平成22年度 放送公開講座
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ごあいさつ
県民の皆様のアンケートをもとに、信州大学を代表する魅力的な教員による、話題の講義をお届けします。
信州大学は地域の「知」の拠点として、その研究成果や知識を社会に還元することを目標のひとつに掲げ、地域と連携して公開講座、出前講座、市民開放授業などを実施しています。
放送公開講座は、創立50周年を機に平成11年度より開始し、本学の教育、研究内容を広く公開することを目的に、毎年放送してきました。総合大学の特色である多様な研究内容を、映像を通して視聴者の皆さんにわかり易くお伝えし、好評を得ております。
第12回となる本年度は新しい視点でテーマを設定し、「信州知の森-知の創造・未来への提言-」と題し、興味深い研究を行っている本学教員を様々な分野からクローズアップし、SBC信越放送で6回にわたって講義をご紹介することとなりました。
この放送公開講座をぜひご覧いただき、本学へのご理解をさらに深めていただければ幸いです。また視聴後は、今後のより良い企画のためにも本講座に対するご意見、ご感想をお寄せ下さいますようお願いいたします。
なお、今回からは、信州大学動画チャンネル YouTubeでも放送の番組を公開しますので、こちらもご覧ください。
信州大学理事(研究・財務・産学官連携・国際交流担当)
三浦 義正
平成22年度放送公開講座詳細
第1回 1月22日(土)15:30~16:00
常識は本当に常識なの? ~川中島合戦から歴史を考える~
長野県人なら誰もが知っている川中島合戦。多くの人が謙信の車懸かりの陣だとか信玄の鶴翼の陣、そして両人の一騎打ちについて語ります。しかし、それって本当なのでしょうか。私たちにとって最も大事な、食料、水、エネルギーといった観点から川中島合戦を考えてみましょう。常識を常識とする前に、まずは私たちが、私たちの足をもとからしっかり見つめ直す必要があります。暗記の嫌いな方にも歴史学のおもしろさをお伝えします。
第2回 1月29日(土)15:30~16:00
雪が織りなす物語
雪は真っ白でとても綺麗です。「雪は天から送られた手紙である」と言われるように、降ってくる雪には大気中の様々な情報が含まれています。雪に 含まれる塩分濃度や酸性物質濃度は、降るたびに高かったり低かったりします。地上に降り積もっている間にも様々なことがありますが、春先になって雪が融ける時には大きなドラマが待っています。降ってくる雪も酸性のことが多いのですが、融雪水は降ってきた時よりもさらに強い酸性になるので す。この影響は春先の渓流水のpHにも現れます。また、降り積もっている雪から情報を取り出すことによって、山の上ではいつ、どのくらいの雪が降っているのかを見積もることもできます。雪が織りなす物語を読み解いていきましょう。
第3回 2月 5日(土)15:30~16:00
製品の快適性(心地)を科学する
我々は五感(視覚、触知覚、嗅覚、聴覚、味覚)で、いろいろな製品の心地を評価しています。研究室では、製品の快適性である「心地」、すなわち スーツの「着心地」、自動車シートの「座り心地」やハンドルの「操作性」、床材の「歩き心地」などについて消費者が評価した結果と、評価しているときの消費者の生理的機能量(脳波、筋電図、動作解析など)との対応関係を検討して、「心地」を数字で表わす研究を行っています。そして、「心地」良い製品を設計する「人間快適工学」の確立を目指しています。
第4回 2月12日(土)15:30~16:00
エコチル調査から見る公衆衛生学
公衆衛生(こうしゅうえいせい、Public Health)は、地域や集団全体の健康状況を分析、把握し、適切な介入をする学問です。臨床医学が個人水準で健康を扱うのに対して、公衆衛生は社会、集団の健康を扱います。例えば、生活習慣病対策・伝染病予防・公害対策・上下水道・食品衛生など社会保障の基礎となる分野について研究しています。今年度、環境省では、日本中で10万人のお母さんと赤ちゃんに参加してもらう大規模な疫学調査を開始します。子供の健康と環境に関する調査(エコチル調査)です。赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時から13歳に達するまで、定期的に健康状態を確認し、環境要因が子どもたちの成長・発達にどのような影響を与えるのかを明らかにします。このエコチル調査の様子を通して私たちの健康管理に重要な役割を果たす公衆衛生について紹介します。
第5回 2月20日(日)15:30~16:00
経済を読み解く力をつける
バブルや不況はどうして起こるのか?円高や金利の低下、増える国の借金などによって、日本経済はこれからどうなってしまうのか?日頃、疑問に思っていても、なかなか分かりづらい経済事象を、テレビや新聞でお馴染みの真壁昭夫教授が解説します。番組では人間が陥りやすい非合理的な心理に注目し、ノーベル経済学賞も受賞した新しい経済学の潮流=「行動経済学」、「行動ファイナンス理論」の考え方を紹介します。後半では日本経済、信州経済を取り巻く状況を解説、展望しながら、経済を読み解く面白さを伝えます。
第6回 2月26日(土)15:00~15:30
カーボンナノ空間中の分子の世界
窒素や酸素分子の数倍の大きさのカーボンナノ空間の、分子やイオンにする不思議な作用とその応用の可能性を紹介します。活性炭やカーボンナノチューブは1nm程度の大変小さな空間を多量に持っています。なかでもカーボンナノチューブは分子を強く惹きつける力があります。そのために大気圧の100から10000倍もの大きな圧力で分子やイオンなどが圧縮されているように振る舞います。30℃でさえカーボンナノ空間中の水はガラス状態に近いことが分かっています。また、量子的な揺らぎのためにナノ空間を利用すると、分離が難しい水素と重水素を効率よく分けることができ、核融合の燃料になる重水素を取りだすのに有望です。さらに大きな分子であるメタンの同位体についても分離ができそうです。これらのカーボンナノ空間の特別な作用を、クリーンエネルギー技術に発展させる試みが進行中です。