
金融犯罪をテーマとした、信州大学と、関東財務局及び長野県警察本部とが連携した特別講義が、平成26年5月27日、信州大学経済学部で行なわれ、経済学部を中心とした約100名が聴講した。講義は「現代経済学特講Ⅱ」で、担当教員の西山巨章(ひろあき)教授(学術研究院(社会科学系))は、学生たちに、金融犯罪の撲滅に向けどのような対応を行なっていくべきかを考えさせるため、財務省関東財務局と長野県警察本部から講師を招き、複雑化する金融犯罪の事例や実際の捜査案件を紹介しつつ、それらの犯罪被害に巻き込まれないよう注意を呼びかけた。
はじめに、関東財務局理財部証券監督第一課長の矢島一郎氏から、私たちの身近に潜む金融犯罪というテーマで、【1】キャッシュカード・通帳などに関する金融犯罪、【2】振り込め詐欺、【3】インターネットバンキングの不正利用、【4】ヤミ金融・偽装質屋、【5】投資詐欺等についての事例が紹介された。
その中でもとりわけ、振り込め詐欺や投資詐欺については、バイト感覚で犯罪に加担する若者が増加していることを挙げ、矢島氏は、学生たちに、まず加害者にならないこと、そして、身近にいる家族や知人も含め、被害者にならないよう普段から連絡を取り合うことの重要性を強調した。
続いて、長野県警生活安全企画課地域安全推進室の碓井英夫室長と齋藤美紀係長が、過去最悪ペースとなった特殊詐欺(電話等を用いて対面しないで金品を騙し取る詐欺の総称)の長野県内における発生状況やその手口、被害者の実情等を紹介した。
齋藤氏は、金融機関からの通報を受け、実際に詐欺被害にあう寸前の高齢者の女性を説得したという捜査事例を紹介。「騙されている」と伝えた齋藤氏に対し、女性は、「相手は人をだますような人ではない。自由に金を使わせてくれ」。そう言って、警察である彼女よりも、犯人の言葉を信じたと言う。「犯人は寂しい老人の話し相手になって、心をコントロールしてしまっていた。このような悪質な犯罪を絶対に許してはならない」。齋藤氏はそう語気を強めた。
金融犯罪の手口はますます複雑化しており、犯人は様々な手段を用いて、相手を騙そうとする。自分は大丈夫、と思い込まずに日ごろから予防線を張り、いざそういった事態に遭遇したら、周囲に相談、一人で判断を急いではいけない、ということだ。
身の周りで起こっている事態を題材に、現場の具体的な事例を挙げた二つの講演に、学生たちは、「自分だけでなく、周りの人たちに注意を促す役割も担わないといけない」などと感想を述べていた。
講義の最後に行なわれた特殊詐欺に関するクイズ大会では、出題される○×クイズに答えながら、講義内容を振り返った。クイズには、特別ゲストとして、長野県警のマスコットキャラクターである〝ライポくん〟がサプライズで登場し、講義を盛り上げた。最後までクイズに正解した7名の学生は、ライポくん、齋藤氏と一緒に記念撮影。
本講義を企画した西山教授は、これまでの授業で、金融の基礎理論を教えてきたが、外部講師を招いて話を聞くことで、基礎理論から一歩進んだ、〝金融社会の現実〟を学生たちに知って欲しかったと話す。
昨年の同講義においては、「金融で地域を元気にできるか」というテーマの回を持ったというが、今回の講義では、そういったプラスの側面だけでなく、金融の持つ負の側面を学生たちに投げかけた。
「自分が被害者にならないようにすることはもちろんだが、将来社会の一員となった時に、それぞれの立場で、犯罪被害を減らすためにどのように関わっていくかを考えてもらいたい」。西山教授はそう力をこめた。
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