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卒業式 学長告辞

令和2年度卒業式・学位記授与式学長告辞 (2021年3月)

  この映像は令和3年3月23日信州大学長野地区卒業式・学位記授与式(工学部)での学長あいさつを収録したものです。




 何時にも増して寒かった冬が終わり、信州の地に降り注ぐ日差しに春の暖かさを感じるようになりました。本日ここに卒業生・修了生の皆さんと共に、令和2年度信州大学卒業式・学位記授与式を挙行できますことは誠に喜びに堪えないところであります。

 令和2年度学部卒業生の皆さん、ご卒業誠におめでとうございます。大学院修了生並びに学位を取得された皆さんにも心よりお祝いを申し上げます。また、本日まで立派にご子息・ご息女を育ててこられたご家族の皆様にも、心よりお祝いを申し上げます。

 今、皆さんの胸中には、在学中の様々な思い出が去来しておられることだろうと拝察いたします。これまでには、楽しかったことばかりでなく、苦しかったこともたくさんあったことでしょう。特に、コロナ禍での卒業研究や学位論文の作成には大きな苦労があったことと思います。それらを乗り越え、本日、卒業・修了・学位取得を迎えられましたことに対し、心よりお祝い申し上げます。

 今日までのさまざまな思い出と新生活への希望を胸に、明日からはそれぞれの道へと旅立っていきます。これから新たな道へ歩んでいけるのは、これまでの皆さんの努力によることはもちろんですが、ご家族の方々をはじめ、諸先生方、学友たちといった多くの方々の温かい愛情と限りないお力添えのお陰だということをどうか忘れないでいただきたいと思います。それぞれの分野で学んだことを今後の人生に活かし、信州大学卒業生・修了生としての自覚と自信を持って今後の人生を送っていただきたいと思っております。

 さて、この一年を振り返りますと、2020年4月に緊急事態宣言が発出されたため、前期の授業については、開始を遅らせた後、Web講義形式で開始しました。緊急事態宣言の解除後、6月からようやく三密を避けた形で実験や実習等を始めました。後期の授業に関しても大人数の授業はWeb講義にし、三密にならない少人数の授業に関して対面で行いました。信州大学のe-Learningシステム「eALPS」やZoom等のテレビ・Web会議ツールを駆使し、オンデマンド型、同時配信型、あるいは、それらと対面型を組み合わせたハイブリッド型で行ってきました。研究室やゼミにおけるやりとりにも様々な工夫が凝らされました。感染防止をした上での卒業研究や学位論文作成に向けた取組は、これまで以上に大変だったと思います。皆さんひとりひとりの感染防止に対する努力と協力があってはじめてキャンパスの安全・安心が守られたと強く感じています。卒業・修了後も社会の一員として、自分自身の行動を律する必要があります。それぞれの場面にふさわしい行動をとるようお願い致します。

 この様に模索しながら行ってきた中で、人と人とが対面で接触する場、特に、学生同士が交流する場の重要性を強く感じています。信州大学が信州の地に根を張ってきた意味、そこに全国各地から学生が集まる意味、全学部の学生が一年間とはいえ松本で学修する意味、場としての意味もまた重要です。卒業あるいは修了する皆さんには、場の意味を今一度考えていただきたいと思っております。

 ところで、皆さんは「渋沢栄一」という人物をご存知でしょうか。2024年上半期に一新される一万円札の肖像になる人、2021年2月から始まったNHKの大河ドラマ「青天を衝け」の主人公としてご存知の方も多いかと思います。また、渋沢の講演の口述をまとめた「論語と算盤」を読んだ方もいるかと思います。江戸時代末期に生まれ、激動の時代に数多くの会社を設立し、「近代日本資本主義の父」「実業の父」とも呼ばれています。コロナ禍という彼が生きた時代とは違った意味の激動の時代に彼の生涯を学ぶ意味があるのではないでしょうか。

 大河ドラマのタイトル「青天を衝け」は、渋沢自身が18歳の時に現在の長野県佐久市にある内山峡で詠んだ漢詩の一節に由来しています。この漢詩には、渓谷美に感動した様子と非常に困難な時代を切り開こうとする心意気が見て取れます。渋沢に関する著作は多く発刊されていますが、ここでは、明治大学齋藤 孝教授が執筆した「渋沢栄一と『論語と算盤』」から三点皆さんに紹介したいと思います。一点目は、「本質直感力」です。渋沢は瞬時に物事の本質を捉える力が優れていたと言われています。皆さんも既成概念にとらわれずにものを見る力、本質直感力を鍛えて下さい。二点目は、「逆境力」です。渋沢は、「逆境というのは必ずあるものだから、先ずはそれが人為的な逆境なのか、自然的な逆境なのかを区別しよう」と助言しています。自然的な逆境の場合には、耐えていく中で逆境力を鍛えて下さい。三点目は、「知・情・意のバランス」です。「知」は知性や判断力、「情」は人に対する思いやり、「意」はこれをやり遂げるのだという意志です。これら知・情・意がバランスよく発達している人が常識のある人間と言っています。ぜひ知・情・意のバランスを大切にして下さい。

 コロナ禍で不安に心を痛めているとは思いますが、逆境力を鍛え、将来に対して良いイメージを自ら描いて自分の信じる道を歩んでいって下さい。皆さんが高い知性と判断力、思いやる心、強い意志を持って、将来の人類社会のために頑張ってくれることを期待しております。それぞれの道で、最善を尽くし、活力のある社会を創るために信州大学卒業生・修了生としての自覚と自信をもって活動して下さい。結びに当たり卒業生・修了生諸君の社会でのご活躍を心より祈念し私の告辞と致します。

令和3年3月
信州大学長 濱田 州博