"ソルガムきび"の魅力を探る産学官金融連携

平成27年度 長野市耕作放棄地におけるソルガムきび活用調査共同研究 “ソルガムきび”の魅力を探る ソルガムきび健康食品コンペティション

 2015年11月26日、信州大学や長野市などで組織した実行委員会が「ソルガムきび健康食品コンペティション」の公開試食審査会を工学部で開催した。
 かつて日本でも栽培が盛んだったイネ科の雑穀「ソルガムきび(別名:タカキビ・コーリャン)」の実を使った食品のアイデアを競うもので、信州大学地域戦略センター副センター長の天野良彦教授(学術研究院工学系)が中心となり、平成25年度から長野市と進める耕作放棄地解消に向けた共同研究の一環で行ったユニークなイベントだ。
 ソルガムきびは成長力が高く、病気、乾燥にも強いため、山間部の急傾斜地に多い耕作放棄地でも栽培が容易だ。これまで、長野市内での栽培試験をはじめ、民間企業との協力により、茎葉を活用したキノコ栽培、廃培地を使ったバイオガス発電やメタン発酵後の消化液の肥料開発などにも取り組んできた。
 今回は、子実の食用利用について、民間や一般の発想を活かそうと本コンペティションを企画、アイデアを募った。ソルガムきびは、栄養価も高く、グルテンを含まないため小麦アレルギー患者のための代替食品としても期待されている。入賞した作品は、来年度の商品化を目指す。
 当日は、応募のあった63作品のうち、惣菜や菓子など、書類審査を通った個性豊かな26作品が出品された。審査に当たったのは、料理研究家の横山タカ子さん、ホテルインターコンチネンタル東京ベイ副総料理長の佃勇さんらのほか、事前申込のあった一般参加者、学内関係者約100名で、最優秀賞、各部門賞、審査員特別賞の5点を決定した。
 当日は信州大学の学生らも工夫を凝らした料理を出品。個性あふれる創作料理が並んだ。
 今回は、数ある出品作品のうち、信州大学の学生らの作品を紹介する。


(文・柳澤 愛由)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第97号(2016.1.29発行)より

コンペティション受賞作品

■最優秀賞
「ソルガムなっとう」 (原田憲さん)
■加工食品部門賞
「そるもっち」 (七二会かあさんち)
■料理部門賞
「信州産ルビーなタルト」 (濵渦亮子さん)
■チャレンジ部門賞
「ソルガムビール」 (信濃電力株式会社)
■審査員賞
「ソルガムきび麹100%味噌」 (鳥羽広子さん)

最優秀賞を受賞! 「ソルガムなっとう」
 信州大学工学部4年 原田憲(けん)さん

 多くの魅力的な出品作品を抑え、最優秀賞に選ばれたのは工学部4年原田憲さんが考案した「ソルガムなっとう」。高い質を誇る長野市西部西山地区特産「西山大豆」とソルガムきびを発酵させた納豆で、ソルガムきびのプチプチとした食感が特徴だ。
 以前に参加した味噌づくりの特別講習をヒントに、日本伝統の「発酵食品」と「ソルガムきび」を結び付け、自身の好物だという納豆を作ることをひらめいたという。しかし、単に煮て発酵させるだけではソルガムきびの独特な食感を活かせず、試行錯誤が続いた。そこで、ソルガムきびを一旦発芽させて蒸し、発酵させることで、特有の食感や味を活かすことに成功。
 素材に使用した「西山大豆」も栽培面積が減少しており、納豆づくりを通じて「地域の課題にも目を向けた」と原田さん。審査では、健康食品としての価値、地域素材の有効利用などが評価対象となる。納豆という着眼点と地域の魅力ある素材を活用した点が高く評価された。
 「“おいしい”と評価してもらえたことがうれしい。ソルガムきびの認知度アップにつながれば」と原田さんは喜びを語った。

工学部4年 原田憲(けん)さん

ソルガムなっとう

「丸ごとりんごグラタン ~ソルガムソース~」
 信州大学工学部4年 鈴木祥太さん

丸ごとりんごグラタン ~ソルガムソース~

 工学部4年の鈴木祥太さんが考案したのは、長野県産の味噌、クルミ、リンゴを、ソルガムきびを使ったソースに混ぜ焼き上げたという一風変わったグラタンだ。ホワイトソースを作る要領で小麦粉の代わりにソルガムきびの粉を使う。
 小麦粉と違いグルテンが無いため、粉っぽさが残りがちだが、「高温で焼き上げる」ことでそれを抑えたという。
 もともと料理が得意だったという鈴木さん。「小麦粉の代替品として活用できるのではと考え作りました。ソースだけでもいろいろと応用できる」と語った。

「プチ信シュー3兄弟」
 MANT(信州大学教育学部家庭科教育コース)

教育学部家庭科教育コース3年生グループ「MANT」

 教育学部家庭科教育コース3年生グループ「MANT」は、シュー生地に100%ソルガムきびの粉を使ったプチシュークリームを出品。長野県産のリンゴや小布施町のクリなどをトッピングしたクリームを中に挟んだ。
 「ソルガムきびのことは全く知らなかったため、その特徴を調べるところから始めた。おいしいものができると分かったので、これからも使っていきたい」と、レシピを考案したひとり、川口奈央さんは話した。

「信州産きびッシュ」
 信州大学教育学部家庭科教育コース

 プチシューと同じく教育学部家庭科教育コース3年生のグループが考案した「信州産きびッシュ」は、長野県産のホウレンソウや玉ねぎ、シメジなどを使用したキッシュだ。キッシュの台となるタルト生地にソルガムきび粉を100%使用している。「家庭でも手軽にソルガムきび粉を使える料理」というコンセプトでレシピを考えた。
 「小麦粉と違ってグルテンが無いため、生地がまとまらず苦労した。一晩生地を寝かせることでまとまるようになった」と、教育学部3年市川智恵さんと倉科美幸さんは試行錯誤したレシピづくりを振り返った。

「学校農園クレープ」
 信州大学教育学部附属特別支援学校 げんきクラブ学生事務局

信州大学教育学部附属特別支援学校 げんきクラブ学生事務局

 信州大学教育学部の学生らが参加する教育学部特別支援学校元気クラブ学生事務局は、支援学校の子供たちに人気だったメニューも取り入れて、ソルガムきび粉を使ったクレープを考案。ソルガムきび粉を使ったクレープ生地に、白玉やあんこ、リンゴなどの長野県産の食材を包んで食べてもらうコンセプトだ。
 「準備が大変で、メニューも試行錯誤。でも、ソルガムが栄養価も高く、万能ないい食材だと知ることができた」と教育学部2年千原兼二さんはこれまでを振り返りつつ、ソルガムきびの食材としての魅力を語った。

地域の課題に向き合い、ソルガムを通じて産学官連携で取り組む

長野市との共同研究を中心となって進める天野教授

 バラエティ豊かな作品が集まった今回のコンペティション。近隣の中学校など、地域からの応募者も多く、ソルガムきびの可能性を、大学関係者だけでなく地域全体で実感するひとつの機会となった。耕作放棄地の解消と農業の振興は、地域全体の課題だ。
 天野教授は、「ソルガムきびが長野県のブランドとなるよう広めていきたい。これからも地域との共同事業として頑張っていきたいと思う」と抱負を語り、産学官連携で進む今後の展開に期待をにじませていた。

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コンペティション出品者のほか、審査員や学内関係者。各地から参加があり、当日は活気に満ちていた

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