文部科学省主催「わたしとみらい、つながるサイエンス展」に出展しました!特別レポート
“水を起点に”持続可能な社会へ世界にアクションを呼びかける
8月14~19日、大阪・関西万博のEXPOメッセWASSEで、文部科学省主催の「わたしとみらい、つながるサイエンス展」が開催されました。20を超える大学と研究機関がブースを出展し、未来の暮らしや社会についての研究を紹介。信州大学もアクア・リジェネレーション機構が出展し、持続可能な社会へ向け“水を起点としたアクション”を世界各国の来場者に呼び掛けました。(文・佐々木 政史)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第153号(2025.9.30発行)より
まずは水から一緒にアクションを起こしませんか
「みずから、はじめる。From Water,From Myself.」
大阪・関西万博での信州大学の展示スローガンです。ブース入口をはじめ、展示内のいたるところに記され、「持続可能な社会へ向け、水を起点としたアクションを一緒に起こしましょう」と呼び掛けました。
SDGsの目標を達成するためには、2030年までに現在の4倍の速度で取り組まなければいけない状況です。また、地球の持続可能性を示す指標のひとつである「プラネタリーバウンダリー」を見ると、3分の2の項目で限界を超えています。
こうした状況の中で、アクア・リジェネレーション機構は、水に関わる先端科学の研究を通じて課題解決に取り組んでいます。しかし、地球再生という大きなアクションを実現するには、大学の力だけでは到底足りません。そのため、今回の万博展示でアクア・リジェネレーション機構の研究に触れることで、持続可能な世界の実現へ主体的に関わる意識を持ってもらい、まずは水という身近なテーマから“一緒にアクションを起こしませんか”と呼び掛けました。
展示では、本学アクア・リジェネレーション機構を代表する3つの先端科学技術を、“体験型”で紹介しました。
ひとつめの展示は、手嶋・萩尾・林・山田研究室が出展した「信大クリスタル」です。自然界で結晶が成長するメカニズムを活用した「フラックス法」でつくった高機能結晶材料で、人体に有害な重金属イオンを効率よく吸着できます。研究室ではこの性質を活用した浄水技術で、貧困や環境問題の解決に向けて取り組んでいます。
今回の展示では、ナノサイズの信大クリスタルを大きく表現した立体的なウォールパネルを用意し、目で見て触って楽しめるように。また、その仕組みを動画で体感できる展示も用意。タッチパネルの鉛イオン(重金属イオンのひとつ)をタッチすると、3Dホログラムの映像が動き出し、信大クリスタルが鉛イオンを吸着する様子が直感的に分かるようにしました。
また、信大クリスタルをさらに体験してほしいと、同技術を活用したマイボトル専用の浄水設備「swee(スウィー)」を設置。実際に浄水した水を提供し、その技術を“味わって”もらいました。とても好評で、展示期間を通じて「swee」の前には、多くの人が列をなしていました。そしてその水を飲んだ人は、「とても美味しい!」「いつも飲んでいる水とは違う!」と驚いている様子でした。
「日本は水道水を飲める数少ない国のひとつです。「swee」を通じて水道水をさらに美味しくして、マイボトルの利用を促しペットボトルごみの削減につなげていきたいと考えています。皆さんも“みずから、はじめる。”をキーワードに、ぜひ、いろんなアクションを起こしてください!」手嶋勝弥 アクア・リジェネレーション機構 機構長は、来場者に呼び掛けました。
「光触媒によるソーラー水素製造システム」光で水素を製造 “夢の技術”を目の前で観察
次に、堂免・久富研究室の「光触媒によるソーラー水素製造システム」です。これは、水中に設置した粉末状の光触媒に光を当てて水分解反応を起こし、水から水素を取り出すというもの。製造過程でCO₂を排出しないクリーンな水素製造法として注目を浴びています。堂免・久富研究室では世界をリードする研究成果をあげてきました。今回の展示では、この仕組みが分かる簡易的なシステムを展示。光と光触媒の間にシャッターを設け、来場者がシャッターを開けたり閉じたりすることで、光が当たって水から水素と酸素の混合気体が発生する様子を間近で見て観察できるようにしました。来場者はその仕組みを説明員から聞くと、一様に「夢の技術ですね」と話し、関心と期待の大きさが伺えました。
「信大RO膜」小さな力で楽々浄水 革新性に驚きの声
3つめは、遠藤研究室の「信大RO膜」です。これは、ナノカーボンやセルロースナノファイバーといった日本発の先進材料を用い、膜の形状などを工夫することで、浄水に必要な力や浄水速度、防汚性などで従来にない革新的な浄水機能を実現するものです。遠藤研究室では、この信大RO膜を活用し、海水淡水化や新興国の水道水、井戸水などの浄化に取り組んでいます。
今回は、信大RO膜の中でも、“極超低圧”で浄水できるものを使用した、ハンドポンプ加圧式の簡易浄水器を展示。信大RO膜が、いかに軽い力で浄水できるかを実際に体験いただきました。来場者は、市販RO膜を使用したものとハンドポンプの重さを比較しながら、信大極超低圧RO膜のすごさを驚きを持って感じていました。市販品の約3分の1の圧力でより多く浄水できることからお子さんからも積極的に体験いただき、「とても楽しい!」と遊び感覚で最先端技術に触れてもらう機会となりました。