地域コミュニケーション

MINIKURART(ミニクラート)

MINIKURART(ミニクラート)

ミニクラートは、教育学部で美術を専攻する学生たちのグループ(代表:田村啓さん4年)。
長野市善光寺の門前町にある「豆蔵」という土蔵を拠点に、楽焼や鋳造(金属を溶かして型に流し込んで形をつくるもの)のワークショップや子ども達の催事、まちのアート活動への参加など、学生と地域をつなぐ活動を展開している。
12月16日の夕方、「アーティスト・イン・レジデンス善光寺界隈」という古民家のフリースペースで、哲学カフェを開催した。

                                                     ・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第67号(2011.1.25発行)より

 

「学生時代に、何をすべきか」

哲学カフェ

哲学カフェとは、お茶を飲みながら、“思考と会話を楽しむ”会のこと。第一回目のテーマは「学生時代に、何をすべきか」。
今回の参加者のほとんどは、教育学部の学生だ。始めに哲学カフェをミニクラートに提案したという西山悟史さん(大学院修士課程1年)が問いかけた。

「就職難からか、“大学へ行く”目的や目標が4年間で卒業して就職するためのものになっているように思う。ただ通うために“大学へ行く”というのは、おかしくないか? 大学で何かすべきことがあるのではないだろうか」

「何を“すべき”というのは誰かが誰かに義務を押し付けるような感じがする。何をしたいかではないのか」(女)

「何を“すべき”で良いと思う。大学生の今しかできないことをやるのだから、自分にとって“すべき”ということになる。ぼくは、教育は子ども達と教員だけの関係でなく、地域全体でみるものだと思う。だから学生のうちに社会を知っておきたいから、今は大学の外へ出て行くべきだと思っている」(男)

「今、門前町の空き家を改修して、カフェみたいなものをつくろうとしている。社会に出ることだけを目的にしている大学生活じゃ、もったいない。人生の糧になる、いろいろな人やものに出会える時間があるのだから、こんな大事な時をダラダラとは過ごせないと思っている。」(男)

大人になることは、“やりたいこと”の限界を知るとき?

話し合いは、さらに続く。
「大人になるというのは限界を知ることでもある。好きなことをやり続けていたら暮らしていけない。その臨界点があると思う」(男)
「臨界点や、限界点はだれが決めるのですか?食べていくのは大変でも、やろうと思えばずっとやっていけると思います」(女)
「結局、折り合いをつけるのは自分だ」(男)
「日本社会では、自分で納得する前に、周りから見切りをつけられることが多いと思う。だけど、ゴールにはいろいろある。一つの目指していたゴールがだめでも次のゴールを自分でつくっていくべきだと思う」(男)

何を持って幸せとするのか

「夢を叶えてしまったら、やることがなくなるから、夢って叶えない方がいいのかな?」(男)
「必ずしも叶うことが終着点ではないと思う。自分にとって何が大切かを考えていくこと、何を持って幸せとするのかだと思う」(男)
「つらいことがないと幸せっていう実感がわかんないんじゃないのかな?」(女)
「つらいことを経験しなくても、向上している自分がわかれば、幸せに感じる」(男)
「ぼくは社会に還元できる幸せを持つべきだと思う。全く還元していない人はいないかもしれないけど、還元しようと思っているかどうか。ぼくはそれを自分自身に課していきたいと思っている」(男)

かすかな緊張感の漂う中で、一つのことを皆で話し合い、聞き合う。その共有する時間と空間は、予想外なほど充実感のある、心地よいものとなった。

活動の始まり

ミニ窯で試作をする
①つくったミニ窯で試作をする
② 「 豊田玉之介」展(豆蔵)
③ 豆蔵の2階。絵画展準備
④ 蟻の市に出品した、照明器具

さて、ミニクラートとは、どんなグループなのか。きっかけは、2009年5月、松本市あがたの森公園で行われたクラフトフェアだった。

田村さんと中村明(はる)さんが所属する工芸研究室は、子ども達向けのワークショップを行った。二人はここで子ども達と「作品をつくる」時間を共有する楽しさを知る。そして「こんな活動を続けたい!」と長野のまちで活動できる場を探し始めた。

秋、教育学部OBたちが主宰する編集室&カフェ「ナノグラフィカ」で声をかけられた。「工学部の有志『HACILA』が改装した『豆蔵』という160年前の土蔵を使ってみないか」と。

拠点を得た二人は、陶芸をしながら、さまざまな夢を描く。

…ここでできる、ぼくらができること……。

2010年4月、仲間に声をかけて、メンバー5人の「MINIKURART」を立ち上げた(三宅和美さん:4年、大月香世子さん:4年、羽田光さん:3年)。さっそく、「境内アート小布施×苗市」にブース参加。楽焼とストラップやキーホルダーを作る鋳造のワークショップをすると、予想外の盛況で2日間で100人もの人が作品を作った。
「やっぱり制作って楽しい…」。作品ができあがる瞬間に見せる子どもの笑顔、中村さんはその喜びを共有できたこと、三宅さんは学校の中とは違う表情を見せる子ども達と触れ合えたことが嬉しかったと言う。

まちと学生をつなぐ拠点

「境内アート小布施×苗市、 彫刻展カタチノマワリなど活動を拡げる
⑤「 境内アート小布施×苗市」にて
⑥教育学部有志による「 彫刻展カタチノマワリ」にて

その後、絵画展や人形劇の開催などを豆蔵で主催するほか、西の門市や南石堂町の蟻の市へ。また中学生とのコラボレーションを楽しむ櫻ヶ岡中学校のプロジェクトに参加するなど活動を拡げてきた。

「活動に参加して、地域にいろいろなことが起きていることを知り、みなさんと直に関わることができて嬉しかった」という羽田さん。「私たちの活動で子ども達が学校外のさまざまな世界や、いろいろな人と触れ合うきっかけになれたら」と大月さん。

この冬が明けると、4年の3人は卒業を迎える。「学生とまちをつなげられる拠点が豆蔵。アートに限らず、教育学部の学生たちがまちとつながる活動としてMINIKURARTがあり続ければいいと思う」と田村さんは思いを馳せた。

最近、中村さんと羽田さんは、教育学部のほかの仲間と「長野マチスキプロジェクト」という地域活性化の映画作りにも挑戦した。長野のまちと学生たち、今後のMINIKURARTの活動に“ご注目!”である。

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