メインコンテンツへ移動

メニュー
閉じる
閉じる

トピックス

  1. 水の浄化や水由来の水素エネルギー関連の先鋭材料研究を核に経済成長と地球再生の両立の実現を目指す
研究
2024年1月19日(金)

水の浄化や水由来の水素エネルギー関連の先鋭材料研究を核に経済成長と地球再生の両立の実現を目指す

信州大学が提案した事業が文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択

「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」概要

J-PEAKS0123.jpg

「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」は、日本全体の研究力を向上させ、新たな価値創造を促進していくために、大学ファンドによる国際卓越研究大学への支援と並行して行う事業です。国際卓越研究大学は、全ての分野で世界トップレベルを目指すのに対して、地域中核・特色ある研究大学は、研究の特定分野で世界のトップを目指すものです。そのため、日本のみならず世界的に、特定の研究分野での卓越性等を有している必要があります。戦略的経営、他大学・企業等との連携、研究活動の国際展開や社会実装の加速についての実現可能性が問われ、グローバル研究拠点として我が国全体の研究力の発展を牽引する研究大学と言えるかを見極めるものです。

今年度は69の国公私立大学が申請し、12大学(国立9大学、公立1大学、私立2大学)が採択されました。

アクア・リジェネレーション(ARG)の研究力を核に 一歩先のソリューションを共創する大学

水環境、エネルギーの課題と信州大学が目指す10年後のビジョン

信州大学_地域中核大学採択記者会見用発表資料_20231222現在_2_ページ_06.jpg

世界的な水課題を分析すると、2020年の時点で20億人が安全な飲料水を入手できずにいます。トイレがなく屋外で用を足す人は約5億人います。2030年までに世界の水の入手可能性は40%不足しかねないとの報告もあります。不衛生な水が原因で乳幼児を中心に年間150万人以上が死亡しています。

日本は比較的裕福な水を有しているため、水問題は身近ではないかもしれません。

しかし、世界に目を転じれば、水課題は、喫緊に解決すべき問題です(SDGsの6:安全な水とトイレを世界中に)。

また、気温上昇に伴う気候危機を回避するため、気候変動の原因となっている温室効果ガスの排出量の削減が急務になっています。中でも化石燃料に替わるエネルギーとして、利用時にCO2を排出しないグリーン水素エネルギーが注目され、水素コスト削減に向けて、水素の供給量の拡大や、インフラ整備に資する取組を推進する必要が叫ばれています。

このような水の惑星地球に課せられた大命題を解決すべく、信州大学ではアクア・リジェネレーション(ARG)事業を立ち上げました。この事業では、人の活動に必要な水と水由来水素エネルギーを循環型・地産地消型で永続的に供給し、サステナブルな水・水由来水素エネルギー供給が生命と人々の豊かな生活と産業を支える役割を果たします。

地球の再生にはサスティナビリティが、他方で人類の発展には経済成長が欠かせません。そのため、これらの両立が水の惑星地球再生の鍵であり、ARG事業がその一翼を担うことで、未来への希望を築く一助となるでしょう。信州大学の取り組みが、地球環境の持続可能性に向けた一歩として注目されています。

水環境、エネルギーの課題解決に向けた研究

未電化地域での100世帯規模給水実証 ~フッ素除去材を搭載した浄水装置~信大クリスタル

re_F7S3249.jpg

信州大学 手嶋勝弥 学長特別補佐/先鋭材料研究所長/卓越教授

タンザニアを含むアフリカ東部では、地質由来の過剰フッ素による飲用水の汚染が問題となっています。過剰フッ素の摂取により、骨が溶け、歩くのもままならなくなることもあります。水に溶け込んだフッ化物イオンを、電力不要で簡便に除去する技術(信大クリスタル)を搭載した給水装置をタンザニア国アリューシャ県レマンダ村に設置し、給水実証を実施しました。

安心安全な水を供給できれば、健康を気にせずにたくさんの水を飲むことができます。

海水淡水化:サウジアラビアにてCNT/PA複合RO膜を実証検証

re_F7S3307.jpg

信州大学 遠藤守信 特別栄誉教授

「ナノカーボン逆浸透(RO)膜」は、カーボンナノチューブ(CNT)を従来の高分子膜に複合させた膜で、脱塩・透水性に加えて耐ファウリング(汚濁)性や耐塩素性等のロバスト(頑強)性に優れた高機能な分離膜です。

サウジアラビアは、生産・消費の観点で世界一の海水淡水化王国であり、現地の世界最大の海水淡水化公社SWCC(Saline Water Conversion Corporation)との連携で、条件が過酷(水温、濁質、塩濃度)なアラビア湾実海水で実証検証中です。

砂漠に覆われた水不足が激しい国で、海水を淡水にして供給することができれば、飲み水として活用できます。

水由来のグリーン水素製造の実証実験(光触媒)

re_F7S3291.jpg

信州大学 堂免一成 特別特任教授

人工光合成/可視応答性光触媒という技術です。太陽光を特別な光触媒に通すことで水を分解し、水素と酸素を得ます。信州大学が参画する国家プロジェクト(NEDO事業)において、世界最大規模の長期実証試験を実施し、高効率かつ安価にグリーン水素を製造することを目指しています。

水素は、新たなエネルギーとなり得る可能性を秘めており、地球にも優しいエネルギーです。

先日(2022年)、ヨーロピアンイノベーションカウンシルが主催するコンペティションにおいて、NEDO事業で開発した人工光合成システムが優勝しました。