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研究ハイライト

  1. 北九州市でナノカーボン膜の海水淡水化実証試験を開始 信州大学アクア・イノベーション拠点(COI STREAM)
注目の研究
2020年4月3日(金)

北九州市でナノカーボン膜の海水淡水化実証試験を開始 信州大学アクア・イノベーション拠点(COI STREAM)

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 信州大学アクア・イノベーション拠点(COIプログラム)は、福岡県北九州市にある「ウォータープラザ北九州」に海水淡水化パイロット試験設備を設置。
 2019年10月から本格的に、拠点で開発したナノカーボン膜の海水淡水化実証試験を開始しました。
 システム全体で一日11トンほどの真水を海水から作り、およそ1年をかけて、脱塩性や透水性、耐汚濁性などの膜の性能や運用コストを検証します。
 また試験中のロバストカーボン複合膜以外にも、セルロースナノファイバーなどの様々なナノ材料を使用した膜でも同様の海水淡水化実証試験を行うほか、ウォータープラザ北九州に隣接する北九州市日明浄化センターの下水処理水を用いた再生処理実証試験も実施する計画です。

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第120号(2019.11.29発行)より

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①「ウォータープラザ北九州」は海から200メートルほどの距離にあり、実海水を使った実証試験が行える国内唯一の公共の施設で、関門海峡に面した取水口から海水をくみ上げています。

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②この一角のテストベッドに設置した信大パイロット試験設備では、信大開発膜を使った系統と、市販膜の系統の2系統を同時に運転し、実際の海水を使った比較評価を行い、開発膜の優位性を実証します。

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③取水口からくみ上げられた海水は、施設内の前処理装置でごみや不純物を取り除いたあと、パイロット試験設備へと運ばれ、水槽、保安フィルターを経て、ベッセルという筒状の圧力容器に通します。

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④このベッセルの中には逆浸透膜(RO)モジュールが装填され、高い圧力をかけて海水をモジュールに通し、膜を透過させることにより海水から真水を取り出します。

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⑤ナノカーボン膜を搭載したモジュール
現在、信大開発膜の系統のベッセルには、カーボンナノチューブ(CNT)を高分子のポリアミド(PA)に混ぜたロバストカーボン複合膜をロール状に巻いたモジュールが装填されています。

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⑥ナノカーボン膜の高透水性
画像はナノカーボン膜における水分子移動現象。CNTを混ぜるとPA分子がCNTに沿って配列(黄色の矢印)し、水分子はCNTに沿って移動(緑色の矢印)するため透水性が向上します。また、PAからCNTに電子が移動して帯電するため、不純物が膜内部に侵入することを防いで塩分除去率も向上します。

ナノカーボン膜適用のコスト削減試算

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 ロバスト(頑強)性などのナノカーボン膜の特性を生かし、真水の高回収化、前処理簡易化、省エネルギー化の3つによる低コスト造水システムを構築。試算では、ナノカーボン膜を適用することで、従来の造水システムより3割程度のコスト削減が期待できます。

汚れが付きにくい膜とスペーサの開発に成功!

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 画像は信大開発のロバストカーボン複合膜、実験室で調製したPA膜、市販膜それぞれで耐汚濁性試験を行い、汚染物質(緑色部分)の付着を評価したもの。
 信大開発膜への汚れの付着は他の2つに比べて著しく少なく、優れた耐汚濁性を示しています。さらに、海水の原水中に含有する天然有機物に対し、優れた耐汚濁性を有する革新的なスペーサ(膜と膜の間に挟み海水を通しやすくする部材)として、一般的な材料のポリプロピレン(PP)とCNTを複合したCNT/PP複合原水スペーサの開発に成功。
 膜とスペーサとの相乗効果で、処理装置の中でスムーズな水の流れを維持することができます。