倉田 紗耶加さん(大学院農学研究科)信大的人物

トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム 選抜 アメリカのキノコ会社でインターンシップ

倉田 紗耶加さん(大学院農学研究科)

 日本を飛び立つ留学者が減少している一方で、時代はグローバルな人材を求めている。文部科学省は2013年、海外留学を促進するキャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」を打ち出した。翌年その主な取り組みとして、高校生・大学生の海外留学等を支援する「日本代表プログラム」を始動した。

 第1期生に応募した倉田紗耶加さん(当時農学部4年)は、総数1700名から選抜された323名の1人。倉田さんが立てた留学計画はカリフォルニア州のキノコ会社でインターンシップをすることだった。〔留学期間2014年9月5日~12月19日〕


 

(文・中山 万美子)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第93号(2015.5.29発行)より

夢・志を持つ若者を応援するプログラム

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壮行会で、下村博文文部科学大臣(当時)と握手する倉田さん

 信州大学は、グローバル人材育成計画に基づき、“年間200人(卒業/修了する学生の10人に1人)の学生が海外体験をすること”を目標に、留学しやすい環境づくりを行い、新規の語学研修プログラム等も実施してきた。すでに目標にも達し、2015年度は、国際交流センターをさらに機能強化した「グローバル教育推進センター」がスタートを切っている。

 文部科学省がまとめた資料(2015年2月)によると、日本を飛び立つ留学者は、現在少し増加が見られるようになったが、2004年のピーク時の82,945人から7年連続で減少していた(2011年57,501人)。理由は、若者のローカル・安全志向、就活への影響、経済的困難、国内環境の改善による渡航の不要、若者の人口減少などと言われる。政府は東京オリンピック開催の2020年までに留学者を12万人にする方針を打ち出し(「日本再興戦略」2013年6月)、文部科学省は、「トビタテ!留学JAPAN」というキャンペーンを始めた。

 官民協働の取り組みで民間企業からの支援、寄付により、実施されているのが「トビタテ!留学JAPAN 日本代表プログラム」。アカデミックに限らず、インターンシップ、ボランティア、フィールドワークなど、夢・志を持つ留学希望者本人が立てる留学計画を丸ごと応援するプログラムで、年間換算300万円相当の奨学金が支給されるという。

 2020年までに1万人の大学生・高校生を海外へ送り出す計画で、グローバル人材育成に力を入れる信州大学としても、ぜひ学生たちに挑戦してほしいプログラムだ。

もっと世界の人々を知るために、トビタツ!

 倉田さんは、もともと留学に興味があった、というわけではなかった。3年後期から所属する研究室(食料生産科学科動物栄養飼料学研究室:神勝紀教授)は、常に留学生がいる国際色が豊かな研究室で、教授も留学を奨励している。倉田さんはタイの留学生と話すうちにタイに興味を持ち始めた。ちょうど農学部で2週間の国際牧場実習の募集があったのですぐに応募し、2014年2月、タイへ留学することになった。

 タイのハイレベルな農場、工場の見学、現地受け入れ大学の学生たちとのディスカッション。学生との英語による交流は手応えを感じたが、初めて訪れるタイは、何もかも新鮮で戸惑いもあった。

 「マーケットの横にあるレストランの店員がお店の机の上で寝ていたり、空港で店員がアイスを食べながら接客していたり…こんなことが許される国があるのだと衝撃を受けましたが、一方でタイの人々の自由さをうらやましくも思いました」
 人々の感覚、価値観は、現地に行かないとわからない。倉田さんは、街の人々と話したかったが、一般の人々はあまり英語を話さなかったので、今度は英語圏に留学して、もっと街の人々と話をしようと思った。

 帰国して1ヶ月と経たない3月末、今度は教授から「トビタテ」の話を聞く。倉田さんは、即決で応募することにした。

 研究室では、未利用資源を有効利用するリサイクルシステムの研究に取り組んでいる。リンゴジュースの搾りかすから、キノコ培地を作り、キノコ廃培地から牛用飼料を作るという循環型社会を目指すシステムだ。違う分野を繋ぐシステムのため、それぞれの現場を深く知る必要がある。研究室の先輩にキノコ生産工場の機械をつくる会社社長がいたことから、納品先のアメリカのキノコ会社、(株)グルメマッシュルーム(GMI)を紹介してもらい、インターンシップをさせてもらえることになった。

 アメリカには多様な人種がいることも魅力的だ。キノコ事情は、培地や廃培地は、どうなっているのか?

 4月中旬の申請締め切り直前まで、現地とのやりとりが繰り返された。書類審査、面接審査を経て6月末に合格が決定し、7月に行われた壮行会で、倉田さんは、自然科学系、複合・融合系人材コース代表として決意表明をしている。

キノコ会社のインターンシップ

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広々と続くブドウ畑

 倉田さんが滞在したのは、都会からさほど離れていない穏やかなセバストポルという町。GMIには、ホームステイ先から10~15分かけて自転車で通った。通う道すがら広々と続くブドウ畑は、夕日に照らされるとあまりに美しく、感動したという。

 朝7時30分(または8時)に出勤、15時(または15時30分)に帰宅。キノコの培地準備、菌の植え付け、収穫、パッキンの作業、またデリバリで市場へ行くなど、工場での一連の作業や、オフィスの会計書類のお手伝いなども体験した。

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メキシコ料理を教わる

 キノコは、まだアメリカの食文化には馴染んでおらず、工場にはたくさんの見学者が訪れ、料理法なども紹介している。広く知ってもらうことは重要な営業戦略だった。キノコの廃培地処理は、日本、長野県に比べると少量で問題にはなっておらず、GMIの廃培地は、隣のワイン工場が持っているぶどう畑の肥料になっていた。

 工場では多くのメキシコ人が働いている。当然英語はペラペラかと思ったら、ほとんどしゃべれない。倉田さんは、少しずつスペイン語を覚え、一緒に料理を作り、仲良くなっていった。親しい友人もできて「メキシコ料理をたくさんつくっていたら、太ってしまいました」と笑う。

 倉田さんの目的の一つは、グローバルリーダー像を明確にすること。メキシカンが活き活きと働くGMIには、異文化を受け入れる、人望の厚い社長の存在がある。そして管理職の人たちが1人ひとりの社員のところに出向き「今月もよくがんばってくれてありがとう」と言ってお給料を渡す姿もあった。「行動指針を明確に示し、周りの人々を尊敬し、感謝する人」が、今の倉田さんの理想のリーダー像になっている。

自然を愛する心と農業で活性化している町

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野生のキノコ採取にもでかけた

 倉田さんがセバストポルで何回も耳にしたのは「ローカル」と「オーガニック」。アメリカは大規模農家のイメージが強かったが、ここには意外にも有機農業を営む小さな農家が多い。全米的なネットワークにつながり、オーガニックな作物の大展示会が行われ、農家から消費者へ直接販売・配達するようなシステムもある。小学校へ行くと、木造の校舎に木の食器、授業には農業を取り入れ、自然を愛することをテーマに取り組んでいた。「なぜ、これほど熱心に?」と聞くと、それが町の方針だという。

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左側:出会った人に日本へのメッセージを書いてもらったノート
右側:日本紹介を兼ねて工夫した名刺

 自然を愛し、農業で地域を活性化しているセバストポル。倉田さんはここに、自分が求めていたものがあるように思えた。帰国してアメリカへの想いが募り、本気であの町に住み、就職したいとも考えたそうだ。帰国から3ヶ月経った取材時も「まだ、総括できていないんです」という。

 倉田さんは、トビタテの研修で、出発前に留学計画をブラッシュアップし、目的をより明確にして、共に世界に飛び立つ仲間たちと意識を高め合った。現地で引っ込んでしまいそうになる時にも、自分を鼓舞して人々に話しかけ、日本を紹介し、精一杯の
毎日を過ごしてきた。

 今回のインターンシップ留学は、これから倉田さんの中で生き続け、倉田さんが出会う、人々、出来事、課題、すべてに作用していくことになるのだろう。
 若者よ、Be ambitious! 世界にトビタテ!!

信大からトビタツ2期生!

小林祐輝さん(理工学系研究科繊維・感性工学専攻修士1年)

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■ 期 間:2015年5月1日~2016年3月1日 

■ 留学先:香港理工大学(信州大学繊維学部交流協定校)

 小林さんが所属する研究室(先進繊維工学コース・金井博幸准教授)は、2014年から、香港の繊維研究の中心を担う経済政府機関(HKRITA)と、香港理工大学の三者による寝具製品開発の共同研究を開始した。そこで小林さんは、香港ではどのような寝具を使い、どんな室内環境で寝ているのかなどの実態調査をする計画を立てた。これまでにルーマニア、オーストラリア、アメリカ、韓国と、ホームステイや交流プログラムなどに参加し、渡航経験を重ねてきた小林さん。留学を熱願し、調査する役割を自らの留学計画に重ねたのだ。「グローバルに活躍できる日本の繊維産業を担う研究者になりたい」と語り、日本の繊維産業の新時代への貢献を願っている。長野県東御市長から「ふるさと大使」にも任命され、観光大使の役割も果たす。

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