地圏・湖沼カーボンダイナミクス研究拠点信大的人物
信州 諏訪湖でメタン資源生成のメカニズム解明から “温室効果ガス削減型発電”の社会実装へ

地圏・湖沼カーボンダイナミクス研究拠点は、「地球科学からエネルギー開発、そして社会実装へ」を理念に掲げ、湖沼や地圏に存在するメタン・可燃ガス資源の利活用によって、脱炭素社会への貢献を目指しています。拠点のビジョンについて榊原厚一拠点長にお話を伺いました。
(文・平尾 なつ樹)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第156号(2026.3.31発行)より
強力な温室効果ガス メタンをエネルギー資源として活用へ
メタンは強力な温室効果ガスである一方で、燃焼によるCO₂排出量は小さく、エコな燃料としても知られています。ただし、自然界から回収した「漏出メタン」は、多くの不純物を含むため、エネルギー資源としての活用は現状では困難とされています―。
地圏・湖沼カーボンダイナミクス研究拠点では、湖沼地下でのメタンの生成メカニズムの解明と地下環境に由来する漏出メタンのエネルギー資源としての活用に挑んでいます。具体的には、諏訪湖をフィールドに、メタンが生成される湖底堆積層や岩盤層における環境の形成と、そこでの地下水流動を介した物質循環がメタン生成に与える影響の解明に取り組んでいます。さらには、メタンガスの物理化学的特性を踏まえた高純度化技術の確立によって、「温室効果ガス削減型発電」の社会実装を目指します。
「何もしなければ温室効果を加速させるメタンガスですが、温室効果ガス削減型発電の社会実装を実現することで、代替エネルギー資源の提供と温室効果の削減の両方に貢献することができます」と、榊原厚一拠点長(信州大学学術研究院(理学系)助教)は話します。
同拠点では、メタンが生成される環境形成を調べる「地質学」、生成から大気への放出過程を解析する「物質循環学」、漏出するメタンを高純度化してエネルギー資源とする「化学」と、理学部内の各分野が融合して研究に取り組んでいます。今後は、繊維学部・工学部・農学部との連携も視野に入れており、地球温暖化抑制に向け、信州大学全体でチーム化して研究に取り組むことも想定しています。
諏訪湖をロールモデルに 世界各地へ技術展開目指す
「サイエンスを社会に還元したい」という思いから地圏・湖沼カーボンダイナミクス研究拠点は発足しました。「研究を“サイエンスだけで終わらせないこと”が拠点としての重要なビジョンの1つです」と榊原拠点長は話します。
諏訪地域の自治体や企業とも連携し、諏訪湖のメタンをエネルギー資源として活用する「温室効果ガス削減型発電」が実用化できれば、それをロールモデルとして、技術を世界各地で応用的に展開したい考えです。
さらに、水圏・地圏・物質循環分野が連携して、数分から数億年の幅広い時間スケールを対象とした本研究の知見は、「将来的に地球外惑星の調査・開発時にも貢献する可能性を秘めている」と、榊原拠点長は語ります。
信州の諏訪湖というローカルな研究が、世界、さらには宇宙までつながっていく―。
そんな未来が待っているかもしれません!

