進化したインターバル速歩 i-Walkシステム産学官金融連携

進化したインターバル速歩 i-Walkシステム

i-Walkシステム

 信州大学とNPO法人熟年体育大学リサーチセンターは、「インターバル速歩」による運動処方の指導・解析を行う新しい遠隔個別運動処方システム「i-Walk System®」を共同開発し、平成26年12月、サービスを開始した。
 もはや国際標準として注目される「インターバル速歩」に「i-Walk System®」を導入することにより、適切に体力が向上されているかどうかを本人がチェックでき、健康維持や医療費削減に役立つと同時に、健康保険組合や自治体等の各保健事業者が、メタボ対策の進捗度合いをビッグデータで確認できるシステムがスタートした。

(文・服部千恵子)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第91号(2014.1.30発行)
インターバル速歩とは

i-Phone アプリを活用した健康管理の新システム
「i-Walk System®」を開発

新型カロリー計

レンタルされる新型カロリー計は、従来の半分以下のコンパクトサイズ。専用アプリでi-Phoneと連動し、データ送信や運動成果の確認ができる。

 3分間の「サッサカ歩き」と3分間の「ゆっくり歩き」を交互に繰り返すだけ。生活習慣病や糖尿病の予防に有効で、しかも手軽な運動法として国内外から注目を集めている「インターバル速歩」。その新しい遠隔個別運動処方システムを開発したのは、信州大学先鋭領域融合研究群バイオメディカル研究所の能勢博教授を中心とした信州大学とNPO法人熟年体育大学リサーチセンターのチームだ。キッセイコムテック(株)( サーバー管理)、オムロンヘルスケア(株) (ハード、デバイス提供)、(株)グラムスリー(アプリ開発)と共同研究を行い、インターバル速歩の活動量を自分で測定できる、新型インターバル速歩専用活動量計「i-Walk Pro®」を開発した。
 発表と同時に、その運動データを解析し、結果とアドバイスをi-Phoneで確認できるi-Phoneアプリ「i-Walk Gym®」をAppストアで無償公開。これらを総合した「i-Walk System®」がスタートした。これまでは松本市、茅野市、上田市など長野県域の熟年体育大学参加者に限られていたシステムが、企業の健康保健組合や自治体等を通して、全国のシステム参加者に提供できるようになった。個人の体力測定や健康診断の結果を解析し、個別の運動状況に専門的なフィードバックを与える。科学的エビデンスに基づくフィードバックとアドバイスがスマートフォンなど携帯端末を通して遠隔で受けられるのが、他の活動量計と大きく違うポイントだ。

遠隔型個別運動処方システムで医療費を2割削減

ITを活用した健康管理新システムの産学官連携

ITを活用した健康管理新システムの産学官連携

 「超高齢化社会に向けて、団塊の世代が天寿をまっとうできる、庶民のための運動処方を」と能勢教授は語る。「i-Walk Pro ®」のレンタル使用料は、1 年間で36,000円(月額換算3,000円)。前身機に比べ格段にコンパクト化し、使用料もコストダウンを図った。誰でも手軽に、安価で運動効果の計測ができ、個人個人の状況に合わせた運動指導が受けられる。
 開発のベースとなったのは、過去13年間に蓄積された「インターバル速歩」を行う5,400人以上のデータベースだ。今後の目標としては、年間1万人、最終的には10万人を目指している。
 インターバル速歩を行う人には、体力の維持・向上だけでなく、医療費の削減という大きな効果が現れている。実際に松本市で、65歳以上の国民健康保険加入者で「インターバル速歩」を行った人と行わない人の医療費を比較した結果、半年で22,901円、市民平均医療費の20%相当の金額を削減する結果となった。(※NPO法人熟年体育大学リサーチセンター調査より)

国際標準となりつつあるインターバル速歩

 インターバル速歩は、いまや国際標準になりつつある。ニューヨークタイムスの「唯一最良のエクササイズ」という特集でも取り上げられ、「ダラダラした運動をいくらやっても効果はない。強度のある運動を短時間でいい」と称賛を受けた。
 その研究には20年の歳月が費やされている。健康増進に効果的と言われていたウォーキングでは筋力、持久力の向上が見込めないことが近年の研究で明らかになり、運動生理学の定説である個人の最大体力の7割以上の負荷をかけることが可能で手軽な運動法として開発された。体力の向上のみならず、骨密度の増加や血圧、血糖値の改善、減量などに効果が表れる。1日30分を週4日の取り組みで効果を実感でき、持続しやすいことも注目の大きな要因だ。
 マシンを使わない運動法である「インターバル速歩」、それを計測する「活動量計」、そして「遠隔型個別運動処方システム」。この3つが揃うことにより、システムはさらにグローバル化する。現在、英語、中国語への多言語サーバーの展開も進行中だ。予防医学のビッグデータ化の時代がすぐそこにある。

予防医学の未来はさらなるグローバルステージへ

能勢 博

能勢 博 (のせ ひろし)
信州大学学術研究院 教授(医学系)
先鋭領域融合研究群 バイオメディカル研究所
先端疾患予防学部門所属 博士(医学)


京都府立医科大学卒業。米国エール大学医学部研究員、京都府立医科大学助教授などを経て、1995年より信州大学医学部附属加齢適応研究センター教授、2003年同大学院医学系研究科教授、2014年より現職。

 「運動ということにこだわっていると限られた視野しか見えてこないが、広げてみると新しい分野が出来てくるのではないか?」と能勢教授は語る。
 遠隔型個別運動処方システムが新しい分野を開発する可能性は多様だ。例えば、全国のデータがサーバーに送られることによって、「ご当地ソフト」ができる。気候、気温、気圧や標高などの位置情報と血圧、血糖値などのデータを解析することで、その地域の特性が検証できる。山の標高に合わせ、登山に適した体力を算定したり、桜前線のように気候変化に合わせた「血圧前線」を作成できたり、検証フィールドとしての可能性はまだまだ広がるポテンシャルを持っている。日本に限らず、アメリカ、中国に導入すれば、アウトプットは民族学や社会学、遺伝学などにも及ぶことになる。
 予防医学は、現在、医学全体の5%にしかすぎないが、今後はまだまだ発展する領域だ。運動処方のマーケットができれば、医学教育の改革にも寄与できる。栄養士、運動トレーナー、保健士とも連携して、信大の中に新しいエキスパートが生まれれば、予防医学のステージはさらに広がるだろう。

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