農学部における教育関係共同利用拠点と地域に密着した実習の展開
信州大学農学部は中央アルプスと南アルプスを望める自然豊かなキャンパスでフィールドとラボワークを融合した教育・研究を進めています。農学部附属アルプス圏フィールド科学教育研究センター(AFC)は構内、西駒、手良沢山、野辺山の4つのステーション(ST)から構成され、多様な自然環境と生産環境に位置し、持続的な農林生産を基盤とした、フィールドにおける実践的教育・研究活動を推進しています。
平成25年、30年に教育関係共同利用拠点(拠点)に認定されたAFC野辺山ST農場は、標高1,350mの野辺山高原に位置します。野辺山高原は、わが国でも有数な高原野菜の産地で、大規模な高冷地・寒地型農業が展開されている地域です。野辺山農場は、先端的な農業技術実習教育に向け、高冷地の野菜、作物と畜産を組み合わせた循環型農業に関する教育・研究および自然環境教育とその現場を教材として取り上げ、「食」や「環境」も視野に入れ、農学はもちろん、看護・人文・福祉学など幅広い分野の他大学生にも実習を提供しています。平成29年度は自他大学生1,820人(延べ人数)に利用いただきました。
AFC農場は、農学部における新品種の普及と支援、あるいは地域連携から開発をめざすブランド化農産物の生産も含め、学生が生産から流通、販売まで参加する6次産業化に関わる実習の拡大を図っています。地域の未利用資源の活用では、演習林で産出される間伐材チップの堆肥化と利用、地元醸造所由来のビール粕、ヤマブドウワイン搾り粕等のサイレージ化による飼料生産を進め、地域に密着した実習素材と研究素材を組み合わせて取り組んでいます。
平成26年に拠点に認定されたAFC演習林は、南信州の里山から山岳地帯に位置し、貴重な自然教育素材を維持しています。演習林は、1,410~2,672mの標高差を有する西駒ST、里山の原生疎林を有し、高冷地野菜生産地に隣接する野辺山ST、実習で管理する演習林としては高収入を得る手良沢山ST、木材加工機械、製材所を備える構内STから構成されています。これら4つのSTでは、自然の成り立ちから山の生業までを同時に、あるいはそれぞれ幅広く学べるフィールド教育の場を提供しており、平成29年度は自他大学生3,178人(延べ人数)に利用いただきました。
AFC演習林は、実効性のある森林経営を持続的に進め、これを基盤として多様な教育、研究を提供し、フィールド整備における管理業務を推進しています。特に、中部森林管理局、根羽村、県林業大学等との連携から、松枯れ対策講習会、森林認証等に取り組みながら、4つのSTが有する特色ある信州の自然環境とフィールドを利用し、地域に密着した実習を提供しています。