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  1. 国連総会併催サイエンスサミット2025で水とエネルギーの未来を提言
国際交流
研究
2025年9月19日(金)

国連総会併催サイエンスサミット2025で水とエネルギーの未来を提言

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中村宗一郎学長による挨拶

2025年9月16日、第80回国連総会に合わせて開催された「サイエンスサミット2025」で、信州大学が日本の大学・研究機関の先陣を切りセッションを主催しました。地球規模の課題である水問題とエネルギー問題に対し、同大学が開発した革新的な「アクア・リジェネレーション技術」を紹介し、持続可能な未来への具体的な道筋を示しました。
セッションは中村宗一郎学長の挨拶で始まり、本学が2024年に設立した「アクア・リジェネレーション共創研究センター(ARCH)」を中心に、先端材料による安心・安全な水資源の供給と、人工光合成によるグリーン水素製造という2つの分野に注力していることが紹介されました。「科学と社会を結びつけ、国や学術分野を超えて行動を起こす」という力強いメッセージが発信されました。

基調講演の第一部では、手嶋勝弥アクア・リジェネレーション機構長/卓越教授が、世界の深刻な水問題について言及しました。「地球の限界(プラネタリー・バウンダリー)」の9項目のうち6項目が既に限界を超えており、水がその多くに深く関わっている危機的状況を訴えました。解決策として、有害な重金属やフッ化物イオンを選択的に吸着・除去できる革新的な結晶材料「信大クリスタル」を紹介しました。この技術はアフリカの深刻な水問題の解決にも貢献しています。特に、高濃度のフッ化物イオンによる水汚染により子どもの骨の変形といった健康被害が多発するタンザニアのレマンダ村では、2023年に信大クリスタルを用いた浄水プラントを設置し、地域で初めて安全な水の供給を実現しました。現在はタンザニア水研究所と連携し、実証研究を続けています。

続いて、堂免一成特別栄誉教授が、二酸化炭素を排出しないエネルギー源として期待されるグリーン水素製造の最先端研究について講演しました。従来の太陽電池と電解槽による製造法が高コストであるという課題に対し、堂免教授のチームは特殊な粉末状の光触媒を水に混ぜ、太陽光を当てるだけで低コストかつ大規模に水素を製造できる画期的なシステムを開発しました。すでに世界最大級となる100平方メートルのプロトタイプで実証に成功しており、現在は長野県飯田市・松本市と連携し、商業化を見据えた約5,000平方メートルの大規模システムの建設を進めています。数年以内に産業界が商業化の目安とする太陽エネルギー変換効率5%の達成を目指していると、その実現可能性と将来性を示しました。

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パネルディスカッションでは、ファシリテーターのSUNDRED株式会社上村遥子氏の進行のもと、タンザニア水研究所のアダム・O・カリア所長が登壇しました。タンザニアでは約1,500万~2,000万人がフッ化物イオンによる水汚染の影響を受けている現状を説明し、信州大学との連携への強い期待を表明しました。カリア所長は、「水がなければ、より良い世界はありえない。私たちは一つの世界、一つの民であり、互いに協力すべきです」と述べ、若い世代に対して「あなたたちの専門知識が必要だ」と国際協力への参加を強く呼びかけました。
本セッションは、日本の大学が持つ最先端の科学技術が、国境を越えた人々の連携によって地球規模の課題を解決し、持続可能な未来を創造する大きな可能性を具体的に示す場となりました。

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(左から)手嶋勝弥 卓越教授/アクア・リジェネレーション機構 機構長、アダム・O・カリア タンザニア水省 水研究所 所長、中村宗一郎 学長、上村遥子 SUNDRED株式会社 CHIEF INTERPRENEUR ENGAGEMENT OFFICER/チーフエバンジェリスト、堂免一成 特別栄誉教授