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地域で支え、描く、子どもたちの未来 サードプレイスづくりで学校現場と地域をつなぐ!

 地域コミュニティの衰退などにより、子どもたちが地域と関わる機会は、大きく減少しています。また学校現場の人手不足の観点からも、地域全体で子どもの育成を支えていくことが重要になるなか、「社会に開かれた教育課程の実現」をテーマに現場での実践研究を進めているのが、教育学研究科 高度教職実践専攻(教職大学院)専門職学位課程2年生の塩原咲希さんです。自身の母校でもある上田市立北小学校に通いながら、地域住民と子どもたちの憩いの場となる“サードプレイスづくり”に、忙しくも充実した毎日を送っています。(文・平尾 なつ樹)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第139号(2023.5.31発行)より

コミュニティルームで、 新しい居場所を

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塩原さんの母校でもある上田市立北小学校にある、地域住民と子どもたちの憩いの場となるコミュニティルーム

 上田市立北小学校では、10年ほど前から“コミュニティ・スクール”の仕組みを取り入れており、県下でも有名な実践校として知られています。コミュニティ・スクールは、学校内に地域住民から構成される「学校運営協議会」という組織を作り、同協議会を通じて地域と学校との連携を深める仕組みです。文部科学省が2005年から推奨しています。
 同校のコミュニティ・スクールの取り組みのひとつとして、“コミュニティルーム”の導入があります。地域住民と児童が交流するための場所=コミュニティルームを学校に併設して、いつでも学校に地域住民を受け入れられるようにしています。
 「久しぶりに母校を訪れた時に、地域の方がたくさん訪れていて、とてもいいなあと思ったんです。私が小学生だった頃にはない光景でした」と話すのは、教育学研究科高度教職実践専攻(教職大学院)専門職学位課程2年生の塩原咲希さん。附属松本中・長野小で学部での教育実習を終え、大学院へ進んでからは、毎週母校でもある上田市立北小学校を訪れ、地域住民と積極的に関わりながら、コミュニティルームを活かした学校と地域との連携について実践研究を進めています。
 「実際に現場を訪れて知ったのは、地域には、子どもの成長を応援してくれる方がたくさんいらっしゃるということです」と塩原さんは振り返ります。「学校だけでは解決できないことが、地域の方の力を借りてうまくいく、ということがたくさんありました」。
 例えば、毎年講師を招いて「剪定講座」を行っている同校では、地域住民で剪定の知識とスキルのある方に、学校の庭木の手入れをしてもらっています。他にも、ビデオカメラなどの資材を提供してもらうこともあるそうです。
 また、地域との交流は、子どもにとっても大きな価値があると塩原さんは話します。
「先生には話しにくいことを、地域の方に話せている子どももいます。その子にとって、コミュニティルームが安らげる場所なんだなと感じます」。
 コミュニティルームを、単なる活動拠点ではなく、「地域の方や子どもたちにとって、居心地が良く、新たなやる気を生む“サードプレイス”にしたい」と思ったことが、塩原さんの研究の発端であり、目標です。
 「今はまだ決まった活動がない日には地域の方もいらっしゃらないですが、私が通い続けることで、“いつでも来ていい場所なんだ”と思ってもらえるよう働きかけていきたいです」と、情熱を込めて話してくれました。

教員になっても、地域と学校の架け橋に

 実は塩原さんは、既に教員採用試験に合格しています。それにも関わらず、すぐに現場に立たずに大学院へ進学したのは、教員としての志望先を中学校から小学校へと変更したのがきっかけだったといいます。  
 「元々、中学校の音楽教師を希望していましたが、教育実習を経て、一日中子どもと密な時間を過ごすことのできる小学校教師を志すようになりました。それで、『学級運営』についてもっと学びたいという思いから、大学院への進学を決めました」。
 大学院を修了後、来年からはいよいよ教壇に立つ予定の塩原さん。それを前に「今、小学校に通う日々の一つひとつが勉強になっている」と話す表情には、充実感がみなぎります。
 不登校、子どもの貧困、教員の不足など、教育に関する課題は山積していますが、一方で、「子どもたちの健やかな成長を応援したい、支えたい」と考える地域の大人は、決して少なくありません。「大学院を修了後も、これまで通り地域と関わって、そのご縁を学校に取り込みたい」と活き活きと話す塩原さんが、そうした地域の大人と、子どもたちとの懸け橋となって活躍してくれることを願っています!

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ご本人から一言

 住んでいるところから、上田市立北小学校は距離が遠いので、実は毎回早起きするのは少し大変です。それでも、がんばって行くと「楽しかったなー!」と思って、いつも帰ってきます。そのように思える人間が、学校と地域との連携の大切さを発信していくことが大事ではないかと考えています。

指導教員から
信州大学大学院教育学研究科
青木 一
特任教授 

 コミュニティ・スクールの取り組みを進めてきた上田市立北小学校では元々、「地域を受け入れる」という土壌が育っていたため、大学院の実践研究として外部から関わる塩原さんも温かく迎え入れてくれたのだと思います。そして今は彼女自身がそうした土壌をさらに耕し、取り組みを広げる役目として、熱心に動いていますね。先生や地域の方、児童たちとの一期一会のドラマ。それを大切にして実践研究を進めている塩原さん。素晴らしい成果となるだろうことを期待しています!

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信州大学の大学院は総合大学の強みを活かして学際的な研究科と専攻があるのが特徴。
学部との関係はこの図をご覧ください。

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