信州大学繊維学部の学生グループ「桑まるごと活用塾」が、桑の葉を練り込んだかりんとう=「くわりんとう」を商品化した。千曲観光(株)(佐久市)や米持製菓(株)(飯山市)と共同の取組み。平成24年10月6日に上信越道の上り線・下り線双方の東部湯の丸サービスエリア(以下SA:東御市)、中央道の下り線諏訪湖SA(岡谷市)で発売され、好評を博した。
発売に先立って、繊維学部のホームカミングデーが開催された9月29日に、繊維学部内で試食・販売会があり、代表の桜井里奈さん(繊維学部応用生物系3年)ら活用塾のスタッフが、「食べ始めると止まらない味ですよ」「上田の新しい特産品を目指しています」などとPRに励んだ。
使われている桑の葉は繊維学部で栽培されているもの。摘み取り作業から、乾燥、粉末にするための粉砕作業などは活用塾の学生が行い、加工は、かりんとうを製造販売する米持製菓(株)(飯山市)に依頼した。
市販の一般的なかりんとうと比較すると、甘味が抑えられ、桑の葉以外にも胡麻や味噌も練り込まれていることで、それぞれの風味を程よく感じることが出来る。試食・販売会に立ち寄った工学部修士課程の女子学生は「お茶請けとして申し分ない。個人的には牛乳と一緒に食べたら非常に美味しいのではないか」などと話した。
桜井さんによれば、最も苦労した点は桑の葉を混ぜる比率であったという。桑の葉が少なすぎると風味が感じられず、反対に桑の葉が多いと特有のえぐみが出てしまう。米持製菓(株)の担当者らと相談して何度も試作を行なった。
また、販売戦略や、それにふさわしい商品イメージの構築も学生が先頭で担った。“食べだしたら止まらない”というキャッチフレーズ。それをシンボル的に表すマスコットキャラクターの「くわのはぐま」の創出。それらを使ったパッケージデザインや販促用の被り物もメンバーが考え制作したものだ。
「繊維学部の桑を使った商品ということにとどまらない、上田地域の新しい特産品に成長することを願って考えた」と話す。
この取組みは、信州大学の学生・教員の起業・研究開発を支援する全学機関「サテライト・ベンチャー・ビジネス・ラボラトリー(以下SVBL)」がサポートしている。SVBL長の小西哉繊維学部教授は、「2010年5月頃から、長野県の伝統作物の一つであり、繊維学部と関係の深い『桑』を活用した新事業について学生にアイデアを求めていましたが、翌2011年4月に桜井さんらが桑を利用した食品開発に着手。試行錯誤を重ねて本年3月のSVBLの成果報告会で『くわりんとう』の発表にいたりました」と経緯を説明する。
桑の葉を練り込んでかりんとうを作るというアイデアが生まれたのは2011年11月のこと。それまでは、桑の葉を練り込んだパスタやソバなどを試作していた。「どうしても桑の葉特有のえぐみが前面にでてしまう。揚げたらどうなんだろう?っていう思いつきでやってみたら、なかなか良いものができてびっくりしたんです」と桜井さん。
「大学では、それまでもSVBLとは別に桑の葉ジャムを作ったり、桑茶やてんぷらの材料にするなど、色々な試みを行っていたのですが、お菓子にするという発想は学生ならではのものだと思いました。その後の展開も、学生の若いパワーが、自然に周りを巻き込んで行ったという感じです」と小西教授は振り返る。
学生ベンチャー企業の創設にまで進む例もあるが、今回のくわりんとうのように、企業との連携のもとに学生に起業マインドを学ぶ実践の場を提供するのもSVBLの重要な役割だ。
「若いパワー」を象徴する、こんな足取りがあった。3月に「くわりんとう」のアイデアを発表したSVBLの成果報告会が開催されたことは先に触れた。そして、その模様が信濃毎日新聞紙上でニュースとして報道されたのだが、これが大きな転回点となった。
このニュースに触れて「くわりんとう」を知った千曲観光(株)(佐久市)から、同社が営業する上信越自動車道湯の丸SA等での販売を見越して、商品化が提案されたのだ。
思いもかけなかった展開に周囲が驚く中、活用塾のスタッフは、「待っていたチャンスが向こうからやってきた」(桜井さん)とばかりに喜び勇んで商品化に進むことを決めた。そして、かりんとうを製造販売する米持製菓(株)(飯山市)に製造を依頼し、一挙に商品改良を進め、発売にまでこぎつけたのである。
学生が実際に商品化まで進めたのは、SVBLでは今回が初めてのケースだという。
桜井さんとともに取組みを牽引した宮島文佳さん(繊維学部応用生物系3年)は、「桑の葉の比率など試行錯誤の連続で、企業の皆さんに御面倒をおかけしたりしましたが、なんとか発売までこぎつけてうれしいです。販路がもっと広がり、この商品が、上田地域の地域振興につながればうれしいです」と夢を膨らませる。
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