
本学卒業生のニラン・カジョンルンシン氏が平成27年2月3日(火)、母校である本学を訪れ、経済学部の学生らに向け、「日本留学成果を母国タイの経済発展に生かす」と題した講義を行った。ニラン氏は、1992年に本学を卒業した経済学部初期の留学生の一人で、現在はタイで日系企業向けのコンサルタント会社を経営する。
この企画は、「社会に出る前の学生に、もっと外の世界にも目を向けてもらいたい」と、金早雪 学術研究院教授(社会科学系)が中心となって働きかけて実現したもの。「グローバル卒業生に学ぶ社会人基礎力」の講義の中でこれまでにも2回、独立行政法人国際協力機構や、NHKのソウル支局で働く卒業生を講師として招いている。また、一連の企画の中で、長野県内で働く留学生OBの職場訪問も実施されている。
「大学時代、細かい気配りや責任感など、日本人の礼儀や考え方を学んだことは、現在の仕事でとても役立っている」。ニラン氏は、車椅子の人を配慮して設計された建物や、日本人の時間を守る習慣などを例に挙げ、留学生活中に日本人の発想に触れたことが現在に強く生かされていることを話した。
参加した学生から「タイに進出している日系企業で成功する会社と失敗する会社の違いはどこか」という質問が出ると、「タイの文化に溶け込めるかどうかが重要。日本の文化をそのまま持ってきても失敗する」と、進出する側が、異文化に適合して新たな形を生み出すことの大切さを語った。
製造業を中心に、タイに進出している日系企業の数は多い。福利厚生面が充実していることから、日系企業で働くことは現地の人らにとって1つのステータスでもあると言う。ニラン氏は学生たちに向かって、「ビジネスチャンスは国内だけにあるわけではない。海外にも大きなチャンスがたくさんあることを知ってほしい」と、強く呼びかけた。
ニラン氏の講義の前に、経済学部2年の高島希望さんと間宮須弥子さんから、2014年の10月に約1週間に渡り実施されたモンゴル研修の成果報告が行なわれた。研修では、異文化理解の促進や国際的な視野を得ることを目的に、現地企業で活躍する信州大学卒業生へのインタビューや、新モンゴル高校の学生に対するプレゼンテーション等が行なわれた。
これらの研修を通し彼女らは、英語力や積極性、コミュニケーション能力などの重要性を学んだと話した。高島さんは「世界で活躍する信州大学の先輩らは、本当に素敵だった。今自分に何が足りないのかを実感する素晴らしい体験になった」と述べ、また須山さんは「モンゴルの学生たちは皆とても学習意欲が高く、輝いて見えた。彼らと出会ったことは良い刺激になった」と、それぞれこの研修から多くを学び、有意義な経験となったことを実感をこめて語った。
本講義には、ニラン氏の他に、本学OBで現在は中国の対外経済貿易大学で准教授として働く劉慶彬(リュウ ケイビン)氏も同大学の学生を連れて参加。劉氏は、「対外経済貿易大学と信州大学の学生同士の交流を図りたい」と述べたうえで、「それが留学生活を過ごした信大への恩返しだと思っている」と語った。学生たちからは、日本に来て感じたこと、印象に残ったことなどを含む簡単な自己紹介も行なわれた。
講義後、金教授は「様々な立場の人が入り混じる講義となり、学生たちも多くのことを学べたのでは」と語った。
また、講義を受けた学生は、「海外勤務のある職につく予定のため、就職前に貴重な話を聞けて良かった」と感想を話した。
大阪市生まれ
1986年3月に大阪市立大学大学院後期博士課程を修了し、同年4月、信州大学経済学部赴任。
現職:社会科学系(経済学科)教授
専攻:経済発展論、韓国の経済・社会政策著書:『グローバル・エコノミー』(共著、有斐閣)、『韓国における社会保障の形成』(近刊、新幹社)など。
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