人文学部研究者紹介03 ネット社会の課題に、社会心理学の手法で挑む 佐藤広英准教授信大的人物

信州大学 学術研究院(人文科学系)研究分野:情報コミュニケーション学、社会心理学

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第155号(2026.1.31発行)より

(文・佐々木 政史)

ダークパターンで不利益を被らないために

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社会心理学の知見を活かし、“伝わる”見せ方を探りながら撮影しています。

個人情報の流出、SNSアカウント乗っ取り、身に覚えのない高額請求…インターネット社会の中で、私たちはこうしたトラブルのリスクに晒されています。佐藤准教授はインターネット上のトラブルがなぜ生じるのか、どのような人が被害を受けやすいのか、被害を受けないためにはどうしたら良いのかといったことを、社会心理学の観点から研究しています。

現在の中心的な研究テーマは、「ダークパターン」への対応です。ダークパターンとは、Webサイトやスマートフォンアプリなどで、利用者を巧みに誘導するなどし、意図に反して商品購入やサービス申込みなどの行動をとらせるように設計されたユーザーインターフェース上のトリックのこと。以前から社会問題視されていたそうですが、最近はAIの導入で利用者がより操られやすくなってきているといいます。佐藤准教授は、こうしたダークパターンによってなぜ人は操られてしまうのか、どのような人が影響を受けやすいのかといった心理的メカニズムを解明しようとしているそうです。

ダークパターン問題に社会心理学の観点からアプローチしている研究者は日本ではあまり聞かないそうで、先進的な研究と言えそうです。「身近な社会課題の解決に役立つことはないかという観点で、研究テーマを設定しています。特にインターネットは私たちの暮らしにますます不可欠なものになってきていますが課題も多い。社会心理学の手法でその課題解決に少しでも貢献できれば」と佐藤准教授は話します。

社会心理学の手法も用いて 産学官連携の地域貢献プロジェクト

佐藤准教授は、地域貢献の取り組みにも力を入れて取り組んでおり、2016年からゼミ生とともに、「信州のいいとこ、見つけました」プロジェクトを実施しています。これは地域振興を目的に、JAF長野支部、長野県内の市町村と共同で地域PR動画や観光プランの作成に取り組んでいるもの。

ゼミ生が現地調査や地域課題の分析などを行い、佐藤准教授の指導を受けながら社会心理学の手法を用いて、制作しているそうです。「例えば、動画を見てもらいやすくするためには、社会心理学の観点で言うと視聴者の感情を動かすことが重要なのですが、そういった知見も盛り込みながら動画の制作を行っています」と佐藤准教授は話します。

同プロジェクトのきっかけは、「地域貢献で一緒に何かできることがないか」というJAF長野支部からのオファーだったそうですが、佐藤准教授も「せっかく地域貢献に力を入れている大学にいるのだから自分にも何かできることはないか」とかねてから考えていたと言います。実際に10年近く取り組んでみて、地域貢献に加えて、学生に実社会での実践的な学習の機会を与えることができるなどの点で、手ごたえを感じているそうです。

これまでに、飯綱町、諏訪市、茅野市、小谷村、松本市などで実施してきましたが、なかでも2024年度の小谷村プロジェクトは、これまでの集大成とも言えるべきものでした。学生が現地調査を行いながら小谷村をPRするドライブコースと3本の動画を制作。ドライブコースは小谷村の公認モデルコースとして採用されたそうです。ネット社会と地域づくり―ふたつの分野での課題について、社会心理学の手法で解決を目指す佐藤准教授の取り組みから、今後も目が離せません。

信州大学 学術研究院(人文科学系) 佐藤 広英 准教授

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産業技術総合研究所認知行動システム研究グループ 特別研究員 協力研究員、筑波大学大学院教育研究科 特任研究員などを経て、2012年より現職。また、2019年から情報通信研究機構サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室・招へい専門員も務める。

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