産学官地域連携

信州型グリーン・イノベーション研究の現在

産学官民の連携と総合大学が担う役割

-産学官民の連携と総合大学が担う役割-

成果報告会の様子  地球温暖化、国内における地域間格差、国際競争力の低下などの諸問題を抱え、東日本大震災を経験した日本が、資源・エネルギー関連技術をいかに発展・活用するべきか―、その道筋を示すべく信州大学が推進する「グリーン・イノベーション研究」の支援事業成果報告会が平成24年6月13日、信州大学理学部(松本市)で開催された。
 長野県下唯一の総合大学として信州大学は学内および地域の研究シーズを融合させ、共同研究を牽引する目的で学内研究費による同事業を創設、平成23年度では7件の研究を採択した。それから1年間の研究成果を各方面の研究者が報告し、本学のグリーン・イノベーション研究の課題を確かめ合った。
(文・柳澤 愛由)
・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第76号(2012.7.31発行)より


研究の成果報告に先立って

報告会に先立つあいさつで、三浦義正理事(研究担当)は「大学は一般に、研究を深堀すればするほど『イノベーション』から遠ざかってしまう傾向がある。イノベーションを実現するには、研究者の連携と、関連するプロジェクトと研究を繋げる、『社会実装』のしくみを作ることが重要だ。世の中のしくみを変えていくために、多くの提案と発信をしていく場としたい。」とコメント。続いて、地域共同研究センター天野良彦センター長が報告会の概要を説明、「震災以降のエネルギー問題は、化石エネルギーへの依存から再生可能エネルギーへの転換が重要課題だ。長野県は豊富な資源をもつ。グリーン・イノベーションが包括する分野は幅広く、総合大学である本学が拠点となり、異分野を融合させ、社会システム、評価システムを含む統合化システムをいかに作るかが求められている。」と語った。

三浦義正理事

信州大学理事・副学長
(研究・財務・産学官連携・国際交流担当)
三浦 義正 (みうら よしまさ)

天野良彦教授

信州大学グリーンイノベーション研究会座長
(信州大学地域共同研究センター長)
天野 良彦 (あまの よしひこ)

GREEN INNOVATION

増大するIT機器の消費電力を大幅に削減するLSIパッケージ

採択課題
LSIチップレベルマイクロスマートグリッドを実現するグリーンLSIの基盤技術の開発

発表者
工学部 電気電子工学科 佐藤 敏郎 教授

佐藤敏郎教授

IT機器の消費電力の大幅な削減を目指し、LSIチップレベルマイクロスマートグリッドによる超低消費電力グリーンLSIの基盤技術を開発、小型・薄型で電磁ノイズの少ないプレーナパワーインダクタを内蔵したLSIパッケージ集積化電源について検討した。学内外との共同研究を継続、現在試作段階まできている。

LSIパッケージ集積化電源の試作模式図

LSIパッケージ集積化電源の試作模式図


Siに代る半導体デバイスSiCを高品質に晶出。パワーデバイスの低電力化へ

採択課題
溶液から炭化ケイ素(SiC)晶出の最適化検討と単結晶作製

発表者
カーボン科学研究所 太子 敏則 教授

太子敏則教授

SiCはSi(シリコン)に比べパワーデバイスの低電力化が期待できる。しかし、現在SiCは結晶品質が悪く量産化が難しい。そこで、Si溶液からSiC晶出を検討した結果、溶液下方にSiC基盤を配置することで厚さ数mmのSiC単結晶が成長。今後、大形で長く高品質のSiC単結晶成長のための技術開発を行う予定。

晶出した結晶の組成マッピングの結果のサムネール画像

晶出した結晶の組織マッピングの結果


ナノカーボンを軸に各研究者を結集。高機能・複合化デバイスの構築を目指す

採択課題
ナノカーボンベース高効率光電力貯蔵マイクロデバイスの構築

発表者
エキゾチックナノカーボン拠点 宋 礼 准教授

宋礼准教授

ナノカーボンを軸に、その特異性を理解し、高機能デバイスの構築を目指した。高効率光起電力材料・スーパーキャパシタ技術開発を進め、今後は、カーボンナノシートの構造解析を詳細に行い、電気化学特性との相関を検討する。ナノシートを基盤とした高エネルギー・高出力特性に優れた蓄電デバイスの作製を進める。

ナノカーボンを基にしたファイバー研究

ナノカーボンを基にしたファイバー研究


英国CATの環境デザインから信州型の持続可能な地域モデルの実現を

採択課題
1975年より実践を続けるエコビレッジ英国CAT(The Center for Alternative Technology)に学ぶエコロジカル・デザインおよび環境教育マニュアルの作成と地域展開

発表者
農学部 森林科学科 上原 三知 助教

上原三知助教

英国CATが取り組む環境デザインに着目。応用可能なノウハウと日本の伝統的な環境共生技術に焦点を当て各分野からの留意点を整理、出版物として発行した。CATが実現できなかった地域を巻き込んだ形での持続可能な信州型エコビレッジ創出を目指す。現在、市、NPO、企業との連携をスタートさせている。

信州型エコビレッジのイメージ図

信州型エコビレッジのイメージ図


アグリフォトニクス(光農業技術)で新たな農業経営の形を探る

採択課題
『豊かな緑環境の創造』:光を活用する次世代農業生産技術・管理システムの開発

発表者
農学部 応用生命科学科 小嶋 政信 教授

小嶋政信教授

「植物工場」を未来型農業経営の一つと捉え、そのコスト低減を図った。植物の光応答、管理システム等の開発と研究を行い、全体としての統合化システムの構築を探っている。一方、キノコ栽培の光強度効果について解析を進めた所、キノコ菌糸に青色光刺激を与えるとシキミ酸が増加。大量培養とその効率化を目指している。

7名の研究者でアグリフォトニクスを追求する

7名の研究者でアグリフォトニクスを追求する


微細藻類が作り出す可能性。新たなバイオエネルギーの創出

採択課題
生物機能を活かしたバイオナノマテリアルおよびバイオエネルギーの創成

発表者
理学部 物質循環学科 朴 虎東 教授

朴虎東教授

資源生物として期待されている低水温下で生育可能な微細藻類の機能解析と、生育過程で作り出す炭化水素を機能性材料に変換するシステム開発研究を行った。解析の結果、藻類から良質なセルロースの抽出が可能となる可能性があり、農業用機械燃料や資材等への応用も期待される。現場レベルでの応用を目指したい。

セルロースを思われる細胞外フィブリル

セルロースを思われる細胞外フィブリル


有機化学の基礎研究から革新的な技術シーズを生み出す

採択課題
グリーンイノベーションに資する先端材料と技術の開発

発表者
理学部 物質科学科 太田 哲 准教授

太田哲准教授

低エネルギーで駆動する機能性物質として期待される数種類の酸化還元駆動型分子ピンセットの設計と合成を行った。分子認識挙動を調べ、酸化還元によって分子認識能を切り替えられ、相互変換が高い効率で行えることも確認。今後は適切な設計を行い有用・有害な物質の捕集が可能な分子ピンセットの開発を検討している。

酸化還元駆動型分子ピンセットの模式図

酸化還元駆動型分子ピンセットの模式図

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