ICT・AI技術を活用したスマート精密林業が日本の林業を変える。産学官金融連携

文部科学省エントランス展示「ICT・AI技術を活用したスマート精密林業」
(展示期間:2021年7月1日~2021年8月6日)

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【主な展示物】
実物展示:スマート精密林業と森林計測イメージのジオラマ
映  像:スマート精密林業への研究者の想い・パートナー企業の期待
パ ネ ル: ICT・AI技術を活用した森林の3次元計測のシステム・テクノロジー

 信州大学は文部科学省エントランス(東館2階受付横)で「ICT・AI 技術を活用したスマート精密林業」の展示を行いました。
 信州大学山岳科学研究拠点の加藤正人教授(農学系)が航空機やドローン、地上のタブレット端末からのレーザーセンシング情報をかけ合わせた独自のICT統合技術を開発、1本1本の樹木まで3次元で映像解析できるため、必要とする樹木を伐採することができ、伐採の現場から流通まで一貫したビジネスを可能にしました。さらにAI技術で、国内初となる苗木の自動抽出と高額で取り引きされる広葉樹の種類までの特定が可能になりました。現在このビジネスはコンソーシアムが組まれ森林組合や計測会社が参画、県・森林管理局などが協力支援しています。
 この画期的な国際競争力のある「スマート精密林業」技術に着目した三井住友信託銀行は、信州大学発ベンチャー(精密林業計測)に出資し「森林信託」の新サービスに着手しました。2020年8月に商事信託としては国内初となる森林信託を岡山県英田郡西粟倉村にて受託し、新しい形の地域活性化に貢献しています。
 これまで魅力がないといわれた「林業」という一次産業の事業構造をイノベーティブに変革、既に社会実装が始まっていることをこの度の展示を通して紹介し、日本各地で眠れる森林資源の活用が始まることを期待しています。
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第129号(2021.9.30発行)より

SYSTEM

航空機・ドローン・バックパック(地上)のレーザーセンシング(LS)情報とICT・AIをかけ合わせた統合技術。

 LS情報は森林管理の世界標準の革新的技術であり、安全・短時間・科学的に三次元での精密な森林資源情報と地形を把握できます。航空機のセスナから広域の森林資源の地形、蓄積量等の基盤情報をつかみ、森林施業のゾーニングを行います。ドローンから詳細な樹木の3D化、森林調査の省略、間伐木の確認、森林被害の情報把握に活用します。バックパック(歩行携帯)から幹曲がりなどの品質情報を取得し、素材生産価格を算定する。流域単位の森林から個別の森林までのLS情報が体系化されることで、精密な森林情報を提供します。

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TECHNOLOGY

レーザー計測はとにかく多機能。樹木の種類や本数、樹高はもちろん、単木樹冠抽出やラベリングも自動。

 現状の森林資源の測定は人手によるサンプル調査で行っており、3Kと言われる急峻な山岳地形で笹薮が繁茂して危険も多く、調査コストが過大なわりに得られる情報の精度が低いのが課題でした。そこで、森林を対象に先端的なドローンレーザー計測技術で、林内での作業を減らし、一定区域内の森林の3D化により、単木ごとの位置、樹種、樹冠直径、樹高、胸高直径、材積等を高精度に半自動で算定する技術を開発しました。単木ごとの精密な位置図をGISにより作成して、調査地全体の単木ごとの精密な森林資源表を利用者である森林管理署、自治体、森林組合に提供し、間伐や森林施業に活用できます。

間伐や収穫などの単木レベルの解析に適しているドローンレーザーの表層モデルと樹高モデル(CHM)
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解析画像①
単木ごとの精密樹冠を自動抽出(特許第6570039号)

ドローンLSの点群データから調査地全体の単木ごとの精密な樹冠抽出技術を開発。

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解析画像②
単木の資源情報を自動抽出

単木ごとの位置、樹種、樹冠直径、樹高、胸高直径、材積、ラベリングと本数を半自動で算定。

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解析画像③
ドローンによる定性(点状)的な全層間伐の自動選木(特願2018-215554)

ドローン計測で解析した単木の資源情報をもとに定性(木の形質・配置を重視)的な全層間伐について自動選木。

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解析画像④
ドローンによる伐採木の自動抽出(見える化)(特願2019-001419)

伐採前と伐採後にドローン空撮を行い、画像に撮像されていない伐採木を自動抽出。

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解析画像⑤
松くい虫の被害木の半自動区分(特許第6544582号)

松くい虫の森林被害が深刻化している。防除には被害分布をつかむこと、最前線の感染木を的確に防除することが有効です。

国内初!レーザーセンシングによる広葉樹の樹種特定技術の開発(特許出願中)

 広域の広葉樹林をドローンLSから、独自のアイデアと分類法から三次元空間上に単木ごとに樹種特定する技術です。現地調査をせずに極めて有効な省力化技術であると共に、国際的にオリジナルな研究開発です。

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広葉樹の樹種特定(左)と三次元マッピングによる樹高自動算定(右)

これも国内初!AIによる苗木の自動抽出

 ドローンで苗木が植えられた山林を撮影し、AIを使用して、苗木の位置や生育状況を自動で確認できるシステムを国内で初めて開発。林業に従事する人が年々減少する中、大幅な省力化につながります。
(特願2021-070641)

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広い造林地には苗木以外の広葉樹や雑草が生えています。(右) AIを使い苗木だけを自動抽出。(左)

CONSORTIUM

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TOPICS

2020.8
三井住友信託銀行、岡山県西粟倉村にて国内初の森林信託を受託

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※商事信託とは信託銀行などが、信託業法などに基づき、営業として信託財産の管理・運用を行うこと。

 三井住友信託銀行は、レーザーセンシングの技術を活用し、2020年8月、岡山県西粟倉村に森林を所有する個人のお客さま(以下、森林所有者)より、森林を信託財産とする「森林信託」を受託しました。商事信託※としては、本邦初の取組みです。森林所有者は、三井住友信託銀行と信託契約を締結することで、所有者としての実務から解放され、取得した信託受益権の配当を受領します。
 三井住友信託銀行は、「森林信託」の活動を通じ、林業再生や地域活性化の支援に取り組んでいきます。

2021.4
産学官連携の協議会「スマート林業タスクフォースNAGANO」が普及事業を展開

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 平成30年度から産学官連携によるスマート林業タスクフォースNAGANOにおいてシステム開発等を実施してきており、令和3年度から当該事業の成果等を長野県内全域に実践展開していきます。
 県内全域の市町村や意欲と能力のある林業事業体等にICTを活用したスマート林業の導入を支援し、「長野モデル」として収益性の高い林業を確立するため、 スマート林業技術を活用した低コスト造林や広葉樹林施業技術の現地実証を進め、技術を普及し、安定的な原木供給と循環する林業を実現する。事務局は長野県で、信州大学と精密林業計測株式会社は中核を担います。

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