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教育ハイライト

  1. 信州大学大学院 「サスティナブルソサイエティグローバル人材養成プログラム」8年間の軌跡
2021年4月15日(木)

信州大学大学院 「サスティナブルソサイエティグローバル人材養成プログラム」8年間の軌跡

コンパクトな自律循環システム_4.jpg

 信州大学大学院で2013年から実施してきた「サスティナブルソサイエティグローバル人材養成プログラム」が、2021年3月で8年間の事業期間を終了します。本プログラムは、修士課程の総合理工学研究科、博士課程の総合医理工学研究科と経営大学院、さらに先鋭領域融合研究群先鋭材料研究所(※1)や企業が連携した、修士・博士課程(5年一貫プログラム)の学内版リーディング大学院です。(※1)2019年に環境・エネルギー材料研究所から改称
 2020年12月18日、修了生や関係者を集めたオンラインシンポジウムを開催しました。そこで語られた修了生の言葉をご紹介しながら、8年間の軌跡を振り返ります。(文・柳澤 愛由)

2020.12.18 オンラインシンポジウム開催 
(主会場:信州大学国際科学イノベーションセンター)


・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第126号(2021.3.31発行)より

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(左から) 信州大学 学長 濱田 州博、信州大学大学院博士課程3年次 高 相昊(こう さんほ)さん、プログラム責任者 信州大学学術研究院(工学系) 教授 佐藤 敏郎

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バックキャスティング(※2)で選定したライフラインの自立循環をテーマに、分野横断で臨む高度人材育成

 世界的な人口増によって、エネルギー、水、食料など、人々の生活や経済活動を支える資源の需要が急速に高まっています。一方、人口減少社会を迎えた日本では、大規模な社会インフラの維持は困難であり、今後は自立循環型のコンパクトなライフラインシステムの構築が必要だとされています。
 人々が生きていくために不可欠な資源や社会インフラを将来にわたっていかに確保するかは、世界共通の課題です。本プログラムは、持続可能な社会の在り方を見据え、エネルギー、水、食料問題という3つの課題をバックキャスティングで選定し、サスティナブルライフラインへの転換を実現するグローバルリーダーの養成を目指して始まりました。
(※2)目標となる未来を想定し、そのうえで現在取り組むべき解決策を考える思考法

ライフラインに特化した3つのコース。研究室ローテーションや合同ゼミ、海外研修も行う実践的カリキュラム

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 本プログラムでは、サスティナブルエネルギーコース、サスティナブルウォーターコース、サスティナブルフードコースの3コースを設置しました。履修生は総合理工学研究科(修士課程)、総合医理工学研究科(博士課程)に学籍を持った上で、各コースに所属。専門性だけでなく、異分野の知識や国際性、マネジメント力などを身に付けるため、従来の修士・博士課程教育に加え、研究室ローテーションや合同ゼミ、国内外でのインターンシップ、海外研究留学など、さまざまな分野横断的テーマに取り組んできました。
 1期生の入学を開始した2013年度から2019年度までに、3人が全カリキュラムを無事終え、2020年度には1人が修了予定です。膨大な実践的カリキュラムを終えた修了生たちは、高い専門性に加え、幅広い知識・俯瞰力を身に付け、博士人材としてのキャリアプランを描きながら社会に出て活躍しています。
 SDGsやSociety5.0などが重要視される今、世界的課題を視野に入れた大学院改革は、大学教育における喫緊の課題です。信州大学は、本プログラムの8年の軌跡の中で得られた経験や連携体制を維持しながら、今後も未来の社会で求められる高度人材育成に取り組みます。

履修生・修了生からの報告

オンラインシンポジウムで報告があった 履修生・修了生4人からの声をご紹介します。

信州大学大学院博士課程3年次 高 相昊(こう さんほ)さん

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サスティナブルエネルギーコース履修生

 私はバイオマスとキノコの分解に関わる研究をしています。このプログラムは決して楽なものではありませんでしたが、最後まで走ってこられたのも、先生や仲間たちと垣根を超えた熱い議論とビジョン、夢を共有できたからだと感じています。
 修了後は商用バイオプラスチックの研究に従事できることとなりました。海外研究留学先であるバイオマス先進国フィンランドでは、刺激を受けると同時に日本の遅れも痛感しました。
 ここでの経験をもとに、インフラ、そしていずれは文明を変えていけるような研究に、生涯をかけて挑んでいきます。

パナソニック(株) インダストリアルソリューションズ社 プロセスデバイス革新センター 先端材料・デバイス開発部 開発3課 杉村 佳奈子さん

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サスティナブルエネルギーコース修了

 在学中は磁気部品の研究をしていました。現在は部品製造を行う会社で研究開発に従事しています。学部生の頃から、将来、技術者や研究者になるのであれば、持続可能な社会の在り方を見据える必要性があると強く感じてきました。5年間の中で、研究の応用に関わるデバイスの知識など、異なる分野における経験を得られたことは大きな成果でした。社会に出て、技術全体を網羅的に理解し研究を行うことの重要性をより実感しています。将来は多分野の人をつなげ、未来を見据えた方向性を示せるような人材になりたいと思っています。

大鵬薬品工業(株) 研究本部 (つくばエリア) 第一研究所 第二研究室 千賀 匠悟さん

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サスティナブルフードコース修了

 在学中はガンや脂質代謝に関わる研究をしていました。2020年1月には新しい部署に異動し、想像していたよりも速くプロジェクトリーダーに抜擢され、チームのマネジメントも担っています。プログラムで得た幅広い知識と経験は、直接仕事に活きており、レベルの高い内容であったことを実感しています。
 5年間で磨いた国際性や研究力、物事をアウトプットする能力は、会社での評価につながっています。いずれは、未だ実現していない、ガンを根治できる抗がん剤の開発を目指して、研究開発に取り組んでいきたいと考えています。

(株)デンソー 先進モビリティシステム事業開発部 Pシステム開発室 平野 美也子さん

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サスティナブルエネルギーコース修了

 カリキュラムの中で経営大学院の授業を受ける機会がありました。経営者や部門のリーダーなど、社会で働いている方々の考え方に触れ、将来に対する具体的な目標を持つことにつながりました。海外研究留学では、他国の留学生たちと交流し、彼らが抱く覚悟に触れ、グローバル社会で生きる上での新しい価値観となりました。
 現在、私は主専門の知識を活かし、自動運転技術の開発部署で働いています。このプログラムが目指す持続可能性にも通じる、誰もが住みたい場所に住み続けられる社会の実現を目指し、研究開発に取り組んでいます。