アオハルにもほどがある! 信大中原寮 日本縦断駅伝。地域コミュニケーション

信州が海なし県だからか?? 日本海の海水を運んで太平洋に流す!?
30年以上続く寮の伝統行事!
 

 「6日間かけ、日本海の水を人が走って運び、太平洋に流す」…この相当な体力が問われつつ、なんとも謎の行為!この壮大な伝統行事を、30年以上前から続けているのが信州大学農学部の中原(ちゅうげん)寮の寮生たち。アオハルするにもほどがあるが、今年、コロナ禍の中断を経て6年ぶりに実施したとのこと。新潟→信州→静岡と、まさに“山あり谷あり”の行程で寮生たちが掴んだものとは― 。(文・佐々木 政史)

・・・・・ 信州大学広報誌「信大NOW」第142号(2023.11.30発行)より

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海水をペットボトルに入れ、いよいよ日本海を出発する農学部3年生の浅田鈴音(りのん)さん。これから始まる激走を前に、寮旗たなびく中で記念撮影。報道機関も来てくれて記事になった。

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襷がわりの法被には走るたびに熱いメッセージが書かれていく。

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6日間、自炊できる場所を探しながら、寮や屋外で自炊し、大自然とともに暮らす(?)信大生らしいサバイバル力(笑)が問われる。走路近くで飲ませていただける井戸水もおいしい。

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当然信州を横断するので山道も走る。海水はリュックに、襷がわりの法被は腰に。暗くなれば複数伴走し、安全を担保。こうした運営テクは長年培った引継マニュアルがあるらしい。

信大の各寮生をつなぐ旅!
達成感も半端ない!

…寮生の西園さん、眞嶋さんに聞く。

 9月9日の早朝、海水浴シーズンが去った新潟県上越市なおえつ海水浴場の静かな砂浜。同じ屋根の下で寝食を共にする寮生仲間の期待を込めた熱い声援を背に受け、信州大学農学部3年生の浅田鈴音(りのん)さんは力強く駆け出しました。14日までの6日間、農学部の中原寮生39人が新潟県上越市から静岡県浜松市までの約400キロメートルを駅伝し、ペットボトルに詰めた日本海の水を太平洋に流す―、そのスタートを切った瞬間です。

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中原寮駅伝係の西園元登(にしぞのげんと)さん(農学部2年)と眞嶋美波(まじまみなみ)さん(農学部2年)いろいろ資料を出してきて説明してくれた。

 この駅伝は、長野の若里寮、上田の修己寮、松本の思誠寮・思誠女子寮、最後に伊那の中原寮を経由。途中、峠越えなどの難所も多く、暑さや疲労、突然のアクシデント(伴走の自転車が故障!)で挫けそうになることも。しかし、「各寮の寮生や大学教職員から受けた手厚いもてなしや温かな声援が前に進む力になった」と、運営の中心となった農学部2年生の西園元登(げんと)さんは話します。来客用の部屋を宿泊のために特別に提供してもらったり、大学職員の方が飛び入りで一区画を懸命に走ってくれる姿に心打たれたといいます。

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6日間かけて約400㎞を走り抜く中原寮生の日本縦断駅伝は信大の学生寮を巡る旅でもある

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ボロボロになって残る2002年開催の時のルート地図。グーグルマップも無かった時代の苦労が伺える。

 実際に駅伝を成し遂げてどうだったか?西園さんは、入寮して間もない2年生が運営を任せられ、初めのうちは「どうしてこんな大変なことをやらなくちゃいけないんだ…」という不満もあったそう。しかし、励まし合って走り切った充実感や、怖い印象で話しかけづらかった先輩とも親交を深められたことなど、「振り返ってみると苦労した甲斐があった」と言います。
 また、同じく運営に携わった農学部2年生の眞嶋美波さんは、ルートの確認や宿泊受け入れ先との日程調整などの苦労もあったけれど、「狭い車中で寮生がギュウギュウになって雑魚寝したことや、スキー場のゲレンデから見上げた降るような星空は何にも代えがたい思い出」と話します。
 実はこの中原寮の伝統行事、開始された理由がはっきり伝承されておらず“謎”もあるといいます。ただ、困難を乗り越えた後の充実感に満ちた西園さんと眞嶋さんの表情や語り口に、自ずとその理由が分かったような気がしました。

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6日目、いよいよゴールの太平洋に到着。この日も絶好調に晴れて記念撮影。気のせいか皆さん、出発時よりたくましく見えます。

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駅伝のエンディング、日本海の海水を謹んで太平洋に流す瞬間。この30年以上前から続く謎の行為が、崇高で尊いものに感じる。いや~アオハル。

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