信大の地域貢献サークル&学生グループ特集Vol. 4 信州大学 銭湯サークル地域コミュニケーション

銭湯を磨き、湯船に浸かる…銭湯をこよなく愛して地域交流

「大学の地域貢献度ランキング」では毎回上位にランクされる信州大学。長野県内に5キャンパスという、タコ足大学の伝統を誇りとする本学はもちろん学生も頑張っていて、各キャンパスを飛び出して活動する、地域貢献を目的としたサークルが多いのも大きな特徴。リンゴあり、軍手あり、山林伐採あり…信州ならではの地域貢献が盛りだくさん!
「信大の地域貢献サークル特集」信大NOW誌面で一挙公開です。

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第154号(2025.11.30発行)より

銭湯で育まれる地域の人々との温かなつながり

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清掃の様子。タワシとブラシで床や流し場をピカピカに磨き上げます

「地元の銭湯を学生の力で応援したい」。そんな志のもと、松本市内の銭湯を掃除してからみんなでお風呂に浸かるというユニークな活動を行っているのが、信州大学銭湯サークル。毎週火曜日と水曜日に、それぞれ市内にある2つの銭湯での清掃をするのが定例活動で、常時活動するメンバーは15人ほどだそうです。

 「お風呂好きが高じてこのサークルに入った」というのは、サークル長を務める工藤和基さん。幼少期からご家族と定期的に温泉や銭湯を巡った経験からお風呂が大好きになったそうで、信州大学に入学して銭湯サークルの存在を知り、「面白そう」と入会を決めたと話します。

 工藤さんが、その日清掃活動できるメンバーを毎週グループLINEで募って、4~5人のメンバーを編成し、活動を行っているとのこと。デッキブラシで床をこすり、たわしで洗い場を磨きあげるのはなかなかの肉体労働ですが、掃除の後に「大きなお風呂に浸かってくつろぎながら、メンバーといろんな話ができる時間が楽しいです」と明るく話します。お客さんと一緒に湯に浸かることもあるといい、銭湯を通して、幅広い世代との交流が行われているようです。

 さらに、「銭湯のおかみさんからは『いつもありがとう』と言っていただき、手作り弁当や食料品をいただくことも多いんです」と言い、銭湯清掃を通して、地元の方々とあたたかな関係が構築されていることがうかがえます。

全国区イベントに出場決定!学生対抗“推し”銭湯大会

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「銭湯サークル」と聞くと、一般的な運動部や文化部と比べて珍しい存在のように感じますが、実は信州大学以外でもこうした活動を行っているサークルはあるそうで、信州大学銭湯サークルでは他大学との交流も行っています。その1つが、東京外国語大学銭湯同好会で昨年は同大学のメンバーが信州を訪れて一緒に銭湯を巡り、今年は反対に信州大学銭湯サークルのメンバーが東京の銭湯を訪れ、共に楽しんだそうです。

 工藤さんいわく、特に関西圏でこうした風呂系サークルの活動がさかんに行われているとのこと。毎年11月に大阪で開催されている「大阪銭湯博」というイベントでは、“学生対抗推し銭湯大会”という催しが実施されているそうです。実は工藤さん、今年の大会に招待されており、取材日(2025年10月)はまだ開催前だったため、大会で行うプレゼンテーション準備の真っ最中でした。推しの銭湯として、塩尻市にある「桑の湯」を紹介する予定だという工藤さん。桑の湯の魅力を尋ねてみると、「冷たすぎない水風呂と、ガスではなく薪で沸かすことで、いつまでも湯冷めしないお湯」との答え。水風呂については地下水を使用しているところだと、温度が低すぎて長時間浸かっていられないところ、桑の湯の水は温度がちょうどよく、ゆっくりと楽しめるのだそうです。銭湯好きならではの、細やかな着眼点ですね。

活動規模拡大に向け、県内拠点も広げ、邁進中!

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信州大学銭湯サークルの“ロゴのれん”。毎年4月には、チラシを配ったりガイダンスを行ったりして新入会員を増やすため尽力しているそうです

工藤さんは、清掃活動とは別にサークル仲間と銭湯巡りをする中で「桑の湯」さんに出会ったそうですが、今回大会で“推し”銭湯として紹介するにあたり、あらためて許可をいただきに訪問したといいます。そしてその際、銭湯サークルについて紹介し、桑の湯での清掃活動実施について打診してみたところ、お試しで活動を許可してくれたそうです。これには工藤さんも「サークル代表になった時、活動の規模を拡大したいという思いを抱いていたのですが、それに向け、一歩前進できました」と喜びの表情で話します。

 さらに、現在松本キャンパスのメンバーのみで行っている清掃活動ですが、2年生以降、松本を離れたメンバーも活動できるように上田支部と長野支部を作り、活動拠点を広げる構想も着々と進められているそうです。

 工藤さんいわく、銭湯サークルの活動は単純に清掃をして地域の銭湯の役に立つだけでなく、多くのサークルメンバーが活動を通して銭湯に関わることで、消滅の危機にある「銭湯文化を残す」ということを目標としているのだそうです。「入会した際に先輩から語っていただいた想いであり、自分も下級生に伝えています」。

 家庭風呂の普及や燃料費高騰等の理由により、全国的に減少の一途をたどる銭湯ですが、工藤さんはその魅力を「裸になって一緒にお風呂に入ることで、リラックスして会話も弾むし、人との距離もぐっと縮まる」と話します。

その時その場に居合わせた人々が、ほぐれた体と心で交流できるのは、家庭風呂にはない、銭湯ならではの面白さですね。暖かいお湯に浸かって手足を伸ばし、ふーっと一息…。銭湯サークルの学生さんたちが愛してやまない銭湯の魅力、まだまだありそうですね。

(文・平尾なつ樹)

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