スペシャルレポート

繊維学部創立100周年関連行事

繊維学部創立100周年関連行事

今年平成22年に創立100周年を迎える繊維学部で、10月の記念式典に向けて多彩な関連事業が次々とスタートしている。
4月24日には、最先端のファイバーテクノロジーを紹介する「疾走するファイバー展」の常設展示が総合研究棟で始まった。同時に、上田蚕糸専門学校時代から伝わる貴重な資料を集めた繊維学部資料館もオープン。それに先立つ4月6日に完成、公開されたインターネット上の資料館=繊維学部デジタルアーカイブと併せて、これまでの100年から次の100年に向けた繊維の歩みと発展性を広く社会に発信する体制が整った。

今後10月23日の記念式典を中心に、●国際先進ファイバー工学教育研究拠点基金の創設 ●繊維学部講堂(国登録有形文化財)の修復 ●エコキャンパスの整備 ●創立100周年記念誌の編纂・発刊 ●記念シンポジウムの開催―を柱とする繊維学部創立100周年記念事業が、いよいよ本格化する。

                                                                             ・・・・・信大NOW66号(2010.11.26発刊)より

「疾走するファイバー展」常設展示開始―スポーツから宇宙開発・バイオまで、最先端ファイバーテクノロジーが一堂に

最先端ファイバー技術が凝縮された展示室
最先端ファイバー技術が凝縮された総合研究棟2階の常設展示室
「スパイダーシルク」製ソックス
カイコにクモ糸遺伝子を組み込んで生まれた「スパイダーシルク」製ソックス

国内で唯一、世界でも数少ないファイバー工学研究教育機関にふさわしく、最先端のファイバーテクノロジーが切り拓く未来を示すのが「疾走するファイバー展」。
総合研究棟の常設展示場には、●循環型社会 ●バイオミミクリー(自然をまねる) ●極限環境 ●ナノテクノロジー ●機能・快適性―のテーマごとに分類されて、繊維=ファイバー技術の最先端とこれからの可能性を示す貴重な品々が陳列されている。

ある種の微生物が糖や植物油を食べて体内に精製するポリエステルを利用して作り、使用後も微生物の持つ酵素で分解できる完全な循環型生分解性繊維。
クモの糸の遺伝子をカイコに組み込むことで生まれた、通常のシルクより2~3倍の強度と伸度を持つスパイダーシルク。
さらに、わが信大出身の小平奈緒選手がバンクーバーオリンピックで使用した最先端の技術を駆使して作り出された競技用のスピードスケートウエア(写真に小さく写っていますが、知的所有権などの関係で、これ以上大きく写せません)。
その他、微細な繊維の断面写真や特殊な人工皮革など、目を見張るような先端技術を手に取るように知ることができる。

この展示は、2004年に日本科学未来館(http://www.miraikan.jst.go.jp/sp/fiber/)で開催されたもので、その後全国各地で巡回展が催され、同展のプロデュースに関与した縁で本年から繊維学部に寄贈され常設されることになった。(http://www.miraikan.jst.go.jp/linkage/info/100428164655.html)同じ総合研究棟1階には、現在の繊維学部の研究の到達点を分かりやすく解説した展示もあり、ファイバーテクノロジーの“現在”(1階)、と“未来”(2階)がよく分かる。

資料館&デジタルアーカイブ―創立100年の歴史を物語る貴重な財産が集中。養蚕から製糸、さらに販売まで、理論・技術・教育普及の真髄が一目瞭然

繊維学部資料館、蚕の模型、養蚕教材
1.レンガ製の旧貯繭庫(ちょけんこ)をリニューアルした繊維学部資料館
2.教材として使用されたカイコの模型。ふた状の上部を開けると身体内部の構造も分かる。
3.養蚕、製糸、使用用途、販路までを図示した教材。すべて英語標記。

1911(明治44)年に建てられた赤レンガ製の旧貯繭庫(ちょけんこ/蚕の繭の保存倉庫)をリニューアルしたのが繊維学部資料館。2階建ての建物の内部は、階下から繭を運び上げるための滑車なども残され、黒光りする木の床と白い漆喰の壁が時代を感じさせる。
展示物の概要は以下の通り。

●織物見本帳―上田蚕糸専門学校で教材として使用された錦織物を中心とした見本。
●生糸商標―輸出用生糸に使用されていた商標のコレクション。1913(大正2)年に、当時の専門学校製糸科2回生が全国の製糸会社から集めて学校に寄贈したもの。
●上田蚕糸専門学校の教材―掛図、模型、すごろくなど、当時教材として使用されていたもの。表記が英語ばかりのものが多く、当時の授業でも英語が重視されていたことがうかがえる。一般市民啓蒙用のものも含まれる。
●上田蚕糸専門学校歴史に関する資料―記念絵葉書、初期の写真(原板はガラス乾板)、上田蚕糸専門学校一覧附属配置図、装束などがある。中には、何故、ここに存在するかが不明の皇室関係用の絹製装束もある。
●養蚕関係の図書・錦絵―養蚕に関する貴重な資料で、2008(平成20)年度に、榎本祐嗣名誉教授(元創造工学系機能機械学課程 教授)より信州大学へ寄贈された、日本で二番目に古い1705年に書かれた養蚕技術書「蚕母要覧」や1757年に現在の上田市上塩尻に在住した養蚕家・塚田與右衛門が出版した「新撰養蚕秘書」などがある。榎本名誉教授のコレクションである養蚕錦絵の名品も公開されている。

これらの貴重な資料は、資料館で見学できる(見学希望の方は繊維学部図書館まで)ほか、繊維学部のホームページに搭載された、信州大学繊維学部デジタルアーカイブで見ることができる。
(URL:http://www.tex-shinshu-u-da.jp/index.html
この資料館は、大正時代から現在まで実習に使用している紡績機械などがある繊維教育実験実習棟とともに、信州・上田のみならず、日本の養蚕・製糸の歴史が凝縮されたものなのである。

世界をつなぎ、未来を紡ぐ―国際先進ファイバー工学教育研究拠点へ

世界に通用する優れたファイバー人材の養成拠点
世界に通用する優れたファイバー人材の養成拠点へ

創立100周年関連事業を着々とスタートさせながら、今、繊維学部は、「国際先進ファイバー工学教育研究拠点」構想にもとづいて新たな歩みを始めようとしている。(http://www.tex-shinshu-u-da.jp/img/20100301_f2.pdf)

繊維学部の母体であった官立上田蚕糸専門学校は、我が国が工業立国として台頭しようとした1910年に、蚕糸に関する初の高等教育機関として、また長野県下初の国立学校として設立された。
その後、日本の養蚕・製糸産業に関連する教育研究を牽引してきたものの、近年における製糸産業の衰退の流れの中で、国内で唯一つの「繊維学部」となった。だが、その逆境下で、「センイ」を教育研究する意義を問い直し、DNAからカーボンナノチューブに至るまで、およそすべての生物や物質が、繊維=ファイバーを基体として構成されていることを明確にして、地域・産業・世界・環境、そして未来とつながる学部として発展を目指してきたのである。それは日本のOnly Oneから、世界のBest Oneに飛躍する挑戦であった。
こうした歩みを踏まえ、さらに一歩前へ!繊維学部は次の100年に進もうとしている。

ページトップに戻る

スペシャルレポート
バックナンバー
信大には、独創力を育む環境がある。

信州大学伝統対談 Vol.2 濱田州博学長×スタジオジブリ 宮崎吾朗さん

どくとるマンボウと信大生のDNA

信州大学特別対談 山沢清人学長×エッセイスト齋藤由香さん

信大発夏秋イチゴ「信大BS8-9」の魅力

北海道から九州まで、全国へ栽培拡大!

信州大学 SVBL 設立10周年記念シンポジウム

理念と信念を持って行動 経営者に聴く、起業の心構え

CITI Japanプロジェクト

研究倫理教育責任者・関係者連絡会議

ひらめき☆ときめきサイエンス
100億光年かなたの天体の立体視を確認
往来と創発
栄村秋山郷で小水力発電システム稼働開始
第3回東アジア山岳文化研究会
座談会 信州大学と「春寂寥」
JST-RISTEX「科学技術イノベーション政策のための科学 研究開発プログラム」採択事業
大学と県民一体で目指す健康長寿県「信州」
長野県北部地震 災害調査研究報告会 in長野県栄村
山岳科学研究のメッカを目指して
「運動を核にした健康寿命延伸社会のデザイン」
信州大学自然科学博物館オープン!!
かつての諏訪湖を取り戻そう!
医療人を目指す女性のために
信州大学大学院医学系研究科疾患予防医科学系専攻設立。
日本科学未来館でキックオフセミナーを開催。
医師・看護師をめざしたい! 中高生のための診察・手術体験 「メディカルフォーラム イン 信州2011」
「地下水制御型高効率ヒートポンプ空調システム」実証実験プラント竣工
農学部の学生地域活動グループが長野県知事とタウンミーティング
子どもの健康と環境に関する全国調査
池上彰 信州大学特任教授の夏期集中講義
「大学は美味しい!!」フェアに参加
繊維学部創立100周年関連行事
信州メディカルシーズ育成拠点設置
信州大学創立60周年まとめ