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令和3年度入学式学長式辞

  1. 令和3年度入学式学長式辞

令和3年度信州大学入学式学長式辞(2021年4月)

  この映像は令和3年4月4日令和3年度信州大学入学式(第1部)での学長あいさつを収録したものです。




 天空(そら)に切り立つアルプスの光る白峰にも、深き歴史の森を越え時代(とき)を旅する信濃の風にも、春の気配を感じるようになり、新たな門出にはふさわしい季節となりました。本日ここに新入生並びにご家族の皆様にご出席いただき、令和3年度信州大学入学式を挙行できますことは誠に喜びに堪えないところであります。

 信州大学人文学部、教育学部、経法学部、理学部、医学部、工学部、農学部、繊維学部に入学された皆さん、ご入学誠におめでとうございます。昨年初頭から新型コロナウイルスが感染拡大し、皆さんの受験勉強にも少なからず影響したと思います。この様な状況下においても大学進学に向けて一生懸命に取り組んできた皆さんの努力に敬意を表すると共に、暖かい愛情を持って皆さんを支えてこられたご家族の方々をはじめ関係するすべての皆様に祝意を表したいと思います。

 大学における新たな生活に対しては期待や希望があるとともに不安もあるかと思いますが、皆さんがこれまでに培ってきた力だけでなくこれから様々な力を身につけていただき、有意義な学生生活を送っていただければと思っております。そのために、教職員一同でお力添えできればと思います。

 さて、昨年度を振り返りますと、年度初めの4月に緊急事態宣言が発出されたため、前期の授業については、開始を遅らせた後、オンライン講義形式で開始しました。緊急事態宣言の解除後、6月からようやく三密を避けた形で実験や実習等を始めました。後期の授業に関しても大人数の授業はオンライン講義にし、三密にならない少人数の授業に関して対面で行いました。信州大学のe-Learningシステム「eALPS」やZoom等のテレビ・Web会議ツールを駆使し、オンデマンド型、同時配信型、あるいは、それらと対面型を組み合わせたハイブリッド型で行ってきました。本年度もその時々の感染状況を十分に考慮して授業等を行っていく必要があり、様々な授業形態を組み合わせて行っていく予定です。皆さんには一日も早く様々な方式の授業に慣れていただきたいと思っております。

 オンライン講義でも教育効果があることは分かってきましたが、その一方で、人と人とが対面で接触する場も重要だと強く感じています。信州大学が信州の地に根を張ってきた意味、そこに全国各地から学生が集まる意味、全学部の学生が一年間とはいえ松本で学修する意味、場としての意味もまた重要です。北は北海道から南は沖縄まで全国各地から学生が集っています。コロナ禍で少なくはなっておりますが、世界各国からの留学生も在籍しています。それぞれの地域文化を背景に育った学生と接触できるのも信州大学の大きな特長です。感染には十分に気をつけた上でぜひ一人でも多くの友人と出会って下さい。

 また、様々な学部の学生が一緒になって横断的に学べるように、教育プログラムの改編に取り組み、平成29年度から「全学横断特別教育プログラム」を開設致しました。このプログラムは、意欲のある学生が自らの専門領域での学修に加えて、専門分野を超えた知や分析視点を獲得し、学術に対する深い理解と経験を養うための学習機会を提供するものです。信州大学独自の履修認定制度で、学士課程の学生を対象とし、全学横断的に実践学習・実践活動等を行う授業が用意されています。履修コースとしては、平成29年度に「ローカル・イノベーター養成コース」を、平成30年度に「グローバルコア人材養成コース」を、令和元年度に「環境マインド実践人材養成コース」を開設し、履修登録した学生が熱心に勉学に励んでおります。本年度から「ストラテジー・デザイン人材養成コース」と「ライフクリエイター養成コース」を増設しました。ストラテジー・デザインは、戦略を立てることを意味し、総合的・長期的な視点から計画を練ることを示しています。このコースでは、データ・サイエンスの基本となる思考や視点、リテラシーの獲得及びその実践を主たる学びと位置づけ、様々な課題に対して戦略を練ることができる人材の育成を目指しています。ライフクリエイターは、情報によって組織や社会に操られずに、自らの人生を創造できるAI人材と考え、データ・サイエンスやAIの一般的なスキルを有する人材、学際協働力を有する人材、社会実装力を有する人材の育成を目指しています。どちらのコースもデータ・サイエンスやAIを基盤としており、すべての専門分野で今後必要となる基盤的な能力を培うことができます。ぜひこれらのコースに挑戦して下さい。

 ところで、皆さんは、内村鑑三という人物をご存知でしょうか。1861年に上州高崎藩士の長子として生まれ、札幌農学校で思想家の新渡戸稲造、植物学者の宮部金吾、土木工学者の廣井 勇らと学んだキリスト教思想家です。福音主義信仰とそれから導き出される思想に一貫して基づいて行動した人です。内村の代表的著作である「代表的日本人」に関しては、NHK「100分de名著」で批評家・随筆家である若松英輔氏が解説され、「内村鑑三 代表的日本人~永遠の今を生きる者たち」と題した本にまとめられております。この本に記述されていることについて少しお話ししてみたいと思います。先ず「代表的日本人」が英語で出版された点です。新渡戸稲造の代表的著作「武士道」も英語で出版されていますが、明治時代に世界を意識した発信が行われていた点は非常に重要かと思います。皆さんも発信する機会がこれから多くなると思いますが、是非世界を意識した発信を心がけて下さい。

 次に「代表的日本人」の内容ですが、5人の人物について記されています。明治維新に尽力した西郷隆盛、出羽国米沢藩主の上杉鷹山、農政改革者・思想家の二宮尊徳、儒者の中江藤樹、鎌倉時代の僧である日蓮です。内村は、5人の生き様や考え方を自分自身と重ね合わせながら記しています。その中で皆さんに紹介したい箇所があります。西郷隆盛自身の言葉を引用したところです。「機会には2種ある。求めずに訪れる機会と我々の作る機会である。世間でふつうにいう機会は前者である。しかし、真の機会は、時勢に応じ理にかなって我々の行動するときに訪れるものである。大事なときには、機会は我々が作り出さなければならない。」機会が訪れるまで待つことは非常に大事だと思いますが、自ら機会を作らなければならないときもあります。漫然と生活していると機会を見逃すこともありますし、ここぞというときに機会を自ら作ることができないことがあります。是非機会を見逃さないような学生生活を過ごして下さい。

 そして、「代表的日本人」の読み方について、若松英輔氏は、5人の生涯を内村と同じように考えるのではなく、自分自身の捉え方をすればよいと述べています。さらに、自分の代表的日本人を書くことすらできると記しています。内村にとって西郷は時代的に重なっていますが、5人とも歴史上の人物として描いています。皆さんも歴史上の人物や実際には会えない人物とバーチャルに出会うことはできます。先ほどリアルに多くの友達と出会って下さいと申し上げましたが、バーチャルにも様々な人と出会い、その人の生き様や考え方から学んでいただきたいと思います。ここで取り上げたのは、内村が考える代表的日本人ですが、もちろん皆さんは世界中の様々な国の人々と出会えると思います。リアルにもバーチャルにも様々な人との出会いを大切にし、自分自身の代表的地球人を描けるようになっていただければと思っております。

 結びに、皆さんが、信州の自然豊かな環境で、多様な文化や習慣を持つ様々な地域で育った仲間とリアルに交流する機会を見逃さず、バーチャルな出会いも大切にし、積極的に種々の力を身につけ、世界で活躍する人材として巣立っていくことを祈念して、私の式辞といたします。

 ご入学誠におめでとうございます。

令和3年4月4日
信州大学長 濱田州博