無機ナノシートの構成元素を一部異種元素で置き換えることにより制御する機能を俯瞰した論文を発表
秋田大学・齊藤寛治講師、東京農工大学・森田将司講師、信州大学・岡田友彦教授(当時准教授)、タイ王国VISTEC・小川誠教授の研究グループは、触媒、電極、樹脂添加物などで広く利用されている金属酸化物/水酸化物ナノシートの構成金属元素を一部異種元素で置換することにより制御する機能についてその概念や特徴、応用における展望について俯瞰した総説論文を発表しました。
本研究成果は英国化学会が発行する学術雑誌Chemical Society Reviews(IF = 40.4)に現地時間の11月7日に掲載され(2024年10月7日にオンライン版に掲載)、雑誌のOutside Back Coverにも採択されました。オープンアクセスのためどなたでも論文の内容をご覧になれます。
【掲載論文】
雑誌名:Chemical Society Reviews(出版社 The Royal Society of Chemistry)
論文タイトル: Designed functions of oxides/hydroxides nanosheets via elemental replacement/doping
(元素置換/ドーピングで設計する酸化物/水酸化物ナノシートの機能)
著者名:Kanji Saito, Masashi Morita, Tomohiko Okada, Rattanawadee (Ploy) Wijitwongwan and Makoto Ogawa
(齊藤寛治、森田将司、岡田友彦、Rattanawadee (Ploy) Wijitwongwan、小川誠)
掲載日時:2024年10月7日にオンライン版に掲載
URL: https://doi.org/10.1039/D4CS00339J
総説論文の概要
物質の主構成元素が一部異種の元素と置き換わる(呼称は分野により「同型置換」や「ドープ」など様々)と特性が著しく変化することはよく知られています。宝石の着色(図1)や粘土鉱物のイオン交換特性等は天然の例であり、また置換した希土類元素により設計されたYAGレーザーなどの材料は異種元素置換による物質の機能の発現/制御が学理と応用の双方の観点から注目されてきたことを示す好例です。
ナノメートルレベルの厚さの物質(ナノシート)が積層した構造を有する物質(層状物質)は、表面に露出する原子の数の割合がバルク材料と比べて大きいことから、導入した異種元素が材料の特徴に与える影響はより顕著です。本総説では天然に産するものから合成されているものを含め異種元素置換により発現/制御可能な無機ナノシートの機能を、評価手法や合成技術の発展と関連付けて整理、解説しました。同型置換で実現する多様な組成のナノシート群の将来展望についても述べました(図2)。