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教育ハイライト

  1. 地域基幹産業を再定義・創新する人材を創出! ENGINEのミッション
注目の教育
2021年7月1日(木)

地域基幹産業を再定義・創新する人材を創出! ENGINEのミッション

COC+R「大学による地方創生人材教育プログラム構築事業」

 地方創生人材の育成を目指した新たな教育プログラム「ENGINE」(地域基幹産業を再定義・創新する人材創出プログラム)が、2020年度より始まりました。キーコンセプトは「創新」「連繋」「突破」。2017年度より実施してきた「全学横断特別教育プログラム」の5コースを履修する学生を対象に、地域の課題に向き合う思考力と実行力の修得を目指します。
 事業基盤は文部科学省「大学による地方創生人材育成教育プログラム構築事業」(略称:COC+R事業)。2019年度に終了したCOC+の後継事業「地(知)の拠点大学による地方創生推進事業」です。信州大学は2013年より始まったCOC事業を含め、一貫して地域貢献を目指す人材育成に取り組んできました。今回も、これまでの基盤を活かした新たなミッションに挑みます。信州大学が担っているミッションは大きく3つ。その背景と目的をご紹介します。(文・柳澤 愛由)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第127号(2021.5.31発行)より

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MISSION1:COC+R事業全体の推進、連携強化による全国への波及

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COC+R事業の幹事校として選定4大学を取りまとめる

 2020年度から始まったCOC+R事業には、信州大学のほか、山梨県立大学、岡山県立大学、徳島大学の4大学が選定されています。信州大学は、この4大学を取りまとめる幹事校に選定されています。シンポジウムの開催や各大学共通した情報発信などを中心となって行うことで、COC+R事業全体を推進する役割を担います。
 COC+R事業は、大学による地域貢献の中でも「人材育成」にスポットを当てていることが特徴です。学卒者や社会人の地元定着・地方就職は地域活性化のために不可欠な要素。信州大学は、一貫して地域貢献を目指す人材育成に取り組んできており、それが幹事校に選定された理由のひとつです。「COC+R事業では、大学が中心となり地域で養成すべき人材像の検討を行いながら、企業や地方自治体などと協働した即効性のある『出口(就職先)』一体型の教育プログラムの確立を目指しています。幹事校として、各採択校の運営をサポートしながら、国内の他大学や企業、学会等とリアル/オンラインでのインタラクティブな情報交換の機会を設けることで各大学の取り組みを横展開し、さらなる事業の発展を目指します」。そう話すのは、COC事業開始当初から、信州大学としての取り組み全体の設計を担ってきた学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)の林靖人教授。
 2021年2月には、4大学が参加したオンラインでのキックオフシンポジウムを開催し、採択された各地域の大学との連携を図りながら、相互に議論を深める取り組みを進めています。

MISSION2:ENGINE-3大学と協働して教育プログラムを開発・実践

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信州大学 学術研究院(総合人間科学系)教授
学術研究・産学官連携推進機構(SUIRLO)
林 靖人

愛知県出身。信州大学大学院総合工学系研究科修了(博士:学術)。専門は感性情報学。修士課程在学中から大学発ベンチャーの立ち上げに参画し、社会調査や行政計画等の策定に従事。信州大学産学官連携・地域総合戦略推進本部長、キャリア教育・サポートセンター副センター長を兼任。研究・教育に関わりながら、地域貢献活動として地域の地方創生総合戦略等の策定や地域活性化活動に多数関わる。

長野・富山・石川、隣県3県で円陣を組み、地域課題に広域で向き合う

 信州大学(事業責任大学)、富山大学、金沢大学、長野県、富山県、石川県、各地域の企業団体等が連携して取り組むCOC+R事業は、「地域基幹産業を再定義・創新する人材創出プログラム「ENGINE」」と名付けられました。学部生を対象に、データサイエンス等のリテラシー、課題分析力、地域資源を掘り起こす感性、固定概念にとらわれない思考力を磨き、「ゼロ」から「イチ」を創り出すための実行力を修得する、約2.5年間のプログラムです。
 本プログラムは、
1. リテラシー強化フェーズ
2. キャリア形成フェーズ
3. 実践力強化フェーズ 
の3ステージから成り、受講生は各フェーズのプログラムを正課の授業として履修します。
 信州大学では全学横断特別教育プログラム(※1)の5つのコースを受講する学部生を対象に、コースと併せて受講することで、自身の興味関心に加え、変化に対応し地域や社会課題に向き合う視点を身に付けます。
 富山大学、金沢大学も、それぞれの特色を活かしたENGINEプログラムを構築。3大学協働科目も設定し、特定の地域にとらわれない発想や連携する力も身に付けます。「大学間のみならず、3地域にまたがる行政、企業などと相互に連携して広域的な産学官連携プラットフォームをつくっていることも大きな特徴であり、ENGINEプログラムのキーであると考えています」(林教授)。隣県3県が“円陣(ENGINE)”を組み、相互の教育資源を活用しながら、地域が持つ課題への対応力・突破力を持った人材育成を目指します。

(※1)自身の専門性に加え、幅広い知識や分析力を持った高度キャリア人材の育成を目的にした、信州大学独自の教育プログラム

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信州大学 キャリア教育・サポートセンター
講師
勝亦 達夫

東京理科大学大学院理工学研究科建築学専攻修了(博士:工学)。2011年小布施町役場に勤務し、景観・まちづくりなどを担当。2016年度日本建築学会賞・教育賞を受賞。同年から信州大学キャリア教育・サポートセンター助教。現在は講師。教育と地域づくりの実践を継続しながら、地域課題を産官学の協働で解決するために活動。専攻は建築歴史・意匠、まちづくり。

信州大学発各種プロジェクトや北陸・信州留学生就職促進プログラム等との連携

 ENGINEでは「交通」、「観光」、「食」、「インフラ(IT技術含む)」分野を地域の基幹となる産業として注目。次代の基幹産業を担う地域企業と協働して、3大学が構築してきた関係性やノウハウなどを活かして取り組みます。受講生は、インターンシップなどを通し、企業人と共に課題に取り組み、実践的な経験と学びを修得することで、キャリアプランを深く考え、将来の就職につなげます。
 特に、信州大学ではCOC+事業から取り組んで来たキャリア形成イベント「しごとーく/大しごとーく」(※2)や富山大学・金沢大学が実施してきた同様の取組を、参加大学での共同・相互乗り入れ事業として設定していることも特徴です。「早い時期から社会とのつながりを持つことで、将来のビジョンやキャリアプランを具体的にイメージできるようになり、学びの動機を高めることにつながると考えています。今回は、それを3県域で横断的・相互乗り入れで実施することが新しい挑戦です」と、キャリア教育・サポートセンターの勝亦達夫講師は話します。3年次に予定しているPBL(ProjectBased Learning)型や課題解決型のインターンシップも同様な形で機会構築を進めています。
 さらに、同時にリカレント教育の観点から地域の企業の経営力や魅力を高める取組と連携する点も他にはない特徴です。信州大学が2018年度から行ってきた「100年企業創出プログラム」(※3)は、リカレント学習/研究員制度を核とした地域企業の成長と人材マッチングをもたらすもので文科省や経産省などでも注目をされています。金沢大学でも同様のフレームワークを活用して独自に実施しており、学生の育成と受入先企業の魅力化を両輪で考えます。この他にも留学生の地域定着支援プログラムもこれまで実施してきており、3大学でこうした取組を連携して実施していく予定です。
 このように、「地域の基幹産業を再定義し、創新する」というテーマのもと、今までにない形で産学官が連携した「出口(就職先)」一体型のプログラムとなっていることが、ENGINE最大の特徴です。

(※2)人材の地域定着の促進を目的とした学生と社会人・企業との交流イベント。低年次から地域企業を知る機会を持つことで、県内企業や地域を知る機会がなく進路選択をしている状況の改善を目指し、2018年から信州大学の学生を中心に実施してきた。
(※3)首都圏の優秀な中核人材に本学の研究員(リサーチ・フェロー)を委嘱し、長野県内の中小企業の課題解決を図るリカレント教育プログラム。

MISSION3:信大独自の教育プログラム連携

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信州大学 キャリア教育・サポートセンター
助教
西尾 尚子
長野県出身。首都大学東京(現 東京都立大学)大学院都市環境科学研究科都市システム科学域博士後期課程単位取得満期退学(博士:都市科学)。東京都立大学大学院都市環境科学研究科を経て2021年より現職。専門は都市空間解析、環境心理。

「全学横断特別教育プログラム」と連携し、専門性を広い視野で活かす

 2017年度から始まった全学横断特別教育プログラムは、ローカルイノベーター養成コース、グローバルコア人材養成コース、環境マインド実践人材養成コースがあり、2021年度には、ENGINEプログラム等の文部科学省事業の採択に併せて「ストラテジーデザイン人材養成コース」、「ライフクリエイター養成コース」の2コースが新設されました。
 ENGINEでは、上記5コースが認定要件としている授業のうち、目的に合致する一部の授業をENGINEプログラムの認定要件としても設定。コースによっては複合的な履修モデルを構成することもできます。
 ENGINEの履修を希望する学生は、まず、1年次前期にスタートアップとして3大学協働科目「地域のトップリーダーを繋ぐ」を受講。地域で活躍する事業者を講師に、地方創生に関わるマインドを学びます。その後、1年次後期では「リテラシー強化フェーズ」から、データサイエンス系科目を含む4単位を取得。同時に、受講生は上記5コースのいずれかに所属します。
 続いて、2年次には「キャリア形成フェーズ」として企業や自治体と連携して実施するPBL科目2単位の受講や課外活動等を行います。ローカルイノベーター養成コースやストラテジーデザイン人材養成コースなどで開設する「プロジェクトマネジメントゼミ」「ストラテジー構築実践」などがそれに相当しています。
 3年次以降「実践力強化フェーズ」では、「課題解決インターンシップ」科目群から2単位を取得すれば、ENGINEプログラムの修了を3大学の学長連名で認定します。
 新設するデータサイエンス系科目は、今後、企業、行政などでも不可欠となってくる分野です。キャリア教育・サポートセンター西尾尚子助教は、ストラテジーデザイン人材養成コースを担当しながら、データサイエンス系科目の授業設計も行っています。「データを活用するにはその取得方法から知らなければなりません。自治体の統計データや、地図・交通データなどを活用して、データを扱うためのノウハウを学ぶ授業を構成していきたいと考えています」(西尾助教)
 これまで社会は人口増をベースに描かれ、安定(固定)したシステム構築を目指してきました。しかし、歴史上にない速度での人口減少、COVID-19による社会変化は、これまでの安定や成長、価値の考え方を揺るがしています。変化への対応力を身に付けることが成長に必要であり、将来の地域社会の在り方を考え続ける、地方創生の新たな駆動力=「ENGINE」となる人材が必要不可欠です。本プログラムに参加する学生が、地域に好循環を生み出す新しいエネルギーとなることを、期待しています。