スペシャルレポート

信州大学 SVBL 設立10周年記念シンポジウム

理念と信念を持って行動 経営者に聴く、起業の心構え

 信州大学サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(SVBL)が、本年、設立10周年を迎え、9月20日に、記念シンポジウム「元気な創業者たちの想いを聴いてみよう」を、上田市の繊維学部講堂で開催した。
 はじめに信州大学の三浦義正理事・副学長が開催の挨拶を行い、続いてSVBL長の小西哉教授がSVBL10年の歩みを紹介した。
 メインの講演会では、青木擴憲AOKIホールディングス代表取締役会長、鳥羽博道ドトールコーヒー名誉会長、池森賢二・ファンケル代表取締役会長の3氏が演壇に立ち、長年の経営者経験から若い世代に、改めて「挑戦すること」「働くこと」「社会への貢献」の意義についてメッセージを発信。
 講演会の後には、講師の3氏に、白井汪芳信州大学名誉教授と大学院生2人を交えたパネルディスカッションを開催。濱田州博繊維学部長がファシリテータを務めた。   ここでは、学生がカリスマ経営者と白井名誉教授に起業の心構えを教わったパネルディスカッションに焦点をあて報告します。

(文・奥田 悠史)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第90号(2014.11.28発行)より
SVBL設立10周年記念シンポジウム

信州大学SVBL紹介
信州大学SVBLは、ベンチャービジネスの萌芽となるべき独創的な技術シーズをもとに開発・研究や起業家精神に富む人材の育成を目指す全学機関。大学院生を中心としたベンチャー団体を支援したり、企業との共同研究に取り組んでいます。

信州大学<br /><b>三浦 義正 理事・副学長</b><br /><br /><br /> SVBL長<br /><b>小西 哉 教授</b><br /><br /><br /> ◆ファシリテータ<br />信州大学 副学長・繊維学部長<br /><b>濱田 州博<br /><br /></b> ◆パネラー<br />株式会社ファンケル<br />代表取締役会長 グループCEO<br /><b>池森 賢二氏<br /></b> ◆パネラー<br />株式会社ドトールコーヒー<br />名誉会長<br /><b>鳥羽 博道氏</b> ◆パネラー<br />株式会社AOKIホールディングス<br />代表取締役会長<br /><b>青木 擴憲氏</b> ◆パネラー<br />信州大学名誉教授<br /><b>白井 汪芳氏</b><br />繊維学部長や産学官連携推進本部理事などを歴任 ◆パネラー<br />信州大学大学院 理工学系研究科修士1年 <br /><b>柿内 優孝さん</b><br />学生による機器分析プロ集団養成機関「P-DEX」元代表 ◆パネラー<br />信州大学大学院 理工学系研究科修士1年<br /><b>桜井 里奈さん</b><br />桑まるごと活用塾元代表

パネルディスカッション

濱田学部長

濱田学部長
 日本を代表する3名の経営者にお越しいただき、まことにありがとうございます。
 国の方針としても、地域再生が、大きなテーマになっています。しかし、地域再生を進めるのは、簡単なことではありません。こうした状況の中で、地域再生の鍵を握っているのは、若者の起業ではないかと考えられておりますが、日本の若者や学生の起業意識は低いとも言われています。起業や経営について「学ぶ機会がほとんど用意されていない」というのも問題です。
 そこで本日は、学生たちに起業とはどういうものかを考えてもらいたいと思い、パネルディスカッションを計画いたしました。学生から質問し、それに応えて頂くという形で進めて参ります。それでは、柿内さんから質問をお願いいたします。

柿内さん

柿内さん
 私は、学生による機器分析のプロ養成機関「P-DEX」の代表として、学部生時代に活動しておりました。こうした経験の中で、起業への興味が強くなっています。しかし、1人で事業を行うのには限界があると思っています。そのため、パートナーと一緒になって、事業を行いたいと思っているのですが、どのようなパートナーを探す事が重要かを教えて頂きたいです。

池森氏

池森氏
 事業を行っていく上で、パートナーというのは、確かに重要です。しかし、私自身は、1人で起業しましたので、パートナーがいないと起業出来ないという事ではありません。
 私の場合は、会社がある程度の規模になってから、良いパートナーに恵まれる様になったのですが、パートナーというのは、お互いが信頼出来るかどうかが重要です。この強い信頼関係なくして、パートナーは成り立ちません。信頼出来る人を見つける事が大事です。

鳥羽氏

鳥羽氏
 私も、パートナーというのは、非常に重要だと考えています。ホンダの創業者、本田宗一郎さんに藤沢武夫さんがいたように、日本の有名な経営者には、優秀なパートナーの存在があります。
 パートナー探しのときに、大事なのは、内と外の考え方です。例えば、アイデアを考える人がいれば、それを売る人がいる。自分に足らざるものを知った上で、それを補ってくれるパートナーを見つけましょう

青木氏

青木氏
 パートナーを探す、ということも大事だと思いますが、私はパートナーというのは意外と身近にいるものだとも思っています。私のパートナーは弟です。身近な人の長所や特徴を生かす、ということも重要な視点だと思います。意外とベストパートナーは近くにいるものですよ。

白井教授

白井教授
 私はお三方とは違い、大学教員でしたので、学生や職員がパートナーでした。また、研究を実用化していくというプロセスでは、企業の人たちがパートナーになって、進めていく事もあります。
 それぞれに共通しているのは、池森さんのお話にもありましたが、やはりお互いに信頼出来る関係かどうか、だと思います。

柿内さん

柿内さん
 素晴らしいお話をありがとうございます。自分は何が得意で、何が足りないのかを分析することから始めていきたいと思います。

濱田学部長

濱田学部長
 それぞれ、パートナーに対する貴重なご意見ありがとうございました。私自身も学部長という立場ですが、1人では、何も出来ない、様々な人、パートナーの協力や力を借りて、やってきていることを改めて、実感いたしました。それでは、桜井さんから質問をお願いいたします。

桜井さん

桜井さん
 皆様のお話を聞いて、理念や信念を持って、行動するということの重要性を感じました。
 私は、学部生時代に桑の葉を活用して商品化を行う「桑まるごと活用塾」という団体を立ち上げて、代表としてやってきました。しかし、お話を聞いていて、自分の中には明確な理念がない、と感じました。楽しいから続けてきましたが、先に進むには理念が必要だと思いました。理念に気付くためには、どのようなことが必要でしょうか。

池森氏

池森氏
 桑の活用を目指しているということですが、「桑を使ってこういう活用が出来ないだろうか」という視点が大切です。「自分は桑にこういうことを期待している!」と自信を持って語れる様になれば、それが理念になります。

鳥羽氏

鳥羽氏長
 「活動していることが楽しい」という意識から、「この活動は世のため、人のために役に立つ」という意識に変わったときに、すごいエネルギーが沸いてくると思います。池森さんもお話されていますが、「桑の葉を人の為に、どう生かすか」という視点で考えて見て下さい。それが理念になると思います。

青木氏

青木氏
 桑の葉は、絶対に“効く” (例えば健康に良い)という執念が大事です。成功するには頑固でなければなりません。桑の葉で人類を救うという気持ちで頑張って下さい!

白井教授

白井教授
 私は、色々な人に自分の中にある気持ちを話す事が大事だと思います。今は、起業を支援する機関なども沢山あります。そういったところへ行き、多くの人と話す事で、自分の中の理念に気付けるのではないでしょうか。

桜井さん

桜井さん
 ありがとうございます。人に相談しながら、自分が何をしたいのかという視点で深く考え、先に進んでいきたいと思います。

濱田学部長

濱田学部長
 青木さんのお話しにあったように、頑固に執念をもって取り組んでいくと言うのは、どのような道に進んでも重要なことですね。
 それでは、最後にパネラーの方から若者へ向けたメッセージをお願いします。

池森氏

池森氏
 会社の若い社員を見ていると、大人になりすぎていると感じる事があります。現実を見て、出来そうか、出来なさそうかで判断してしまうのではなく、自分がやりたいかどうかを判断基準にして、大きな夢を持って行動して欲しいです。若い人に期待しています。

鳥羽氏

鳥羽氏
 私たち三人の共通項を考えていたのですが、一つ思いつきました。それは、皆「せっかち」だということです。考えたらすぐに行動し、行動しながら次の手を考えることが大事だと思います。「考えてから行動する」では、なかなか先に進めません。とにかく行動してみることで見えてくる事があります。

青木氏

青木氏
 鳥羽さんも仰っていましたが、これから起業したいと思っている方、あるいはそうでない方も含めて出来る事からまず行動しましょう。「知行合一」。これは、知ったら行動する。本当の知識は、実践を伴わなければならないという意味です。行動しながら頑張って下さい。

濱田学部長

濱田学部長
 素晴らしいメッセージをありがとうございました。本日は、日本を代表する経営者3名に来て頂きましたが、3名のお話を一度に聴けたことで、私たちの学びは3倍ではなく、3乗になったと思います。
 本当にありがとうございました。

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