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研究ハイライト

  1. CFMDの下里准教授らの研究グループが乳酸菌オリゴDNAを腸まで届ける経口用ナノカプセルを開発
注目の研究
2018年3月23日(金)

CFMDの下里准教授らの研究グループが乳酸菌オリゴDNAを腸まで届ける経口用ナノカプセルを開発

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信州大学 菌類・微生物ダイナミズム創発研究センター
センター長 下里剛士

 優れた免疫調節作用を有する乳酸菌由来のオリゴDNA(DNA短鎖)を胃液に溶けず腸まで届ける「DNAナノカプセル」を開発し、オリゴDNAの経口摂取という新しい応用展開に向けた道を拓きました。将来、乳酸菌オリゴDNAを有効成分とする家畜飼料や機能性食品への応用が期待されます。


 近年、乳酸菌やビフィズス菌をはじめとしたプロバイオティクス(人体に良い影響を与える微生物)は、感染予防、抗アレルギー効果、炎症抑制作用に関する研究が進展しており、農学と医学の境界領域として注目されています。私は、プロバイオティクスによる免疫力増強効果に関する研究を行って参りました。その過程で、プロバイオティクス由来のゲノムDNAや、DNA断片(オリゴDNA)が免疫機能性を有することを見出しました。

 オリゴDNA(DNA短鎖)は、これまでに様々な動物試験を経て、優れた免疫機能を有していることが分かっていましたが、経口的に摂取すると、胃液や消化酵素の影響により分解されてしまうという弱点があり、注射器を用いて静脈や組織に直接注入する方法が一般的でした。そのため、オリゴDNAを有効成分とする食品や家畜飼料に応用するには、注射に代わる簡便かつ安価な投与方法を開発することが課題でした。
 私の研究グループでは、注射に頼らない「食べるオリゴDNA」の実現を目指し研究を進め、オリゴDNAをカルシウム性ナノ粒子に包摂した腸まで届く「DNAナノカプセル」の開発に成功しました。また、免疫抑制型オリゴDNAを用いたDNAナノカプセルの経口投与により、アトピー性皮膚炎の発症を抑制できることをマウスの実験で発見しました。これは、オリゴDNAの弱点である胃液の問題を克服し、腸に到達したオリゴDNAにより、免疫が活性化されたことを初めて示したものです。現在、乳酸菌オリゴDNAを有効成分とする家畜飼料や機能性食品への応用に向けて、引き続き研究を行っています。