信大同窓生の流儀 chapter.14 登録者数87万人!教育系人気YouTuber 工学部卒業生 ラムダ技術部(ラムダさん・ロッシーさん)信大的人物
理科や数学を身近なテーマと結びつけ 面白く伝える動画が話題
志を持っていきいきと活躍する信大同窓生を描くシリーズの第14回は、教育系人気YouTuber ラムダ技術部のラムダさん・ロッシーさん(工学部卒業生)をご紹介します。理科や数学の魅力を面白く伝える動画が話題を呼び、登録者数は87万人を超えるほどの人気です。また、最近はイベントにも力を入れており、8月15日に大阪・関西万博で本学アクア・リジェネレーション機構 遠藤研究室ともコラボレーションしました。ラムダ技術部の取り組みや、その根底に抱いている想いなどを、ラムダさん・ロッシーさんにお伺いしました。(文・佐々木 政史)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第153号(2025.9.30発行)より
コンセプトは難しい話を“面白く”
「超精密な理系フライドチキンをつくろう」、「偽装されない肩たたき券の作り方」、「中3数学でピザを完璧に6等分する方法」_。興味を引くこれらの動画を配信しているのは、信州大学工学部卒業生の教育系人気YouTuber ラムダ技術部です。プログラミング、電子工作、数学など理系分野を、身近なテーマ(料理や日常の現象など)と結びつけて、その魅力を面白く伝える動画が話題を呼んでおり、登録者数87万人(2025年9月5日時点)にもなります。ラムダ技術部はラムダさんとロッシーさんの2人体制で、ラムダさんが企画考案、撮影、編集といった制作全般を担い、ロッシーさんはメール・電話・スケジュール管理といったマネージャー的な役割を担当しているそうです。お二人は、信州大学の学生時代からの友人だそうで、取材時も息がぴったりでした。
それぞれに本業を持っており、YouTuberとしての活動はいわば副業として取り組んでいるそう。普段、ラムダさんはIT企業などを経て、現在は音楽、映像、ウェブページなどを制作するソフトウェアエンジニアとして長野市で活動。ロッシーさんは東京のIT企業でソフトウェアエンジニアとして働いています。
ラムダ技術部の動画の大きな特徴は、理科や数学といった理数系分野のちょっと難しいと感じる知識を、身近なテーマと結びつけて、中学3年生くらいでも分かる内容で、その魅力を面白く伝えていることです。特に“面白く”という点がポイントで、「理数系の動画では、役に立つ系のものが多いなかで、エンターテインメント性を取り入れているものは、あまりないのではないか」とラムダさんは話します。そして、こうした点によって、これまで理数系に興味を持ってこなかった人や苦手意識がある人にも楽しんでもらい、その面白さに目を向けるきっかけになればと考えているといいます。「ラムダは物事を見る視点が他の人とはちょっと違うと感じています。それが多くの人から面白いと思ってもらっている動画の企画内容に表れていると思います」とロッシーさん。これに対してラムダさんは、「面白いものを作ろうと、けっこう頑張って搾り出しているんですよ」と照れながら話します。
グッドボタンやコメントなどで楽しんでもらえたことをフィードバックしてもらうとやりがいを感じるそうで、「視聴者のなかには私たちの動画を見て理数系への関心が高まり、大学進学にあたって工学部を選んだ人もいて、これは嬉しかったですね」とラムダさん。
塾講師アルバイトが動画制作のきっかけ さらに、コロナ禍が活動の後押しに
ラムダさんが動画制作に取り組むきっかけとなったのは、高等専門学校と大学生時に行っていた塾講師のアルバイトでの“ある気付き”だったそうです。ご自身は幼い頃から理科や数学に関心がありその面白さを強く感じていましたが、塾で教えている生徒は必ずしもそうではないことに気付いたといいます。「それは受験科目としての理科や数学しか見ていないからではないか」と考え、もっと日常の身近な事柄と結びつけて、エンターテインメントの要素も入れながら面白い動画をつくって伝えるようにすれば、理科や数学の本当の面白さを分かってもらえるのではないか―。そう考え、2015年に初めてYouTubeに動画を配信。ラムダ技術部の活動がスタートしました。
その後は、大学での学業などに忙しく、あまり活動ができていない時期が続きましたが、本格的に動画配信に取り組む大きな契機がありました。2019年から始まったコロナ禍です。当時、ラムダさんは新卒でのIT企業1年目だったそうですが、緊急事態宣言が発出され、いきなり自宅でのリモートワーク。通勤時間がない、飲み会などの機会もないといった状況のなかで、自由な時間を比較的多く持てたそうです。
そしてその際に取り組んだのが動画配信でした。「世の中は大変な状況でしたが、ラムダ技術部としては現在の活動につながる良いきっかけだったと思う」とラムダさんは振り返ります。
動画だけでなくイベントなどにも活動が広がる
今後の展望については、YouTubeでの動画配信の他にも、イベントなどにもっと取り組んでいきたいそうです。ラムダ技術部の活動の根底には、「理数系の面白さをもっと広く知ってもらいたい」ということがあります。それを伝える手段は、これまでは主に動画配信でしたが、今後はもっと様々な手段で取り組んでいきたいといいます。特にイベントは、最近オファーが増えているそうで、「やっぱり表情や反応が直接見ることができますので、とてもモチベーションアップになります」とラムダさん。
8月15日には、大阪・関西万博で行った本学アクア・リジェネレーション機構 遠藤守信研究室とコラボレーションし、信大RO膜の浄水性能を一般に分かりやすく、そして面白く伝えたイベント「“最強の浄水器vs激マズ汁”」を実施しました。
「実は子どもの頃に、愛知県で開催した『愛・地球博』に行って様々な展示を見たことが、理科や数学の面白さを感じるきっかけのひとつになりました。今度は、同じ万博でそれを伝える側の立場に立てたことに感慨深いものを感じます」とラムダさん。活動の可能性をますます広げていこうとしているラムダ技術部̶。「今後も様々な手段で、理科や数学の面白さをもっと広く分かち合っていけたら」。そう話すラムダさんとロッシーさんの表情と語り口には、エンジニアならではの冷静さとともに、秘められた熱い情熱も感じられました。
ラムダ技術部YouTube
ラムダ技術部(ラムダさん・ロッシーさん)
ラムダさん PROFILE(入江 一帆さん)【写真右】
兵庫県生まれ。小学6年生から中学3年生の1学期まで中国上海市の日本人学校に通う。神戸市立工業高等専門学校電子工学科卒業後、信州大学工学部電子情報システム工学科に編入。同2020年3月卒業。大手IT企業などを経て、現在は音楽、映像、ウェブページなどを制作するソフトウェアエンジニアとして長野市で活動。
ロッシーさん PROFILE(田村 弘さん)【写真左】
上田市生まれ。2020年3月、信州大学工学部 電子情報システム工学科を卒業。東京のIT企業でソフトウェアエンジニアとして働く傍ら、ラムダ技術部のマネージャーとしての役割を担う。また、持ち前の明るさとコミュニケーション能力から、最近はイベント開催時には出演者として積極的にお客さんとのコミュニケーションを図っている。