
平成26年度の信州大学地域連携フォーラムは、「防災・減災機能の強化を考える」をテーマに、平成27年2月22日、メルパルク長野(長野市)で開催した。同フォーラムは毎年テーマを変えて開催し、これが21回目。いつ起きるかわからない自然災害に対し、地域の防災を信州大学と一緒に考えようと呼びかけ、工学部、農学部、繊維学部の研究室をはじめ自治体、企業、市民が多数参加した。
![]() 信州大学三浦義正理事(産学官・社会連携、国際学術交流、情報担当)・副学長による開会のあいさつ |
![]() 信州大学千田有一地域共同研究センター長による主管あいさつ |
![]() 総務省情報流通行政局地域通信振興課長 今川拓郎氏 |
![]() 信州大学不破泰総合情報センター長 |
![]() 千葉大学大学院工学研究科・工学部特別教授 野波健蔵氏 |
![]() 日産自動車いわき工場長 野本克氏 |
![]() 長野県危機管理部危機管理防災課危機対策幹 吉原正夫氏 |
![]() 信州大学笹本正治副学長・地域戦略センター長 |
東日本大震災以降高まった市民の防災意識に応えるように、行政は防災・減災・災害支援のための施策を進め、企業も防災・減災関連機器の開発に力を入れている。とくに昨年は長野県だけをとっても、南木曽町の土石流(7月)、御嶽山の噴火(9月)、白馬村を震源とする県北部の地震(11月)と、立て続けに大きな災害に見舞われた。これを機に、信州大学でも今春、「地域防災減災センター」の設置を決めている。
第一部「地域防災と科学技術」では、最初に総務省情報流通行政局の今川卓郎・地域通信振興課長が講演し、ICT(Information and Communication Technologyの略で、ICと同義)を活用した街づくりの事例として、Lアラート(災害情報共有システム)やG(地理)空間防災システムの取り組み、全国自治体の事例などを紹介。続いて信州大学総合情報センター長の不破泰教授が、「ICTを活用した安全安心な街づくり」と題して塩尻市の取り組みについて詳細に紹介した。「安全安心に資するマルチロータヘリと産学官連携コンソーシアム」について講演した千葉大学大学院工学研究科・工学部の野波健蔵特別教授は、壇上で自律型ドローン※のデモ飛行を披露し、ドローンの最新技術と防災機器としての可能性、課題を指摘した。このドローンの開発には信州大学繊維学部鈴木研究室も参加しており、展示ブースでは実物が展示されていた。
第二部「地域防災と危機管理」では、日産自動車株式会社いわき工場の野本克工場長が、東日本大震災で被災した工場の復旧過程、事業を継続するために行った具体的な取り組みについて講演。長野県危機管理部危機管理防災課の吉原正夫・危機対策幹は、防災力をどう上げるかについて、南木曽町の土石流災害や御嶽山の噴火などを踏まえて、自助・共助の重要性を訴えた。最後に登壇した信州大学地域戦略センター長の笹本正治副学長は、地名や伝説と災害の関係を証し、防災意識の風化に警鐘を鳴らした。
※無人で飛行・走行可能な航空機や車両
不破教授が講演した塩尻市の取り組みは、総務省の今川課長がICT街づくり推進事業の成果として紹介した事例の一つ。不破教授は2002年からICTを活用した安全な街づくりのための通信インフラの開発に取り組み、塩尻市のスマートシティ構築において事業化した。中越地震・中越沖地震がきっかけになり、停電時には携帯電話もインターネットも役に立たないという問題を解決し、災害発生時に停電してもセンサーが機能し、住民に情報を伝えられるシステムを構築したことが大きな成果。
大規模災害時にも対応できる情報通信インフラとして新たに開発したのが「Ad-Hocネットワーク」である。太陽光発電と電池、特定小電力無線を活用して、電線や電話回線などのケーブルを必要とせず、中継機は自身が被災しても自律的に対応ができる。災害時の伝達手段としては、一度に多数が同時受信できる放送型の情報伝達システムを採用している。これにより土中の水分を測定するセンサー端末は山中に簡単に設置でき、リアルタイムで測定値を送信できるので、精度の高い土砂災害予報が可能になる。平常時は児童や高齢者が発信機を持つことで、地域見守りシステムとしても活用できるというシステムである。
不破教授は塩尻市の取り組みのほかに、信州大学の災害情報共有システムについても紹介した。信州大学は、自治体などが加盟するLアラートに加盟(大学としては初)しているが、不破教授は「大学は人口1万人の自治体と同じ。住民である学生をどう守るかは、大学の大きな課題」と、その意義を強調した。
「土石流災害と災害地名」で講演した笹本副学長は、昔からの地名には災害への警告が含まれていたが、地名が変わったり、あたらしい住民が外から入ってきて先人の教えが生かされていないと指摘した。昨年7月の南木曽町読書の土石流災害では地元に残る「蛇抜け伝説」を、広島県の八木地区の災害では、一帯が古くは「八木蛇落地悪谷(やぎじゃらくあしだに)」と呼ばれていたことを紹介し、地域に残る伝説や慰霊碑などからもその土地の災害が学べる。地域の伝承を収集し、災害文化を未来に伝えるなかで、共同体を維持し防災意識を高めていくことが重要だと訴えた。その成功例として昨年11月の白馬村を震源とする長野県北部の地震を取り上げ、最も被害が大きかった同村堀之内地区で死者がでなかった要因を、共同体の力、普段の高い防災意識と分析。その重要性を、「最後は人の力、共同体の力が防災力を高める」と強調して締めくくった。
展示会には大学18、企業・団体26、計44ブースが出展した。この中には、自治体として出展した長野県危機管理部、長野市総務部危機管理防災課も含まれる。
会場のメルパルク長野の入口では、電気自動車から電源供給し、緊急避難場所となるテントの中で照明やヒーターなどを使うシステムが実演され、参加者のみならず通行者も関心を寄せていた。これは信州大学地域共同研究センターがコーディネートし、日産自動車株式会社、長野日産自動車株式会社、株式会社北信帆布、オリオン機械株式会社、ハイブリッド・ジャパン株式会社の協力で実現したもの。
展示室では、繊維学部鈴木研究室のドローンや小林研究室の全方位移動が可能な水中推進ロボット、ぎんれいプロジェクトチームと信州衛星研究会の可視光通信衛星「ぎんれい」に採用された投光器と近距離通信に適した懐中電灯型双方向通信装置など、多岐にわたる防災・減災関連の研究成果が披露され、農学部、理学部からは、南木曽町の土石流災害、御嶽山の噴火の調査報告も発表された。
総合情報センターのブースでは、講演で不破教授が紹介したAd-Hocネットワークが展示された。同ブースの隣には、塩尻市のプロジェクトで橋梁などの監視モニタリング機器を開発したセイコーエプソン株式会社、近距離無線の技術でセンサーネットワークや地域見守りシステムに取り組む長野日本無線株式会社のブースも出展し、塩尻市のICTを活用した防災・減災システムを総合的に見ることができると、自治体関係の見学者も注目していた。
展示室には、4月からスタートする信州大学地域防災減災センターのブースも設けられ、設置の趣旨や「防災減災教育部門」「地域連携部門」「防災減災研究部門」「医療支援部門(附属病院)」の4部門を設けて取り組んでいくこともパネルで紹介されていた。
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