模プロジェクトがどのように発展し、男女間賃金格差是正につながっていくのか―その歩みが注目されます!

