スペシャルレポート

農学部の学生地域活動グループが長野県知事とタウンミーティング

農学部の学生地域活動グループが長野県知事とタウンミーティング

  農学部には地元の人々と交流し、楽しみながらボランティア活動をする学生のグループがある。これら7つのグループの学生達による「県民主催タウンミーティング」が、6月1日、信大農学部キャンパスで阿部守一県知事を招いて行われた。「県民主催ミーティング」は、県にとっても初の試みで、テーマは「大学と地域連携」だ。今回の主役は学生。学生達のがんばりぶりと、地元の方々との良好な関係づくりに、知事も「予想以上の、すばらしい地域活動」と評価した。

トップバッターは、「南箕輪村消防団」の学生団員

「南箕輪村消防団」の学生団員

  農学部の食と緑の科学資料館「ゆりの木」の研修室、午後0時30分。初めて迎える阿部県知事を前に、やや緊張した面持ちで30名ほどの学生と数名の地域の方が座っている。
  司会進行役の落合尚子さん(4年生:「か~みやん」)が開催を告げると、学生代表の堀 咲月(ほりさつき)さん(3年生:地域交流サークル「か~みやん」代表)が「農学部の学生の地域活動を知っていただき、さらに活動の場を広げるために」との開催趣旨を説明、続いて阿部知事が「食・農・健康長寿・環境と県が大切にする特長すべてに関係する農学部は県の財産。学生のみなさんが活躍することが県にとっても大切なこと」と挨拶をし、タウンミーティングが始まった。
  トップバッターは、「南箕輪村消防団」の学生団員。地元消防団で地元団員と共に火災予防活動を行い、日ごろの訓練へ参加、ラッパ班や救護班として活動しているという。消防団の団長からもその活躍ぶりが語られた。彼らが直面している問題は、同じ若者世代の確保。地元を離れる若者が多く、地元出身者の確保は難しいという。県知事に「若者が戻ってきやすいまちづくりや、団員の優遇制度についての支援を検討して欲しい」と訴えた。
  続いて、農学部として体制を組んでいるボランティア「農援隊(農学部栄村震災復興支援隊)」の発表。清掃や田んぼの手伝い、土砂崩れの片付けなど5月末までに10回ほど、栄村にボランティアが派遣されている。代表の学生は、「栄村の温かさ、信州の文化に触れることができうれしかった。信州がもっと元気に、栄村やシャッター街などの地域がもっと栄えてほしいと願っている」と知事に伝えた。

長野県は、21世紀の先進地域だ!

阿部守一県知事
阿部守一県知事

  知事は、学生が地元消防団の団員になっていることを初めて知ったという。団員確保の優遇制度など検討したいと話した。栄村での支援活動については、学生たちに感謝の意を伝え、「20世紀の暮らしの先進地域は東京だが、21世紀の先進地域は長野県だ。電力が足りなくなった時、東京の暮らしは豊かといえるか。物流が滞れば、どうにもならなくなる。地域としての自立の度合いは長野県の方が高い。モノではない豊かさが、ここにはある」と語った。
  シャッター街については、「空きスペースをどうするかなど、“元気にしようぜ!”というみなさんからのアイディアを持って、一緒につくっていけたら」とはっぱをかけた。

学生に向けられた知事からの提案

学生に提案する阿部知事

  後半は5グループが続けて活動を発表した。ゴミ拾いや花いっぱい運動、地元の祭りの手伝いなどをする「か~みやん」。森林整備や住民とハイキングの企画やガイド、花壇づくりをする「伊那守」。炭焼き、野沢菜漬けなど、地元の年配者に教わり地域文化を実践する「草むら組合」。小学校で算数の授業補助や保育園で子どもたちとの交流、通学合宿を行っている「信大子ども会いそポン」。ラストに、花いっぱいプランター活動やゴミ拾い、エコキャップ回収などのエコ活動、そして東日本大震災の募金に取り組む「農学部環境ISO学生委員会」。また、「か~みやん」とともに活動する地域グループ「きれいなアクセス道路にしよう会」の方も、これまで学生との歩みについて語った。
  知事は「予想以上の、すばらしい地域活動」と、その活動の豊富さに圧倒されながらも、各グループごとに意見を述べ、課題を提案していった。
  「リユース、リサイクルなど、そもそもゴミの出ない方法を考えてみてはどうか」、「都会へ出向き、緑であればよいと思い、荒れ放題の森に気づかない人々へ、健康な森とはどういうものか伝える活動があってもよいのでは」、「炭焼きから得られた体験で、エネルギーのあり方を提案してほしい」、また被災地の支援については、「行政が取り組むことが難しい個別で具体的なニーズについて、支援する活動を」などと、学生達に投げかけた。

若者と知事の「21世紀の豊かさ」を語り合う多くの場

学生

  オブザーバーとして参加していた、中村宗一郎農学部長は「環境系の活動を維持するのは強い志が必要。その志は農学部で学ぶ原点ともいえ、教育研究を進める上で、プラスにはなっても、マイナスになることはない。また他大学で伊那谷を活性化する学生グループの話を聞いたが、ぜひ声をかけあい、伊那谷の魅力を全国へアピールする大きなうねりとなっていってほしい」と感想を話した。
  知事は最後に「今は日本の社会の転換期。学生には違う立場の人々とたくさん話をして広い視野を持ち、これからを考えて欲しい。みなさんの世代にかかっています」と学生に希望を託し、午後2時過ぎにタウンミーティングは幕を閉じた。
  学生代表をつとめた堀さんは「反省もあるが、今回は、他のサークルと共に意見を出し合い、お互いを知ることができ、楽しい機会となった。知事からご提案いただいた、例えば、森林について、こちらから出向いていくお話などは、学生だけでは考えつかないことで、貴重なご意見を伺えた」と話す。
  農学部の地域活動と知事とのコラボレーション。学生のストレートな意見をしっかり受け止めてくれた知事に、当初緊張していた学生達の面持ちも笑顔に変わった。
  忌憚なく、偏りのない意見交換ができたすばらしい1時間30分となった。

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