【法制企画部門】
法制企画部門 部門長
学術研究院 社会科学系
准教授 大江 裕幸
「データには様々な可能性がありますが、そこには必ず機密保持契約や知的財産の保護、利活用のルールづくりが求められます。逆に、既存の法制度がデータの利活用の支障となっているケースもあります。法制企画部門は、データの活用には付き物の法整備やルール作りを行うため、法的アプローチから研究を俯瞰し、法律的な課題はないか、またはどのような法的整備が必要かなどを検討していきます」と部門長の大江裕幸学術研究院(社会科学系)准教授は話します。
例えば、ワイン生産で蓄積されたデータを、地域特性を表す基準として表示したりする場合や、生産者や企業が持つ生産情報をオープンにしていく場合、その契約方法、さらには取扱いのルール作りなどの整備が不可欠です。
千曲川ワインバレーを対象とした研究では、地域データを利活用した事業の法的モデルケースを作っていくことになるといいます。データ利活用に限らず、地域社会が抱える様々な課題に対して、法的なアプローチによって、将来を見据えた事業展開を模索していく部門です。
データベースの構築と医療を含むサプライチェーン分析
【経済産業部門】
経済産業部門 部門長
学術研究院 社会科学系
准教授 増原 宏明
経済産業部門には、統計学、数学などの基礎学の研究者と、環境経済学や医療経済科学のほか、医学などの応用科学の研究者も名を連ねます。各研究者に共通しているのは、皆データベースの専門家であるということ。データの解析・分析の専門家達が中心となり、基礎と応用を兼ね備えた数理的な手法で地域社会の課題と向き合っていく部門だといえます。
喫緊のテーマとして挙げられるのは、ズバリ「医療」。日本の社会保障費は年々増大しており、高齢化が進む地域社会では特に深刻な問題となっています。「地域課題の中から、数理的な視点を用いてファクトを拾い出し、議論構築を進めていくのが、本部門の役割です」と部門長の増原宏明学術研究院(社会科学系)准教授。
先述した金本講師が研究するエネルギーサプライチェーンの可視化のように、データ分析の観点から地域の課題解決を図り、新たな価値とブランドの創出も模索します。
ブランド価値の向上と人・社会を動かす仕組みづくり
【地域ブランド部門】
地域ブランド部門 部門長
学術研究院 総合人間科学系
准教授 林 靖人
地域ブランド部門は、人文学部、教育学部などの心理学系の教員が中心メンバーです。「『社会基盤』のもととなるのは人間の動き。何を付加価値として捉え、どのように人は動くのかを科学するのが、我々の分野です」と部門長の林靖人学術研究院(総合人間科学系)准教授は話します。
地域ブランド部門では、法律やデータ解析で他の部門が確立してきたエビデンスをベースにして、それらをどのように表現すれば人は価値を感じ、消費行動に移るのか、といったことを、科学的に測定して検証していきます。
例えば、「フェアトレード」。社会的な課題を解決する目的ではありますが、すでにこれ自体がひとつの付加価値として捉えられています。その他にも、欧米ではエシカル・コンシューマリズム(環境や社会に配慮した工程・流通で製造された商品を選択し、そうでないものを選択しない)という考えが、意識の高い消費行動として認識されています。こうした、「次世代的な価値」ともいえるものを地域の中から拾いだし、その表現方法やプロモーション方法などを、心理学的手法から導き出すことで、新たな「地域ブランド」として確立させていくのが本部門の役割だといえます(図4)。
千曲川ワインバレーを対象とした研究では、従来のラベリング制度では取り扱われていなかった環境負荷へのエビデンスや新たな成分的優位性などが、消費者にとって次世代的な価値を感じさせるものとなるのかどうかを、実験的に検証していきます。
複合的な地域計画の成功事例を研究
【地域計画部門】
地域計画部門 部門長
学術研究院 農学系
准教授 上原 三知
地域計画部門は、農学部を中心に、流域保全、造園学、建築、経済地理学、農業経済学などを専門とする教員が集まる、まさしく社会の空間的基盤となるテーマを扱う部門です。
特に、近年注目が集まる災害にも対応できる街づくりは主要テーマのひとつ。自然災害が多い長野県では特に、レジリエンス(回復力・抵抗力・復元力などの意)の高い土地利用モデルの確立が求められています。
「海外ではグリーンインフラストラクチャーという自然の防災や水質浄化などの力を活用した再開発により、地域の課題の解決と新しい街づくりを両立する手法が注目されています。こうした海外の事例などを自治体などに情報発信しながら、複合的な町づくりを進めることで、空間的観点からの地域ブランド化、地域の魅力づくりにも寄与したいと考えています」と部門長の上原三知学術研究院(農学系)准教授は話します。
他にも、英国の研究で、身近な公園緑地を利用しやすい地域ほど病気の罹患率が低く、医療費が低いという研究事例があります。こうした、街づくりや地域計画的な観点を通して、地域の医療課題と、森林の未活用を総合的に考える自治体との共同研究を期待します。