信州大学発ベンチャーをめぐる話題。産学官金融連携

信州大学発ベンチャーをめぐる話題。

信州大学では、研究シーズを活かした事業を行っている企業に対して円滑で適正な支援を行うため、「信州大学発ベンチャー」の認定を行っています。
ここでは信州大学発ベンチャーをめぐる最近の話題をご紹介します。(文・柳澤愛由)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第123号(2020.9.30発行)より

発汗量の変化をスマートフォンで知らせるシステムを開発~熱中症予防への応用も検討~

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 スキノス(長野県上田市)は、信州大学医学部メディカル・ヘルスイノベーション講座の大橋俊夫特任教授との共同開発により製造した発汗計を使い、汗の量の変化で血液の濃縮度を見積り、スマートフォンで知らせる新たなシステムを開発しました。
 高齢者や乳幼児は温度に対する感覚が鈍かったり、体温調節機能が未発達であったりと夏場は熱中症になりやすく、周囲が注意を払う必要があります。本システムを用いれば、発汗計測のみで熱中症の予防ができる可能性が考えられます。
 発汗量の測定に用いる発汗計は、カプセルと呼ばれるセンサー部分を首や胸に貼り、単位面積当たりの発汗量を測る装置です。実験では、20代~30代前半の健康な人に運動してもらい、発汗量を連続して測ったところ、運動開始後10~15分で発汗量の増加が鈍くなるという共通のパターンがみられました。発汗量の増加が鈍くなった後の変化はいずれも、汗をかいたことによって血液が濃くなったことを示しており、運動する前に水分を取ると、発汗量の増加が鈍くなるまでの時間は長くなりました。本システムは、この発汗量の増加が鈍くなるポイントを捉え、スマートフォンで警報を出す仕組みです。
 この発汗計は2020年7月20日から価格約30万円で研究用にのみ販売しています。

ナノファイバーフィルター付き高機能布マスク「nunotect(ヌノテクト)mask」を新発売

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 ナフィアス(長野県上田市)は、ナノファイバー素材を使ったPFE99%(※)の高機能フィルターを差し込むことで、ウイルスなどの遮断性能を高めた布マスク「ヌノテクトマスク」を新たに開発し、5月、販売を始めました。
 同社は、髪の毛の400分の1、繊維径約100ナノメートルと超微小なナノファイバー素材「NafiaS®」を開発しています。これまでに「高い防護性と快適性を有するN95マスク(NafiaS®N-95)」や「高い通気性を有する花粉・PM2.5対策マスク(aerumask®)」を商品化してきました。同社製品はナノファイバーの微細な繊維構造で飛沫などを捕集するため、高い機能性と通気性を併せ持っていることも特徴です。
 今回、供給不安が続く不織布マスクの代替として布マスクの普及が進んでいることを受け、これまでの知見と経験をもとに、NafiaS®フィルターと布マスクを組み合わせた高機能布マスクの開発を実現。布地には肌触りがよく、冷感を感じられるレーヨン素材を採用し、夏場でも快適につけられる心地よさを追求しています。現在Amazonで販売しており、価格は、布マスク2枚とフィルター40枚セットで6,000円、交換用のフィルター単体は、20枚入で1,590円です。衛生面の観点からフィルターは使い捨てを推奨していますが、布マスクは洗って再利用が可能です。
(※)「微粒子ろ過効率」。「PFE99%」という表示であれば、約0.1㎛サイズの粒子を99%ろ過(捕集)できる。インフルエンザウイルスや飛沫核などが対象。

世界初! ナスを使った高血圧改善サプリを開発、機能性表示食品へ

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写真は(株)ウェルナス代表取締役の小山正浩社長。

 ウェルナス(東京都港区)が新たに開発した高血圧改善サプリメント「ウェルナスサプリ」が、2020年7月、機能性表示食品として消費者庁に受理されました。同社はナスに大量に含まれるコリンエステル(アセチルコリン)を使ってヘルスケア事業を行っており、2017年の設立時からサプリメントの開発に取り組んできました。ナス由来成分を用いた機能性表示食品は、世界初です。
 コリンエステルとは、高血圧と気分の落ち込みの改善に役立つ成分で、トマトなどの野菜と比較すると約3,000倍もの量がナスに含まれています。同社小山正浩社長が所属していた信州大学農学部食品分子工学研究室(主宰:同大学学術研究院農学系中村浩蔵准教授)によって発見された研究成果で、交感神経の活動を抑制する働きがあることも分かっています。2019年には、同社と信州大学で行ってきたナスの機能性を実証した研究論文が国際学術誌「ニュートリエンツ」に掲載され、機能性食品表示の科学的根拠となりました。これらの研究成果は、農研機構生研支援センター革新的技術開発・緊急展開事業うち経営体強化プロジェクト「新規機能性成分によるナス高付加価値化のための機能性表示食品開発」(研究代表者:中村浩蔵准教授)によるものです。

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世界初のナスサプリメント

サプリメントは、ウェルナスwebショップで販売されています。
http://wellnas0523.shop24.makeshop.jp/

信大発ベンチャー第3回認定にかかる称号記授与

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2020年7月7日、第3回となる「信州大学発ベンチャー」称号記授与式を執り行い、以下の3法人を新たに信州大学発ベンチャーとして認定いたしました。

AKEBONO株式会社 代表取締役 井上 格 氏
工学部が栽培普及を進めているアレルゲンフリーの穀物「信州産ソルガム」の生産、加工、販売を手掛ける。アレルギーを持つ人の新たな選択肢の提供と地域活性化を目指す。

株式会社A-SEEDS 代表取締役 眞鍋 幸子 氏
医学部で開発した新規次世代CAR-T療法の事業化を目的に設立。医学部オリジナルのCAR-T細胞GMR-CARを使った遺伝子治療の実用化を進めている。

SSST株式会社 代表取締役 倉沢 進太郎 氏
繊維学部で研究されている光ファイバセンサを用いた生体計測技術の実用化を目的に設立。血液サンプルを必要としない新たな装着型バイタルサイン計測システムの開発を行っている。

アシストモーションベンチャーキャピタルから出資

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AssistMotion社は、2020年7月30日、(株)ケイエスピーと(株)ラックよりJ-KISS型新株予約権による出資を受けました。それぞれ、KSP6号投資ファンドと、新規事業開発部によるCVCからの出資となり、出資額は各社3,000万円です。AssistMotion社としてはシード期の資金調達となります。現在歩行アシストロボットcurara®の有償モニター貸出「コロナに負けるな! キャンペーン(http://assistmotion.jp/apply-for-curarawrp/)」を実施しており、本出資を受けてcurara®の商品化を目指します。また、シリーズAの資金調達をさらに計画しています。

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