第4回 深掘り!大学院生。Episode4 中村結花さん信大的人物
医学系研究科 保健学専攻 検査技術科学分野 修士課程2年生

患者さんに直接接しながら、 新しい技術で医療現場を支えたい!
主に喫煙を原因とするCOPD(慢性閉塞性肺疾患)は、多くの潜在患者がいるといわれる疾患です。しかし、階段での息切れや長引く咳・痰といった初期症状は見逃されやすく、異変に気付いて受診したときには、すでに重症化しているケースも少なくありません。その大きな要因となっているのが、簡便な早期発見ツールが不足しているという現状です。自らの手で生み出す技術を、COPDの早期発見と死亡率の低下につなげたい―。そんな強い思いを原動力に、中村結花さん(医学系研究科 保健学専攻 検査技術科学分野 修士課程2年)は現在、患者・医療従事者双方が手軽に扱える新たなスクリーニングツールの開発に全力で取り組んでいます。(文・宇梶 葵〈信大生〉)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第157号(2026.5.29発行)より
ご本人から一言
人を想って医療現場に「革新」を
厚生労働省のビジョン「健康日本21」の目標の1つに、COPDの死亡率減少が挙げられています。しかし、現在のスクリーニングツールは質問票が中心で、精度が高いとは言い切れません。また、主要な検査方法とされている「スパイロメトリー(あの、息を吐いて肺活量などを計測するツール!)」は、力強く息を吐き出す必要があるほか、被験者への適切な声掛けも欠かせません。そのため、患者にも検査者にも大きな負担がかかるといいます。「双方の負担を減らしながら、より精度の高い検査ができたら」。そのような思いから、貼付け型ウェアラブルデバイス「ブレスキャン™」(※1)の研究に携わることを決意したそうです。
※1)「ブレスキャン」はニチバン(株)の商標です。
「ブレスキャン™」は、貼付け型センサーを用いたCOPDなどの発見ツールで、胸に直接センサーを貼りつけて測定することで、呼吸運動を可視化することができます。このセンサーを用いることで、精密なデータを取得できるだけでなく、被験者は安静に呼吸するだけで検査を終えられるため、負担が大きく軽減されます。また、小型軽量で装着も容易なため、検査側の負担もほとんどないという点も長所です。現在はまだ活用の範囲は限られていますが、今後はさらなる普及を通じて、COPDの早期発見・早期受診に貢献していきたいと語ります。患者さんと接することが好きで、「研究の成果も、直接患者さんに関わりながら還元していきたい」という思いを持つ中村さんにとって、実際に機器を使用してもらいながらデータを集める「ブレスキャン™」の研究は、まさにうってつけだといいます。同時に、研究を進める過程で、自分の中にあった“固定観念”が取り払われたと話します。
当初、COPDのスクリーニングは質問票を使うほかないと考えていた中村さんですが、「もしも検査にセンサーが使えたら便利ではないか」という希望にサイントルさんが応え、ブレスキャン™が実現しました。中村さんの意見を同社が機器へと反映させていくプロセスを繰り返し、時には「わがままかもしれない」と思うような要望を伝えても、必ずそれを形にしてもらえることに驚いたといいます。そうした経験を通じて「これしか方法がない」という思い込みが消えていったそうで、自分のアイデアが次々と医療機器に取り入れられ、改良されていく様子に「変化が楽しい」と笑顔を浮かべます。
縁の下から医療を支えて貢献したい
中村さんが医療の道を志した背景には、自身の経験が大きく関わっています。中学生の頃、重い貧血に苦しんでいた中村さんの異変をいち早く見つけてくれたのが、臨床検査技師だったといいます。
また、2019年に長野県を襲った台風19号では、中村さんの地元である長野市も大きな被害に見舞われました。その際、災害専門の医療チームが被災者を救う姿を間近で見て感銘を受け、医療を通して社会に貢献したいという思いを強く抱いたそうです。この経験が中学生時代の記憶と結びつき、「医療ってかっこいいな」という純粋な憧れとともに、臨床検査技師を目指す原動力になったと語ります。検査を通じて病気を発見し、患者さんを支える臨床検査技師は、医療を陰で支える重要な役割を担います。当初はその道を志していた中村さんですが、研究に携わる中で、医療機器や検査の手法をより簡便なものへと改良し、医療従事者の負担を減らすこともまた、医療を支える大切な形であると気付いたといいます。患者さんはもちろん、現場で働く人々のことも支えられるような“縁の下の力持ち”になりたい。それが現在の中村さんの切なる願いだそうです。

