第4回 深掘り!大学院生。Episode1 都築宙記さん信大的人物
教育学研究科 高度教職実践専攻 教職基盤形成コース 専門職学位課程2年生

知識をつなげて生徒に“深い理解”を。指導法を模索し、研究室で現場で、奮闘中!
断片的な知識の習得にとどまらない、深い学びをどうやって身に付けさせるか。これは、従来の暗記中心からの脱却に向けた長年の教育課題であり、文部科学省が次期学習指導要領に盛り込むことを検討している重要なテーマとなっているそうです。その最前線で研究に取り組んでいるのが、都築宙記さん(教育学研究科 高度教職実践専攻 教職基盤形成コース 専門職学位課程2年)。単元を越えた知識をつなげることで、ものごとの深い理解に至る―こうした教育の実現に向けて、日夜、研究と実践に奮闘しています。(文・佐々木 政史)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第157号(2026.5.29発行)より
ご本人から一言
知識の関連付けに教育課題 次期学習指導要領にも
「川はどのようにして形成されるのか?」。
さて、皆さんはこの問いに正しく答えられるでしょうか。
教育学研究科 高度教職実践専攻 教職基盤形成コース 専門職学位課程2年生の都築宙記さんによると、小中学校理科の地質分野の観点からの理想的な回答は、「地面に染み込み切れなかった水が、高い所から低い所へと流れることによって」。中学1年生までの知識で答えを出せるそうですが、都築さんが長野県内の中学1年生を対象に調査を行ったところ、ほとんどの生徒は正しく回答できなかったといいます。
いったい、なぜでしょうか?都築さん曰く、「それは、学んだ個別の知識をつなげて考えられていないから」とのこと。つまり、「地面に染み込み切れなかった水がある」、「水は高い所から低い所へと流れる」というそれぞれの知識はあるけれど、それらが頭のなかで関連付けられていない。そのため、「川はどのようにして形成されるのか?」という質問にうまく回答できないというのです。
都築さんの研究テーマは、こうした教育課題の解決。地質学の分野で、単元を越えた個別の知識をつなげて、「川の形成のされ方」や「平地の形成のされ方」などを説明できるくらいまで、深い理解に至る理科授業の在り方を模索しています。こうした教育指導方法は、実は文部科学省の次期学習指導要領でも「中核的な概念」や「ビッグアイデア」というキーワードで取りあげられることが検討されており、これからの学校教育を考えるうえで非常に重要になってくるのだそう。都築さんの研究は、まさに日本の教育現場の最前線の課題に挑戦していると言えますが、「とてもやりがいを感じます」と意気込みは充分です。
「長野県に津波が来る」生徒の言葉に危機感
大学院でこうした研究に至ったきっかけのひとつは、塾講師のアルバイトでのある忘れられない出来事だと都築さん。「生徒に『長野県って津波が来るよね』って、真顔で言われたことがあるんです。中学2年生だったので、長野県は海から遠く離れていて、間に高い山があることは知っていると思うんですが…」。映画『日本沈没』が話題になった時期でもあり、誇張されたイメージを抱いてしまったのかもしれないということ。この体験に危機感を持ち、学校で学んだ知識をつなげることで正しい理解に至り、最終的に自分で物事をしっかりと判断できる生徒を育てることの重要性を強く感じたそうです。
都築さんは今年4月から、信州大学教育学部附属長野小学校で特任教諭として教壇に立ち、小学4・5・6年生の3クラスの理科を担当しています。ご自身で教材もつくりながら、個別の知識を関連付けて、深い学びにつなげる教育を、実際の現場で取り組んでいるそう。大学院での研究を現場で実践したときに、どのような効果が見えてくるのか、あるいはどういった課題にぶつかるのか。都築さんの挑戦は始まったばかり。今後が楽しみです。

