信州大学発ベンチャー特集 知的財産・ベンチャー支援室設置とOVIC竣工に寄せて産学官金融連携

信州大学発ベンチャー特集 知的財産・ベンチャー支援室設置とOVIC竣工に寄せて

信州大学SUIRLO(※1)知的財産・ベンチャー支援室設置とオープンベンチャー・イノベーションセンター(OVIC)(※2)竣工に寄せて

 今春、信州大学繊維学部のある上田キャンパスに、信州大学と長野県が共同提案したオープンベンチャー・イノベーションセンター(OVIC)(※2)が竣工となります。東京一極集中の傾向が強かった大学発ベンチャーですが地方でも多くの成功事例が生まれており、地方新聞などでも話題になっています。特に長野県は、全国で最も起業率が低かった(※3)という事情もあり、産学官を挙げてベンチャー創出支援の動きが加速しているようです。
 信州大学でも平成29年10月に学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)の学術研究支援本部に知的財産・ベンチャー支援室を設置し、本格的に「大学発ベンチャー」育成支援に乗り出しました。今回のOVIC建設もそうした流れの一環です。信州大学は、企業との共同研究数、また特許権の実施件数などで、全国の大学と比較しても高いランクに位置(※4)しており、支援スタイルでは“信州型”と呼べるようなベンチャー育成モデルも作れるかもしれません。
 学内外から注目が集まる信州大学のベンチャー支援の概要とその目指すところはどこか? SUIRLO学術研究支援本部の本部長兼同室室長である杉原伸宏教授と、ベンチャー支援をマネジメントされる角田哲啓准教授にお話を伺ってきました。
(文・柳澤 愛由)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第110号(2018.4.5発行)より

※1)信州大学学術研究・産学官連携推進機構
※2)文部科学省地域科学技術実証拠点整備事業にて建設
※3)出典:Forbes JAPAN(2015.4)
※4)出典:文部科学省平成28年度大学等における産学連携等実施状況について

長野県の起業事情と信州大学の研究開発

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 ものづくり企業が集中する長野県が、実は全都道府県の中で最も“起業率が低い県”であったという調査データがあります。その背景を推測すると、「ものづくり県長野」とも呼ばれ、ものづくり企業が非常に多く、新しい製品を“カンタンに作れてしまった”ことが原因のひとつでもあるようです。
 「ものづくり県だからこそ、長野県は研究開発型の起業に対しての意識や支援が薄かったのかもしれません。しかし全国的にも技術系ベンチャーが増え、国も後押しを進める中、長野県も方針を大きくシフトしていこうとしています」と杉原室長は話します。
 信州大学はもともと企業との共同研究が非常に盛んです。しかしそのことが逆にベンチャーを立ち上げるより、既にお付き合いのある企業と組んで製品や技術を実用化してもらったほうが早い、という発想になり、それが信州大学のメインストリームになっていきました。「ただ最近は、企業もリスクを負わない傾向にあり、チャレンジングな製品開発については連携が取れないケースも多々あります。だからこそ、大学が持つイノベーティブな研究成果は、ベンチャーがリスクを取りながら死の谷を越えて実用化していくという発想が必要なのです」と、杉原室長は大学発ベンチャーの必要性を訴えます。
 ものづくり県ゆえ、研究開発型のベンチャー起業への支援が少なかった長野県も「日本一創業しやすい県づくり」を目指し、平成30年度からの「ものづくり産業振興戦略プラン」にはベンチャー支援の重点施策が盛り込まれるようで、長野県はようやく今年「大学発ベンチャー元年」を迎えそうです。

信州大学発ベンチャー 今注目の「顔」

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オープンベンチャー・イノベーションセンター(OVIC)外観

 平成30年3月に竣工となる、大学発ベンチャーを象徴する建物の「顔」がこちら。信州大学繊維学部のある上田キャンパス(長野県上田市)に建設されたオープンベンチャー・イノベーションセンター(OVIC)です。
 OVICは、信州大学と長野県の共同提案で文部科学省地域科学技術実証拠点整備事業の採択を受け建設したレンタルラボ。大学発のベンチャー企業に積極的に入居していただくための施設です。既に入居企業はほぼ決まっており、今後、本誌「信大NOW」誌面上でもその詳細を1社ずつ紹介していく予定です。中でも注目の信州大学発ベンチャー企業4社をここでご紹介します。

【OVIC(建設概要)】

  • 構造規模:鉄骨造地上2階建、延べ面積1,814㎡(1階床面積904㎡、2階床面積910㎡)
  • 建設予定地:信州大学上田キャンパス(長野県上田市踏入2丁目969番2)国道18号線の踏入交差点から西へ80m
  • 着工:平成29年8月 竣工:平成30年3月

起業家教育の重要性と“ハンズオン” の支援

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信州大学学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)
学術研究支援本部長・知的財産・ベンチャー支援室長
教授 学長補佐
杉原 伸宏
工学博士。信州大学大学院医学研究科助手、信州大学産学官連携推進本部准教授などを経て、2015年より、信州大学学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)教授および同機構の学術研究支援本部長。2017年10月より知的財産・ベンチャー支援室長を兼務。

 信州大学がこれまでの共同研究などを通じて築いてきた地域企業や産業界とのネットワークは、ベンチャー創出においても大きな強みになりえます。例えば、後々ベンチャーがコンソーシアムを作ったり、サプライチェーンを組み上げようとした時に、これらのネットワークを大いに活用することができます。
 このような基盤を活かして、どういったビジネスモデルを作っていくか…アントレプレナーの発想を後押しできるように“ハンズオン”する、つまり文字通り“手取り足取り”の丁寧な支援ができれば、信州大学型ベンチャーと呼べるようなロールモデルも出てくるかもしれません。
 しかしながら、一般的に大学発ベンチャー企業の所在地は東京一極集中の現状も見て取れます。「そのひとつの理由は、東京では身近に起業している人がいて、起業家や支援者のコミュニティがあって、そこに行けば濃密な情報が取れる…、そんな環境の違いが大きいのではないかと思います。身近に起業家がいるということは結構重要なファクター。だからこそ、今注目されている若手研究者が立ち上げた信州大学発ベンチャーには、是非がんばって成長していって欲しいですね。その成長が、『自分も起業してみようかな』と思う若手研究者が増えるきっかけになるのではと思います」と、ベンチャー支援のマネジメントを担う角田准教授は期待を寄せます。

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信州大学学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)
学術研究支援本部・知的財産・ベンチャー支援室
准教授 角田 哲啓
東京理科大学工学部工業化学科卒業。経済産業省関東経済産業局、(国研)新エネルギー産業技術・総合開発機構等を経て、2016年より、信州大学学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)准教授。2017年10月より知的財産・ベンチャー支援室、ベンチャー支援グループを担当。

 しかし、いざ起業となると、事業計画の作成から、創業資金の調達、法的、学内的な手続きや会社内の体制整備に至るまで、さまざまな準備が必要です。知的財産・ベンチャー支援室のベンチャー支援グループでは、起業に向けた学内手続きを始めとした実務面のサポートから、起業に関する情報提供、事業計画のブラッシュアップ、金融機関や経営人材とのマッチング、起業家同士の交流の場の提供、さらには、行政・各支援機関などと連携したアクセラレーションプログラムの実施など、多面的な支援を行っていきます。また、「将来のキャリアパスを考えている大学院生、特に修士課程の学生あたりにも、“起業”という選択肢もあることを知って欲しいのです」と角田准教授は言います。
 「研究と教育が研究者としての職務の中心ではあるのですが、ベンチャーを創出することの社会的意義が学内でも今まで以上に理解され、対外的にも評価されるようになれば、自身の研究成果をビジネスにつなげてみようと考え、ベンチャーの起業を志向する研究者も増えるのでは、と考えています」と角田准教授。
 同室がこうした未来志向のアントレプレナー教育(起業家教育)を丁寧に進めていくことで、信州大学発の個性豊かなベンチャーが数多く生まれ、信州発世界のイノベーションを起こしていく…長野県の産業の未来がまたひとつ、魅力を増していくように感じました。

NEWS

「毎日みらい創造ラボ」デモデー(成果報告会)で信大発ベンチャー(株)ウェルナスがグランプリ!

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 平成30年3月7日、毎日新聞などが設立、起業志望者と新事業創生を目指すイベント「毎日みらい創造ラボ」のデモデー(成果報告会)で、大学発研究への期待と市場の成長が見込めることなどが評価され、(株)ウェルナス(代表取締役小山正浩氏)がグランプリに選ばれました。知的財産・ベンチャー支援室はこういったトライアルの機会も増やしています。
(写真提供:Ⓒ毎日みらい創造ラボ)

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