もっともっと研究LOVE!深掘り!大学院生。第3回 DOCTOR & MASTER訪問日誌 04信大的人物
総合理工学研究科 工学専攻 水環境・土木工学分野(土木ユニット) 修士課程1年生 武内 裕哉さん
駅は鉄道の発着場所だけではない。地域づくりの拠点になる!
駅とその周辺エリアは、単なる鉄道の発着場所にとどまるのではなく、地域の賑わいづくりの拠点になるのではないか?その可能性を探りたい!そのような想いを持ち、武内裕哉さんは今年4月から信州大学 総合理工学研究科 修士課程に進学しました。駅と周辺市街地をつなぐ「駅まち空間」としての駅前広場に注目し、その利活用策について研究しています。(文・佐々木 政史)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第151号(2025.5.30発行)より
小諸駅前の再開発で「駅前広場」の利用意向を調査
地方都市で駅の改札をくぐると、がらんとして人通りが少なく、周辺市街地は活気がなくて寂しい―。多くの地方都市では、人口減少と高齢化、住宅や店舗の郊外への拡散により、かつて賑わいをみせた駅周辺の市街地の空洞化が地域課題となっています。一方で、鉄道は依然として自動車を持たない学生や高齢者などの交通手段として重要であり、駅とその周辺空間はそのような人たちが集まってくる場所として、地域の賑わいづくりのポテンシャルを持っていると言えます。
その可能性に着目し、総合理工学研究科工学専攻修士課程1年生の武内裕哉さんは、「駅まち空間」を通じた地域づくりの研究を行っています。駅まち空間とは、駅とまち(市街地)をつなぐ空間のことで、例えば「駅前広場」があります。駅前の空間はその活用法として、タクシーやバスのロータリーとして使用されることが一般的ですが、それに加えて広場を設けて上手く利活用することで、人が集まり交流する場として賑わいを創出できる可能性があります。
武内さんは小諸駅の駅前広場について調査し卒業論文にまとめました。小諸市は既存の駅前広場を含む駅まち空間の活性化を目指した社会実験に2023年から取り組んでいます。武内さんはこの実験にも関わりながら、小諸駅の利用者を対象に、駅前広場にあれば利用したい施設の利用意向を282人(有効回答数225人)にアンケート調査しました。結果、若い人は学習スペースや銀行の利用意向が強く、高齢者は農産物直売所の利用意向が強いなど、世代間でのギャップが大きいことなどが分かりました。
こうした調査結果を小諸市に伝えたところ、これからの計画づくりに役立てることも検討しているそうです。自治体ではワークショップなどを通じて、まちづくりで地域住民の声を聴く機会も設けていますが、参加者は高齢者がメインになって偏りが出てしまうことが多いといいます。武内さんの調査は様々な世代の利用意向を聞いてまとめているだけに、小諸市にとっては貴重な情報になっているようです。
温かな交流が生まれる拠点づくりへ 県外事例も含めて研究したい
武内さんは高校生の時に地元の東京都町田市で行われた大規模再開発を目の当たりにし、まちづくりに興味を持ったそうです。これは町田市と東急株式会社が駅、商業施設、都市公園を再整備したもので、「どこにでもあるような住宅地と物寂しい商業施設しかなかったまちがダイナミックに変わり賑わいが生まれていく様を肌で感じ、こうしたことに自分も関わりたいと思った」と武内さんは振り返ります。
さらに大学で小諸駅前広場の調査に携わったことで、まちづくりへの想いは違った観点から強まったそうです。駅前でアンケート調査を行っていると、地域の人から「大変でしょ、がんばってね」と差し入れをもらうこともあり、こうした人と人の温かな触れ合いや交流が生まれる拠点になる場づくりに関わりたいと思うようになりました。
今年4月に大学院1年生としての研究生活を始めたばかりの武内さん。今後は小諸での研究で得たことを活かして駅を拠点にした地域づくりの可能性を深堀していきたいと考えています。
院生あるある
都市計画研究室には全国各地のお土産があり、おやつに困ることはないそうです。研究室の大学院生はまちづくりに強い関心を持つだけあって、旅行好きが多いため。その情熱は人並み外れていて、どんなに忙しくても足が向かうといいます。武内さんも北海道旅行の際、移動中の電車内やホテルで学会の原稿作成に追われていたこともあるそう。
また、旅行と関連して乗り物好きも多く、森本助教が「学会で○○に行くので、誰か行き方を教えて」と研究室の学生に尋ねると、周りから一斉に「電車なら私に任せてください!」「飛行機は私がやりますよ!」と声が飛んでくるのも、都市計画研究室あるあるだといいます。