
東京の新宿高島屋で6月2~6日に開催された、「大学は美味しい!!」フェアに、信大ブースが出展し、好評を博した。信大ブースの主役を演じたのは農学部の学生と職員。演習農場で採れた果樹を使い、農学部食料生産科の実習で作った無添加ジャムを販売した。また信大と共同で、素材作物の品種改良や機能性研究を行う地元企業の担当者もサポートに駆けつけ、山ブドウワインやはちみつのPR・販売に務めた。
同フェアは出版社の小学館の主催で、今年で3回目。全国各地の大学で開発・販売を手掛ける大学ブランド食品や、地元メーカーと協力した産学連携食品が一堂に会する、全国の食の大学祭だ。今回は31大学が参加、来場者は延べ約20万人に及んだ(主催者発表)。
信大は農学部を中心に第1回から参加しており、今年も「信州の味」に人気が集まった。
信大の出展食品は、リンゴジャム、ブドウ(ナイヤガラ)ジャム、はちみつ、山ぶどうワインの4点。他の参加大学の中には、10数種の商品アイテムを揃えるところもあり、品数的にはやや控え目だったが、4点はそれぞれ、栽培や加工の現場に大学が密着しているものであり、「農学部らしさ」を前面に押し出したブースだった。
ジャムはどちらも、附属アルプス圏フィールド科学研究センター(AFC)の演習農場で、学生が自ら有機肥料・低農薬で栽培した原料を使用したもの。実習で、凝固剤や着色料を一切使わず作った無添加食品だ。特に、ナイヤガラのジャムは、2009年から作り始めたブドウジャムのうち、もっとも香り高いと評判の品。数量が少ないため毎日限定50本しか販売できなかったが、連日、開場1時間で完売になるほどの評判だった。
5日に販売を担当した食料生産科3年の西岡杏子さんは「お客さんの評価を直接聞けるので勉強になる」、同3年の中津川実里さんは「喜んでもらえて、とても自信が持てた」と話した
ワインを出品した大学は他にもあったが、産学連携で開発した山ブドウの新品種でワインを作った例は珍しく、注目を集めた。信大農学部には、実習農場で栽培した山ブドウを使った、知る人ぞ知る「信大ワイン」があるが、今回は品切れで出品なし。塩尻市のワインメーカー「五一ワイン」(林農場)が同じ品種の山ブドウを使って醸造した「山ぶどう・ゴイチアムレンシス」が登場した。この品種は、信大農学部と林農園の共同研究により生まれた品種で、食品開発を、その原料の開発・生産から手掛けようという信大農学部の根本姿勢を示すものだった。
同じく"農の現場に近い"という特徴を集約して、見学者を魅了したのが「高嶺ルビーはちみつ」。製造業のタカノ(宮田村)の健康福祉部門「ハートワークス」が製造販売するものだ。遊休農地対策のため信大農学部とタカノが共同育成し農水省に品種登録した紅ソバ=高嶺ルビーの花から、日本ミツバチだけで採取した希少なもの。
しかも「信州日本ミツバチの会」の協力を得て、18人の養蜂家が採取した蜜を、その微妙な色合いの違いが解るように並べ、風味・クセ・ポリフェノール含有量なども例示(この分析も信大がお手伝いしている)。その中からお好みの品を選べるという、まさに、生産の現場から機能性分析まで、信大農学部の"底力"を見せ付けるかのような産学連携食品だった。
同フェアを企画した小学館の社員・松元浩一さんは、「理系離れが指摘される中、理系の大学・学部の認知度調査をしたところ、農学系はほとんどランクが低くかった。『食』というテーマは重要で、安全性や機能性など最先端の研究を地道に進めているのだから、もっと認知度を高めてもらおうと考えた」と2008年2月の第1回フェア開催当時を振り返る。
信大は農学部が中心になり、第1回から参加しているが、原料農産物の品種改良から栽培、加工、さらにできた食品の成分解析や機能性分析など、一貫して関わり合いをもっている食品を出品している点が特徴だ。
出展した他の大学には、幻の酒米を復活させて作った日本酒(東京家政大)、学生や教職員の声を取り入れて作った大学公認のラーメン(小樽商科大)、放牧中心でストレスを少なく育てたウエルフェア牛肉(東北大学)…など、それぞれ特色ある食品が並んでいたが、企画立案や販促ブランド化、ネーミングやラベルデザインなど、いわばプロモーションの視点から大学が地域の企業と連携を進めた食品が多く見受けられるようになりつつある中で、信大は、あくまで、栽培や生産の現場からトータルな特産食品作りを目指していることをアピールできたといえるであろう。
もちろん、販売促進などの面で力を発揮することのできる人材を育成することも重要で、その視点からは、食料生産科学科4年の縄達也君と宮崎大輔君が、同フェアでの講演のために会場を訪れていた料理評論の大御所服部幸應氏を引きとめ、信大産ワインとジャムを試食してもらい、批評を聞きだしていたシーンが印象的だった。二人は「辛口の批評だったが勉強になった。服部先生の批評をPRにも活用していくという視点が重要だと思う」と声をそろえていた。
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