ロシアからの交換留学生 信州の老舗旅館でおもてなしを学ぶ。信大的人物

ロシアからの交換留学生 信州の老舗旅館でおもてなしを学ぶ。

 信州大学には、さまざまなステージでユニークな活躍をしている学生たちがいます。今回ご紹介するのは、ロシアからの留学生ボルデゥリョワ・タチアナさん。ウラジオストクにある極東連邦大学からの交換留学生として、昨年秋から信州大学グローバル教育推進センターに在籍しています。現在、信州大学で学びながら、松本市の老舗旅館「明神館」で「日本のおもてなし」を学ぶためアルバイトもしています。「日本とロシアとの架け橋になりたい」という夢を抱くタチアナさんを訪ねました。
(文・柳澤愛由)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第115号(2019.1.31発行)より

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留学生タチアナさんのプロフィール
・名前:Borduleva(Family Name) Tatiana(Given Name) Aleksandrovna(Middle Name)
 ボルデゥリョワ・タチアナ・アレクサンドロヴナ
・出身:ロシア ノヴォシビルスク
・年齢:23歳
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・所属大学:極東連邦大学(Far Eastern Federal University)
 所在地:ロシア ウラジオストク
・学部:Oriental Institute ‒School of Regional and International Studies
・専攻:International institutions and processes in the Asia-Pacific
・大学院修士課程1年生
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・信州大学での所属: グローバル教育推進センター所属の交換留学生
・学習予定期間:2セメスター(1年間) 2018年10月~2019年9月
・学習スタイル:1学期目 日本語関連科目、2学期目 教養科目・専門科目

「おもてなし」と「学業」、両立しながら

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独特の「和」にこだわったアートな空間が広がる明神館ロビーで取材。タチアナさんもこの老舗の持つ魅力に魅了されたひとり、とのこと。

 着物姿でてきぱきと接客をこなすタチアナさんは、現在、信州大学グローバル教育推進センターに所属するロシア出身の留学生です。信州大学松本キャンパスから車で約30分、薄川上流の渓谷にある老舗旅館「明神館」が、タチアナさんのアルバイト先。10月からの留学に先行し、昨年4月から明神館で働き始めました。今では着物の着付け、礼儀作法なども身に付け、配膳から接客まで、さまざまな仕事を任されています。
 「日本人の友人から明神館を紹介されたことが、信州大学に留学するきっかけでした。日本語の勉強はしていましたが、専攻自体は日本語とはあまり関係がないので、大学院に進学したら日本語力を落とさないためにも日本に留学したいと考えていました。そうした時、日本人の友人が明神館を紹介してくれて、詳しく調べていくうちにここでぜひ働いてみたいと思い履歴書を送りました。そうしたらOKという返事が来て、それから専攻にも関係する近くの大学を調べ、信州大学への留学を決めたのです」。そう流暢な日本語で教えてくれました。
 日本に興味を持ったのは中学生の頃。日本のアニメを見たことをきっかけに、字幕なしで聞き取れるようになりたいと独学で日本語の勉強を始めたそうです。しかし高校に進学し学業が忙しくなるにしたがい、日本語の勉強は止めてしまっていました。
 「大学に入って学びたい外国語を選ぶことになって、最初は地元でも交流があるドイツ語を勉強しようとも思ったのですが…結局、好きだった日本語を選びました。今では日本語を選んで本当に良かったと思っています!やっぱり日本語は好きですし、おもしろいです。もっと勉強したいと今も思っています」

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扉温泉明神館

1931年開業の歴史を持つ老舗旅館。その昔、この松本市入山辺一帯は、神さまたちが湯治に訪れる場所だったとも言われ、明神館の名称の由来にもなっている。2008年、ホテル・レストランの世界的な会員組織、ルレ・エ・シャトーに加盟が認められたほどのクオリティを誇り、木々のささやきや川の流れる音、鳥の歌声のなかで、上質な時間と「和」の空間を味わうことができる。
http://www.tobira-group.com/myojinkan/

“信州”で感じた新鮮な感動を世界へ

 極東連邦大学でのタチアナさんの専攻は、「環太平洋の国際関係およびその制度」。環太平洋各国における国際的な課題などについて学んでいたタチアナさんが、日本の観光業にも興味を持ったのは大学3年生のとき。故郷ノヴォシビルスクの姉妹都市でもある北海道札幌市のリゾートホテルでのインターンシップがきっかけでした。その経験から、日本語だけでなく、もっと深く日本の観光業について知りたいと感じたそうです。
 明神館は、1931年創業の松本屈指の老舗旅館。2008年、パリに本部を置く世界的なホテル・レストランコレクション「ルレ・エ・シャトー」への加盟が認められ、和のリゾート施設として近年海外からの観光客も増加しており、外国人従業員も多く働いています。
 「ロシアにもホテルはありますが、日本の『旅館』のような宿泊施設はありません。最初は戸惑うこともありました。食の提供の仕方やサービス、あいさつ、あとお客さまと親しくコミュニケーションを取ることにもびっくりでした。それに松本の豊富な自然や空気のおいしさには本当に驚きました。ロシアでは大都市に住んでいたので、空気はずいぶん違います!こんなにきれいな空気があるなんて思いませんでした。この自然は一番の魅力だと思います」。自身が感じた日本の魅力を活き活きとした笑顔で話してくれました。将来の目標は、自身が日本で感じてきた新鮮な感動を多くの人に伝え、日本とロシアとの架け橋になることだといいます。
 「『おもてなし』は日本にしかない言葉。日本でしか学べないことだと思います。今ロシアから来る観光客の多くは、東京や京都などの都市部や有名な観光地しか知りません。長野県はほとんど知られていないのです。大都市から離れていても魅力的な場所が日本にはたくさんあるのに、本当にもったいないことだと思います。その魅力をもっと多くの人に紹介していけたらと思っています」

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長野県のローカルテレビ局でタチアナさんのドキュメンタリーを放送。
2018年の年末に長野県のローカルテレビ局で、タチアナさんの1日を追ったドキュメンタリーが放送された。
写真提供:長野放送(NBS)

交換留学プログラムで専攻に関する学びも深める

 信州大学では、多様な専攻を持つ外国人留学生を多数受け入れており、効果的な日本語教育を行いながら、留学生の学修目標の達成を目指したプログラムを用意しています。タチアナさんも現在は日本語関連の授業を中心に受けていますが、2学期目は自身の専攻や興味に即した信州大学の教養科目・専門科目を履修する予定です。「実はロシアの大学では受けたい授業を自分で選ぶということが無かったので、とても迷いました。でも学びたいことを自分で選べるのは、とても素晴らしいことだと感じています。これからは自身の専攻にも関係のある経済と環境に関する授業
を受けたいと思っています。卒業論文では『北極海航路の発展』をテーマにしていたので、とても興味があります。信州大学は環境に関連する研究が強いので特に勉強してみたいです」。そう期待に胸をふくらませていました。
 信州大学の大学間交換留学プログラムは、現在約200ある協定校のうち、大学間で学生交流の覚書を結んでいる多数の協定校と留学生を相互に派遣・受け入れを行う双方向型のプログラムです。2018年度は、中国、韓国、イタリアなど16か国40大学から計64名を受け入れ、信州大学からはアメリカ、ドイツ、マレーシアなど9か国14大学へ計19名を派遣しています。現在ロシアの大学とは、タチアナさんの母校極東連邦大学を含む2校と協定を締結しています。今年から新たに2大学と協定を結び、ロシアとの学術連携をさらに強化する予定です。タチアナさんのように、留学生の信州大学での学び、長野県での経験全てが、いつか、世界と日本、そして長野県をつなぐきっかけになることを期待しています。

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信州大学での授業「グローバル人材論」で、明神館齋藤社長がゲスト講師として講義。

2018年10月に行われた、グローバル教育推進センターの永田浩一准教授による「グローバル人材論」の授業では、明神館の齊藤忠政社長をゲスト講師にお招きし、海外をターゲットにした観光経営戦略についてご講演いただいた。

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