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研究ハイライト

  1. 地域の期待と45年の歴史を背負った理学部伝統の諏訪湖研究
2023年11月6日(月)

地域の期待と45年の歴史を背負った理学部伝統の諏訪湖研究

諏訪湖東岸、JR上諏訪駅のほど近くにある理学部附属湖沼高地教育研究センター諏訪臨湖実験所。ここでは、施設に隣接する諏訪湖をフィールドとして、諏訪湖に関する様々な調査研究が行われています。この実験所で、長年行われてきた諏訪湖の定期観測を受け継ぎ、2020年から所長を務めるのが、信州大学学術研究院(理学系)宮原裕一教授です。2001年にセンターに赴任してから日々諏訪湖に繰り出し、20年以上の長きにわたり研究を続けてきた宮原教授に、フィールド研究の醍醐味や、諏訪湖への思いを語っていただきました。

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宮原 裕一

信州大学学術研究院(理学系)教授
理学部附属湖沼高地教育研究センター
諏訪臨湖実験所 所長

PROFILE
1989年 東京理科大学卒業
1994年 東京理科大学大学院薬学研究科博士課程修了
1995年 国立環境研究所 科学技術特別研究員
1998年 国立環境研究所 研究員
2001年 信州大学理学部 助教授、国立環境研究所 客員研究員
2019年 信州大学学術研究院(理学系)教授
2020年 理学部附属湖沼高地教育研究センター
    諏訪臨湖実験所 所長

45年の歴史を持つ定期観測調査

1957年に、信州大学文理学部附属研究施設として発足した諏訪臨湖実験所(何度かの組織改組と名称変更を経て今日に至る)。ここでは、1977年から今にいたるまで45年間、諏訪湖の定期観測が続けられています。2週間に1度(観測当初は10日に1度)、船で諏訪湖へ出かけ水の透明度や温度、溶存酸素量等を計測し、また、水試料や生物試料を持ち帰って分析・観察するというものです。このセンターに赴任してすぐに船舶免許を取得したという宮原教授も、赴任時からずっと、学生と共に、この観測を続けています。「45年以上続いてきた観測なので、学生の皆さんもその重みを感じて、真剣にやってくれていると感じます」とその様子を教えてくれました。

もともと宮原教授がこうしたフィールドワークに興味を持ったのは、中学生時代に化学研究部に所属し、千曲川の水質分析をしていたことがきっかけだそうです。「水質分析で出た結果は、自分が実際に現場に出て、川の水を採取したことで得られたものだ、ということを実感しました。その時その場で自分が手を動かすことによって、はじめて結果が得られる、というところに喜びを感じます」と、宮原教授。諏訪湖の定期観測においても「一見しただけではわからないですが、観測を続けることで、決して毎年同じではない、環境の変化が見えてきます」と話します。

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理学部附属湖沼高地教育研究センター諏訪臨湖実験所

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学生と共に諏訪湖の中心で試料を採取する

地域に愛される研究施設

2017年に始動した諏訪湖水質観測プロジェクト(諏訪地域の課題解決を目指して行われている産学連携プロジェクトの1つ)においては、諏訪湖の水質予測を目標に、諏訪市や漁業組合、民間企業と連携し、諏訪湖の水質をリアルタイムでモニタリングしています。IoTを利用した観測装置を用いて、諏訪湖の水温と溶存酸素量、風量と濁度(風量の観測は2021年より追加で開始)を時間単位で計測、その数値はホームページ上に掲載され、誰でも諏訪湖の現在の様子を知ることができます。

なお、2020年には、同プロジェクトのために信州大学としては初めてのクラウドファンディングを実施。2か月で目標額(100万円)を大幅に超える159万円が集まり、新たな観測装置を作製することができました。

こうした、日々の調査から見えてきた諏訪湖の今の状態を、地域の方々にも知ってもらおうと、毎年7月の第一土曜日には、諏訪臨湖実験所の一般公開を行っています。2022年は、諏訪湖に生息するプランクトンや水草、また諏訪湖で拾ってきたゴミを展示し、それらをテーマに研究している学生が、その場で研究内容を説明しました。
「地域の方が諏訪湖に関心を持たれているのは常に感じますし、クラウドファンディングでも、多くの方に応援していただきました。そうした方々の期待や熱意を感じて、自分だけの研究でなく、地域の皆様に役立ててもらうような研究ができたらいいと思っています」

諏訪地域において、文化、観光、産業などあらゆる面で重要な役割を占める諏訪湖。地域の期待を背負って、研究は続きます。

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写真は湖底の堆積物を採取するための装置。諏訪湖調査のためのあらゆる道具が揃っていてとにかく驚く

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