もっともっと研究LOVE!深掘り!大学院生。第3回 DOCTOR & MASTER訪問日誌 02信大的人物
教育学研究科 高度教職実践専攻 教職基盤形成コース 専門職学位課程2年生 小平 温大さん
実践と学術の”二刀流”で、英語学習に新たな道筋を
生徒が自ら課題に気づき、ゴールを決める―中学校の英語学習でこうした授業を信州大学附属中学校で実践している小平さん。そして授業が終わると大学院での学術研究へ。実践研究と学術研究の”二刀流”で英語学習に新たな道筋を付けようと奮闘する毎日は、忙しくも充実感で溢れています。(文・横川 真美)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第151号(2025.5.30発行)より
生徒が英語学習を楽しいと思ってくれるように
研究のテーマは、「英語学習において、自分で考えて、自分に合った学び方を選べる生徒を育てる」ということ。ひとつの教室には、英語が得意な生徒だけでなく、苦手な生徒もいます。また、学習に対する意欲が高い生徒だけでなく、そうでない生徒もおり、様々なレベルの学習者がいる中で生徒一人一人が主体的に、自身の学習方法を選択できるようになることを目指しています。
その実現に向け、小平さんが考えているのは次のような方法です。まずは、生徒各々が会話などのコミュニケーションを通して、上手くいかなかった(伝わらなかった)経験から、克服したい課題を明確にして目標を設定します(パーソナル・ゴール)。 次に、教師がその目標を達成するために有効と考えられる複数の練習方法を紹介し、生徒はそれらの練習方法の中から、自身にとって最も効果的だと考える方法を選択し、主体的に学習に取り組みます。
「生徒が英語学習を楽しいと思ってくれることが、何よりの願いです。そのために、毎日、現場で実践研究に取り組んでいます」と小平さん。
学術研究を活かした英語教育を
2つ目の“学術研究”における研究テーマは、日本人が英語を習得する際に、母語の日本語が持つ意味の感覚がどの程度影響を及ぼすのかを探るもので、特に英語と日本語の間で単語の意味の広さや使い方が異なる場合にどのような問題が生じるのかという点を研究をしています。
例えば次のような調査をしました。中学生と大学生を対象に、「wear」や「drink」といった単語を含む英文の正誤を判断してもらうテストを実施。その結果、例えば「wear a dress」(ドレスを着る)といった、日本語に近い使い方では正しいと判断できますが、「wear perfume」(香水をつける)といった日本語とは異なる使い方をする際には誤った判断を下す傾向が見られました。こうした結果から、英語の単語を教える際には、日本語との意味の違いを明確に説明することが重要であるなどのことが分かり、小平さんは授業に活かしていきたいと考えています。
教職大学院では、実践研究だけでも単位を取得できますが、小平さんは敢えて学術研究にも力を入れて取り組んでいるそうです。その理由について次のように話します。
「学術研究のテーマは、私自身が英単語を覚えることが苦手だったので、何とか生徒が覚えやすい方法はないかと、最初は軽い気持ちで学部時代に始めたんです。でも、どんどん面白くなって、大学院でも続けたいと。学術研究には実践研究にはない俯瞰的で体系的な見方ができるなどの利点もあります」
小平さんは大学院終了後に教員になった後も、学術研究は続けていきたいと考えているそうです。現場での実践研究と研究室での学術研究の”二刀流”は、生徒に寄り沿った英語教育を実現するうえで、きっと小平さんならではのユニークな強みとなっていくのではないでしょうか。
キャリアパス
大学院終了後は、中学校の英語教師として着任したいと考えています。それだけに、大学院生の間に特任教諭として、現場の経験を積めることはとてもありがたいと考えているそう。また、中部地区英語教育学会に所属し、学術研究も続けていく予定です。
好きなこと
音楽を聴くことが大好きという小平さん。好き嫌いをしたくないので、敢えてジャンルにこだわらずに聴くようにしているのだそう。インターネット音楽配信サービスのレコメンド機能を活用し、日々、色々なジャンルに触れて、音楽の世界を広げています。気に入っていたアーティストが、有名になることも。そんな時は心のなかで密かに「先見の明があるのでは?」と嬉しくなるそうです。