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  1. 世界初・サル類の魚食行動の決定的瞬間が撮影される、 世界最寒地(上高地)のサル集団における魚食行動
研究
2022年1月14日(金)

世界初・サル類の魚食行動の決定的瞬間が撮影される、 世界最寒地(上高地)のサル集団における魚食行動

信州大学の研究グループが上高地のニホンザル集団に関する独特な越冬戦略に関する知見を発表、 その後、サケ科魚類を捕食する決定的写真が話題に。

 2021年11月、Nature系の科学専門誌Scientific Reports誌に、信州大学理学部東城幸治教授らの研究グループによる上高地のニホンザルが冬季に魚類を餌として利用しているとの研究論文が掲載されました。さらにメディアの報道を受け、上高地でサケ科魚類を捕食する写真を2019年1月4日に上高地で撮影していたフリーカメラマンの後藤昌美氏(北海道東神楽町)と同行者の鈴木裕子氏(埼玉県羽生市)より、決定的な写真を撮影していたとの連絡がありました。
 撮影された写真の魚類の斑紋パターンからはサケ科魚類であることは間違いなく、上高地に多く生息するイワナとブラウントラウトの交雑系統と同定され、2022年1月 Nature Portfolio, Ecology and Evolution にて公開され、世界的な話題になりました。
https://ecoevocommunity.nature.com/posts/snow-monkeys-eating-fish-in-the-wintertime

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2019年1月4日 上高地(河童橋~田代湿原)鈴木裕子氏撮影

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2019年1月4日 上高地(河童橋~田代湿原)後藤昌美氏撮影

発表した研究成果のポイント

 ニホンザルは人類以外の霊長類の中で世界で最も寒い地域に生息する種であり、中でも上高地や志賀高原の高標高域に暮らす集団が、世界最寒地の集団とされる。
 ニホンザルの集団成立には、最も厳しい冬季を生き抜くことができるかどうかに左右され、集団の規模や密度は冬季の餌資源により決まる。
 2017-2019年の冬季3シーズンにかけて、上高地のニホンザルの38糞サンプル(同一個体の糞サンプルの重複を回避するように採取した糞サンプル)に含まれるDNAを網羅的に調べるメタゲノム解析を実施したところ、サケ科魚類や水生昆虫類(カワゲラ類やガガンボ類)などのDNAが検出された。すなわち、厳冬季における栄養源として、河川に生息する動物に依存している実態が究明された。
 猿類が河川に生息する魚類を捕食すること自体が世界で初めての報告であり、水生昆虫類を餌として利用していることに関しても、排泄物のメタゲノム解析(糞内ゲノムの網羅的解析)による直接的な証拠を得ることができた。加えて、餌として利用している水生昆虫種群の特定に結びついた研究も世界初の成果となる。

論文タイトルと著者

タイトル:Winter diet of Japanese macaques from Chubu Sangaku National Park, Japan incorporates freshwater biota
掲載誌:Scientific Reports
著 者:Alexander M. MILNER(信州大学, イギリス・バーミンガム大学)責任著者
    Susanna A. WOOD(ニュージーランド・コースロン研究所)
    Catherine DOCHERTY(信州大学, イギリス・バーミンガム大学)
    Laura BIESSY(ニュージーランド・コースロン研究所)
    Masaki TAKENAKA(竹中將起, 筑波大学生命環境系特任助教:野外調査時は信州大学大学院総合工学系所属)
    Koji TOJO(東城幸治, 信州大学理学部教授)