研究会
信州大学経法学部において月1回のペースで開催される「研究会」は、経済学、経営学、法学、政治学など、社会科学諸分野の研究成果 について報告・議論する場を提供し、さまざまな研究トピックスに関して相互理解を深めるとともに、研究者間でのコミュニケーションの促進を図ることを目的としています。
構想段階の研究や調査進行段階の研究も発表可能であり、研究者間の意見交換を通 じて研究内容の発展を図るなど、建設的な議論が展開されています。また、報告者は信州大学の教員にとどまらず、他機関の研究者も積極的に招き入れ、より広範なトピックスを取り扱うことを目指しています。
開催スケジュールと内容については、本ホームページに随時掲載する予定です。
-
講演者 高宮 充氏 所 属 信州大学経法学部(学生) 日 時 2024年2月19日(月) 16:20~17:50 場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室 題 目 関連価値オークションにおける主催者収入順位づけ: 理論と実験 概 要 本研究の目的は,関連価値環境下におけるオークションで主催者収入がどのように変化するのかを経済実験で明らかにすることである. オークション理論に基づけば,私的独立価値環境下では収入同値定理が成り立つが,対照的に, 関連価値環境下では主催者収入はオークションルールに依存する.既存実験の多くは私的独立価値を前提とするが,入札者間で評価額がある程度似通っている関連価値環境に関する先 行研究は少ない. 本研究では,1)オークションルール,2)入札者評価値共通部分の上限額,3)入札者評価値の個人差の幅, のそれぞれがオークション主催者収入にどのような影響を与えるか 経済実験で検証した.得られた実験データで2群の検定および回帰分析を行ったところ,評価値共通部分の上限額による主催者収入の変化が有意に認められ た.一方,オークション形式や評価値個人差の幅による主催者収入の変化は有 意に認められなかった点に,理論予測と異なる結果が見られた. -
講演者 山沖 義和氏 所 属 信州大学経法学部 日 時 2024年2月8日(木) 15:00~17:00 場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室 題 目 ICTの進展が金融制度・金融機関経営に与える影響 ~~ 3つのトピックス
1)地域銀行・勘定系システムの共同化と金融当局が進める金融再編
2)地域銀行の進めるオープン化・クラウド化の流れ
3)資金決済法・金融商品取引法における暗号資産の位置付け概 要 2009年に信州大学経済学部に赴任して以来、約12年間(財務省等の勤務3年間を除く。)に渡り、ICTの進展が金融制度・金融機関経営に与える影響に関して研究してきたことから、その成果を発表する予定です。
具体的には、①まずは地域金融機関(特に地域銀行)によるシステム共同化の現状を紹介した上で、②地域銀行再編の動向(金融当局主導も含む。)と共同システムの関係を取り上げ、③地域銀行のシステムの今後の動向・見通しとしてオープン化・クラウド化の行方に関する見通しを解説したいと思います。
また、併せて、今後の研究対象としている「金融のデジタル化に関する研究」の一環として、④暗号資産の法令上の位置付けと課題について紹介します。 -
講演者 橋本 規之氏 所 属 信州大学経法学部 日 時 2023年11月29日(水) 14:40~16:10 場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室 題 目 事業統合会社による業界再編 ―日本の化学産業のケース― 概 要 本報告は、1990年代後半から2000年代前半にかけての日本の石油化学
産業の業界再編について検討する。具体的には、汎用合成樹脂業界(ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル、ポリスチレン、ABS)の事業統合を, 個々の企業戦略を中心に分析する。
一方、企業戦略に影響を与える制度的・政策的要素として、分析の対象期間には、独禁法の改正、商法・会社法など企業法制の整備が集中的に実施された。 これらの法制度の変化が汎用合成樹脂業界の再編に与えた影響と、再編の経済的成果についても明らかにする。 -
講演者 李 賢郁氏 所 属 信州大学経法学部 日 時 2023年10月25日(水) 14:40~16:10 場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室 題 目 国際移動の増加に伴う地域社会の変化 概 要 本発表では、
グローバリゼーションのなか活発に行われている多様な国際移動パ タンに焦点を当て、 これまでの研究成果と今後の研究課題について報告をする。 特に韓国社会を中心とした国際移動の動態と移動者の増加による地 域社会の変化について分析結果を紹介する。 さらに少子高齢化のなかアジアの先進国である日本と韓国が直面し ている課題などについても最近の傾向を報告する。 講演者 舛田 武仁氏 所 属 信州大学経法学部 日 時 2023年10月25日(水) 16:20~17:50 場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室 題 目 最適化の過程を明示的に取り入れた労働市場実験(共著者:: 三上亮、島田夏美) 概 要 先行研究における連続時間ダブルオークションは、コモディティ(例えば、 各自がどれも同じような果物1個だけ売買できる) 市場を模したものが主だった。それに対し本実験の新しさは、 連続時間ダブルオークションを用いつつも、 労働市場の文脈で両サイドが最適化行動(効用/利潤最大化) をとるか検証できる点にある。つまり、 労働者は最終的な余暇と消費から効用を得る( それが被験者報酬となる)。 労働者には、余暇価値と不労所得に応じ2つのタイプがいる。 労働者は、
労働所得がある閾値を超えると超過分に対し税率が20% または40%かかる。他方、 企業役は生産による収入と労働者を雇用し支払う賃金の差が利益で ある。双方、時間当たり賃金を提示し、 取引は時間1単位ずつ成立する。 労働者は取引しつつ何時間働くか自分で決め、 企業は定められた上限時間まで雇用できる。 実験データ分析の結果、 賃金は予測水準に必ずしも近づくわけではなかったが、 税率変化と労働者タイプが労働時間決定にもたらす影響は予測と整 合的であった。 -
講演者 幡生 あすか氏 所 属 大阪大学大学院薬学研究科 日 時 2023年9月28日(水) 14:40~16:10 場 所 信州大学経法学部 研究棟4階 研究会室 題 目 服薬模擬体験と行動特性の関連の調査(共著者:花木伸行、 池田賢二、島田夏美、上田幹子) 概 要 服薬アドヒアランス(
患者がどの程度処方どおりに医薬品を飲んでいるか)は、 薬物治療を安全かつ有効に行う上で重要である。近年、 服薬アドヒアランスと行動特性(時間選好やリスク回避) が関連するという報告がある。そこで我々は、 服薬行動と行動特性の関連が明らかになれば、 患者の行動変容を促し、アドヒアランスの向上に繋がると考え、 大学生を対象として服薬模擬体験( タブレット菓子を薬に見立てて一定期間服用する体験学習) とともに行動特性を測定し、模擬服薬の実施率90%以上/ 未満群に分けて行動特性を比較した。 本研究では先行研究と異なり、単変量解析において、 服薬状況と行動特性の間に有意差を認めなかった。 模擬薬は実際の医薬品と異なり薬効が無い事、 服薬の期間が先行研究に比べて短期間(1週間) である事が影響しているのではないかと考えた。