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信州大学長期ビジョン"VISION2030"

  1. 信州大学長期ビジョン"VISION2030"

【1】「VISION2030」策定にあたって(2019年6月)

 世界はこれまでにない速度で変貌を続けており、未来社会に対しては期待と共に不安も渦巻いています。我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱されている超スマート社会Society5.0では、様々な革新技術(第4次産業革命)により人類が経験したことがない環境で活動することになります。そのような社会で必要とされる人材を育成し、高等教育機関として目指すべき姿を展望するため、信州大学創立70周年を機に信州大学長期ビジョン"VISION2030"を作成しました。

 一方、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」には、国際社会全体の開発目標として、持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)が掲げられています。信州大学も2030年に向けて取り組んでいくべき目標が多く含まれています。また、中央教育審議会が2018年11月にまとめた2040年に向けた高等教育のグランドデザイン(答申)では、必要とされる人材像と高等教育の目指すべき姿を示し、多様性と柔軟性のある教育研究体制の構築、教育の質の保証と情報公表の推進、18歳人口の減少を踏まえた高等教育機関の規模や地域配置の在り方が謳われています。この答申を考慮しながらも、SDGsで設定されている目標年や変化の速さも考え、2030年に向けたビジョンとしました。

 長野県で唯一の国立大学法人として、地域の産業界や地方公共団体等とビジョンを共有しながら歩んでいけることを期待しています。

【2】予想される環境変化と現状認識

 AI やIoT といった第4 次産業革命が生み出すデジタルテクノロジーの進化は,世界の在りようを根底から変えようとしています。SNS を介したグローバル化・ボーダーレス化の進展と,留まるところを知らない先鋭化の連鎖とが相まって、現代社会はまさに未来を見通せない時代を迎えています。1990 年代のインターネットの登場によってビジネスモデルに対して大きな変革が起きたように、AI の社会実装によりBI(ビジネス・インテリジェンス)が飛躍的に進化することで、社会全体の流れが変わり、人の持つ価値観までも変化させてしまう時代が到来しようとしています。

 一方で、我々が暮らす信州に目を向けると、交通のアクセシビリティー上の問題など,社会インフラやサービス面において中山間エリア特有の課題が多く存在しています。また、65 歳以上の高齢者人口がピークを迎えると推定される2040 年には、信州では働き手が約34 万人減少し、高齢者の割合が40%台になるなど,2040 年問題の影響に待ったなしの状況です。

 このような時代だからこそ、その状況を未来創造のためのチャンスと考え,市民・自治体・企業・大学各々の垣根を取り払い各自が持つ「知」を結集し,百年千年続く文化・文明が信州で創発するよう,価値創造のための仕組みを実現することが,信州大学の果たす役割です。

  1. 予想される環境変化
    1. Society5.0,第4次産業革命の進行
    2. 広い分野でのSDGsを目指したプロジェクトの進展
    3. 生産年齢人口減少、少子高齢化の加速
    4. 社会全体におけるグローバル化と多様性を受け入れる社会システムへ
    5. 人生100年時代
    6. 広域交通ネットワークの充実
    7. 高等教育を取り巻く変化
      多様な価値観の集まるキャンパス
      教育の質の保証と情報公表
      文系・理系の区別にとらわれない,新しいリテラシーに対応した教育
      初等・中等教育からの接続を意識した高等教育における「学び」の再構築
      地方創生,地域を支える人材の育成
      18歳人口の減少を踏まえた大学の規模や地域配置
      高等教育の新しい役割としてのリカレント教育の進展
      大学施設の維持管理
    8. グローバル化
    9. 労働環境の変化
      終身雇用制度の規制緩和
  2. 本学の特色及び取り巻く現状
    1. 地域に軸足を置いた総合大学
    2. PLAN the N・E・X・Tによる積極的なガバナンス改革と戦略的マネジメント
    3. ファイバー・カーボン・バイオなどの世界水準の研究
      ―2030年には我が国屈指の研究大学へ―
    4. 地域活性化を担う大学
    5. 長野県内に点在するキャンパス
    6. 恵まれた自然環境等
    7. 先進医療と国際的医療人の育成
    8. 留学生受け入れと派遣の進展
    9. 「教学マネジメント」の確立
    10. 高大接続への取組

【3】信州大学が目指す姿と、取り組むべき課題

1教育 信州を学び、未来を拓く

  1. 信州ならではの自然・文化・産業を活用した学びを実践します。
  2. 先鋭的研究の成果をもとに、新しい時代を切り拓くための学びの場を構築します。
  3. 生涯にわたる学びに対応できる環境を整備します。
  4. 信州大学から地域、世界へとつながる学びを提供します。

2研究 知の創造をつむぐサイエンスプラットフォームの構築

  1. 独創的な研究を活用することにより、信州の未来社会の価値を創造します。
  2. トランスディシプリナリーの観点から魅力ある研究を推進し、優れた研究者を養成します。
  3. デジタルテクノロジーによって拡張される未来社会に対応した研究を推進します。
  4. 価値創造のための研究開発を加速させ、地域共創社会の形成を目指します。

3社会連携 持続可能な進化型社会連携

  1. 『Co×Creation、Co×Production、Co×Innovation』により、信州全域を未来創発の場にします。
  2. モノ・コト・ヒトづくりから、信州の価値を高めます。
  3. 「創造力」だけではなく「実行力」のあるドゥタンク人材の育成を推進します。
  4. 地域未来変革の駆動力となります。

4グローバル 信州エクセレンスをグローバルに繋ぐハブへ

  1. 海外の教育・研究機関との連携を強化し、海外拠点を中心とした学術交流を活発に展開します。
  2. 大学や地域が有する高度な技術・知見を集積し、イノベーションにより信州から世界への社会実装に繋げます。
  3. 本学の教育・研究、地域連携などの特徴や魅力を、グローバルに発信します。
  4. 海外からの研究者・留学生受け入れ、本学の研究者・学生の海外派遣、外国人人材の地域への就職支援を促進します。

5大学運営 あらゆる変化に柔軟に対応できる大学運営の推進

  1. 社会環境の変化に応じた柔軟な組織運営をします。
  2. 教育・研究の充実のために、多様な財源を確保します。
  3. 個々の教職員が力を十分に発揮するための人事給与マネジメントシステム改革を推進します。
  4. 持続可能なキャンパス環境を整備します。
  5. 長野県内の自治体や企業との連携を強化します。

6医療 大学病院として高度医療および先進医療を安全に提供する

  1. 地域の拠点病院として、高度医療および先進医療を提供します。
  2. 長野県内の医療人を育成する拠点として、生涯にわたり患者さんごとに適切な医療を提供できる医療人を育てます。
  3. 地域医療において、入院から在宅医療まで切れ目のない医療の実現を目指します。
  4. 人生100年時代を迎え、健康寿命を延ばす情報を提供します。