信大同窓生の流儀chapter.19 創作カフェ経営・恐竜画家 CANさん(茶木佳那子さん) (理学部物質循環学科卒業生)信大的人物

地球環境や生命を考えるきっかけに“墨で恐竜を描く” 唯一無二のアーティスト

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絶滅した恐竜への愛が詰まった、悠久の時を駆ける一冊。CANさんの絵が美しくも切ない…。

志を持っていきいきと活躍する信大同窓生を描くシリーズの第19回で登場いただくのは、信州大学理学部卒業生のCANさん(本名:茶木佳那子さん)。CANさんは、まるで学校の美術室や漫画制作スタジオのような一風変わったカフェを経営するかたわら、絵本作家でもあり墨で恐竜を描く唯一無二のアーティストとして活躍されています。取材陣はそのユニークさに惹かれCANさんが経営する大阪・本町の創作カフェを訪問。その独特の作風や、活動に込められた想いなど、興味深い“CANワールド”をお聞きしてきました。(文・佐々木 政史)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第158号(2026.7.31発行)より

“絵描きの天国” をつくりたい 大人の美術カフェを開業

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創作空間caféアトリエの内観。利用者が描いた作品があちこちに展示され見るだけでも楽しい。文字通り創作者のアトリエ。

シュッ、シュッー。迷いのない筆致で墨を含んだ筆ペンが紙の上を気持ちよく走り、姿を現したのは、躍動感ある恐竜の絵。墨ならではのモノクロームのシンプルさと、筆独特の抑揚、カスレの利いた表現が唯一無二のユニークな恐竜画を生み出しています。描いたのは、信州大学理学部卒業生の茶木佳那子さん。大阪・本町にある「創作空間caféアトリエ」を経営しながら、“CAN”の作家名で恐竜画家として活動し、注目を集めています。

CANさんが営むお店のコンセプトは“大人のための美術部カフェ”。ほぼなんでも揃う画材が使い放題で、絵やイラストを描く人にとってはまさに天国のような空間です。利用者は20代から40代の女性が中心で、趣味で創作を楽しむ人たちが訪れるそう。また、コミュニティづくりを目的に3ヵ月ごとに交流会も開催しており、定員40名が毎回いっぱいになるほどの人気だといいます。CANさんがカフェ経営に関心を持ち始めたのは、信州大学在学中。大学時代を過ごした松本市は個人経営のカフェが多く、色んな店を開拓するのが趣味だったそう。そして、新しい店を訪れるたびに「カフェってどうやって開業するんですか」と店主に質問していたといいます。

大学卒業後は環境保全に携わる仕事を目指し名古屋の水処理会社に就職するも、26歳の時に、かつて興味を持っていた念願のカフェ経営に乗り出しました。創作をコンセプトにした理由は、CANさんの体験によるもの。もともと“恐竜オタク”で高校では美術部でご自身も絵を描くことが大好きだったため、よくカフェで絵を描いていたといいます。しかし、周りの視線がどうしても気になり集中できなかったので、「自分のような人が安心して絵を描ける場を作りたい」そう思ったのだそうです。

毛筆と墨で描く恐竜アート 「#1日1恐竜」で世界ともつながる

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取材班の“おねだり”に快く応えていただき、サラっとイラストを描いてくださった。

CANさんにはもともとアーティストとしての顔があります。恐竜好きが高じて始めたという「恐竜画家」です。

毛筆と墨を使って描く独自のスタイルが、他にはないユニークな恐竜画として注目を集めています。「書道家だった祖母の影響です。水墨画のように白と黒で表現するのがかっこいいなと思って」(CANさん)。こうしたスタイルで恐竜画を描き始めたのは2018年。「#1日1恐竜」とハッシュタグを付けてSNSに投稿を続けたところ、なんと開始2週間でカナダのロイヤルオンタリオ博物館の著名な恐竜研究者から「絵が欲しい」と連絡が。半年後にはテレビ出演、1年後には絵本のオファーが舞い込んだそうです。「恐竜画家は60代の男性が多く、女性で新しい表現の恐竜アートを生み出す人は少ないんです。こうした点に注目してもらっているのかもしれません」とCANさん。

最近はライブペイントにも積極的に取り組んでおり、商業施設や企業などからのオファーが年間10回以上はあるといいます。高さ4m×幅10mもの大画面に大きな筆を使って、恐竜の知られざる豆知識なども披露しながら、即興で描き上げるそう。ライブペイントの目的をお聞きすると、「もともと恐竜好きな人じゃなくても、アートとして面白いなと思ってくれた人が恐竜に興味を持ち、さらにその先に地球科学に関心を寄せるきっかけになればいいなと思っています」と話します。ちなみにCANさんの“推し”はパキケファロサウルスとのこと。さすが通ですね。

とにかく恐竜を研究したい…その熱い想いで信大へ

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アトリエ内には、絵具・マーカー・スクリーントーンなど、ほぼすべての画材が揃う。

「本当は恐竜の学者になりたかったんです」そう語るほど、CANさんの恐竜愛は深いのだそう。ハマったきっかけは高校生の時。図書館で読んだ地球科学の本を通じて恐竜に興味を持ち、1億7000万年もの長期にわたり地球上に存在していたにも関わらず、たった一度の小惑星衝突で絶滅したのでは、ということを知り、衝撃を受けたといいます。

何が起こって恐竜が絶滅し、その後地球環境がどのような変遷を経て、いま自分がここにいるのか―。その時空を超える答えを学ぶことができる大学を探した結果、信州大学 理学部 物質循環学科に行き当たったとのこと。大学時代は、古代の地層から恐竜が生きていた当時の環境を復元して考えることに熱中、上田市で60mもある地層を調査したフィールドワークは「めちゃくちゃすごい崖を登ったりして楽しかった」と笑います。

また、研究以外でも、サークル「りんご部隊」で安曇野にあるりんご農家の作業を手伝ったり、スキーや山歩き、カフェ巡り、塾講師のアルバイトと、様々な活動に精力的に取り組み、学生生活を満喫していたそう。それでもやはり恐竜への情熱は特別で、「塾講師で稼いだお金で、全国の恐竜博物館を片っ端からまわる旅行をしていました」と楽しそうに当時を振り返ります。

恐竜画家として世界に羽ばたく 海外でやがて個展も

CANさんの今後の夢はカナダでの個展です。SNSを通じて繋がったロイヤルオンタリオ博物館の恐竜研究者から、個展開催時にはバックアップの約束も得ているといい、実際に準備を進めているそうです。「自分の名前『佳那子』の由来が、実は両親のハネムーン先であるカナダに由来するんですが、カナダには不思議な縁がありますね」。

最後に、「茶木さんにとって、恐竜とはどんな存在ですか」と尋ねると、「知れば知るほど、”今、自分がここにいる奇跡”を感じさせてくれる存在」そうCANさんは答えてくれました。生命が約40~35億年前に誕生し、何度もの大量絶滅を経て、今ここに自分がいる。その連鎖を実感させてくれる存在だといいます。

これまで存在したどの生物よりも多様性にあふれ、進化を繰り返すことで長期にわたり繁栄しながらも、隕石で絶滅した恐竜。CANさんはその姿を通して、地球環境や生命のつながりを考え、これからも恐竜画家としてそれを伝えていこうとしています。モノクロームの恐竜画から、彩り豊かな地球環境や生命を伝える―。その活動から今後も目が離せません。

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